【王将戦】永瀬九段 自己最長152分大長考で絶妙手 封じ手直前の42手目“驚き”△1四歩
スポニチアネックス / 2025年1月26日 5時3分
◇ALSOK杯第74期王将戦7番勝負 第2局第1日(2025年1月25日 京都府京都市 伏見稲荷大社)
封じ手直前の42手目、挑戦者・永瀬拓矢九段(32)が[後]1四歩(本日指了図)を指すまでに投じたのは、なんと152分。自身最長の考慮時間を費やした絶妙手は藤井聡太王将(22)にも長考を強いて指し掛けとなった。
考えて、また考えて。永瀬は深いため息を何度もつき、記録係の横山友紀四段(25)に時間の確認を入れ、さらに腰を落として考える。その間にも時は無情に流れていく。
藤井の41手目▲3四飛が指された時点の持ち時間差(+1時間38分)は徐々に短縮し、逆転し、ビハインドに。持ち時間8時間の約3分の1となる2時間32分を費やして、ようやく指された42手目の△1四歩。「一秒も考えなかった」と正立会の久保利明九段(49)が苦笑いすれば、副立会の高見泰地七段(31)も「これは驚いた」と、きつねにつままれたかのようだ。
「2日制の対局なので、このくらいの長考にもなりますね」と永瀬は顔色を変えない。18年7月18日の順位戦B級2組で藤井猛九段相手に記録した143分を9分上回る自己最長考慮時間。09年の四段昇段(プロ入り)以来、753局目にして樹立した大長考にもかかわらず。
序盤は後手ながら周到に用意された作戦を展開した。第1局に続き、角交換には興味を示さず、藤井の横歩取りを促す。「最近では珍しい戦型になりました」と言いながらも、1手60秒未満で駒を動かす「ノータイム指し」を20手目まで敢行。34手目には5分の考慮で△9五歩と2局連続の端攻めを見せ、研究の深さを藤井に突きつける。
持ち味の速いテンポが鈍ったのは午後の時間帯。互いに研究手順を外れて未知の世界に迷い込んだ状態だ。前夜は7時間熟睡し、昼食休憩中は控室に用意された布団に入って体力と脳力を回復。そんな状態で指された意外な一手は好手か緩手か。対局室の床の間に鎮座するきつねの視線が、悩ましく中空をにらんでいた。(我満 晴朗)
≪SNS上で話題!!対局場にきつね像≫対局会場中央に据えられたきつねの像がSNS上で話題になった。会場は「正庁の間」と呼ばれ、神事などで使われる神聖な場所。稲荷大神様のお使いとして伏見稲荷大社場内にはきつねの石像が点在しており、会場内にも陶製のきつね像が普段から置かれている。口が開いているものと、開いていない像が2体設置。SNSでの反響を受け、大社の職員は「将棋をきっかけにお稲荷さんにも興味を持ってもらえてうれしい」と喜んだ。
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