その引き金を引くのは誰だ「自治体要請で撃ったのに」銃を失ったハンター咆哮 曲がり角クマ対策
STVニュース北海道 / 2024年12月31日 9時55分
【動画】その引き金を引くのは…誰だ 自治体の要請で撃ったのに銃を失ったハンターの叫び クマ対策を真剣に考える
クマがマチに現れたら…最前線に立つのは、猟友会のハンターです。
しかし、自治体からの要請でクマを撃ち、銃を失ったハンターがいます。
引き金を引く責任は誰が負うのか。
2024年最後の日に…クマ対策のあり方を考えます。
「丸腰」パトロール 銃を失ったハンター
雪に覆われた、北海道砂川市の牧草地。
(猟友会砂川支部 池上治男支部長)「おーい、人が来るぞ!いなくなれよ!おーい!」
声をかける相手は、森に潜むクマ。
砂川市のハンター・池上治男さんです。
(猟友会砂川支部 池上治男支部長)「相手に注意喚起するために、人の声がいちばん効果がある」
マチに近づくクマがいないか、パトロールするのが朝の日課です。
これは2024年4月に根室市で撮影された映像。
山菜採りで山に入った軽トラックにクマが襲いかかる映像は、衝撃を与えました。
道内でのクマの目撃件数は2601件。
過去最多だった2023年より1448件減りましたが、人里に近づくクマは後を絶ちません。
(猟友会砂川支部 池上治男支部長)「これ丸いやつ全部ヒグマの足跡」
雪の上に残されていたのはクマの足跡。
見つけた痕跡をスマートフォンで記録します。
いつクマに遭遇してもおかしくありませんが、猟銃を持たず、丸腰で歩きます。
そのワケはー
(猟友会砂川支部 池上治男支部長)「こっちに下りてくる状態だったからだめだなと思って仕方なしに撃った。これで撃って一発で倒れた」
逆転敗訴に「もう誰もできない」猟友会憤怒
池上さんは2018年、市から依頼を受けクマを駆除。
しかし、周囲に人家があったことなどを理由に、銃の所持許可を取り消されました。
道に処分の撤回を求めた1審の札幌地裁では、池上さんの訴えを全面的に認める判決が言い渡されました。
しかし、2024年10月。
(高裁の判決)「周囲の建物に銃弾が到達する恐れがあった」
札幌高裁は1審判決を取り消し、池上さんは逆転敗訴しました。
判断が分かれたのは、銃弾が周囲に危険を及ぼす可能性があったかどうか。
札幌地裁は、銃弾はクマの体内にとどまった可能性が高いと判断。
さらに、背後にあった斜面が銃弾を受け止める「バックストップ」の役割を果たしていたとしました。
一方、札幌高裁はクマを貫通した弾丸が草や石に当たり、跳ね返った可能性があると指摘。
斜面では安全を確保できず、住宅などに危険が及ぶとしたのです。
(猟友会砂川支部 池上治男支部長)「撃ったやつがさ、クマの体内を抜けて跳弾するとか言われたら、もう誰もできないよ」
この高裁判決に危機感を抱いたのが、北海道猟友会です。
(北海道猟友会 堀江篤会長)「処罰されることがあったら大変だから。今まで以上に協議を重ねて、出る出ないは判断してということになった」
自治体からの駆除要請に協力するか、各支部の判断にゆだねることにしたのです。
最前線…引き金を引く責任は誰に?
(記者)「盾を持った警察官が店内に入っていきます」
市街地への出没が相次ぐクマ。
12月、秋田県ではスーパーにツキノワグマが立てこもりました。
市街地で発砲ができず、重装備の警察官も手が出せません。
クマが運び出されるまで丸3日を要しました。
市街地に現れるクマとどう向き合うのか。
猟友会の堀江篤会長は、鈴木知事と環境省まで出向き、駆除体制の強化を求めました。
(北海道猟友会 堀江篤会長)「どこへ撃っても跳弾だよねという言葉が出てくる。どこへ撃てばいいのと。引き金を引く者が責任を負わされる」
国は市街地でも速やかにクマを駆除できるよう法改正を目指していて、ハンターに不利益が生じないような仕組みを模索しています。
では、クマ対策を担うのはいったい誰なのかー
札幌で市民らが意見を出し合いました。
参加者があげたのは「ハンター」だけではありません。
「住民」をはじめ、あらゆる人が「自分ごと」としてクマと向き合うべきではないかとの意見が出ました。
クマの専門家・佐藤喜和教授。
ハンター個人が責任を負う現状に警鐘を鳴らします。
(酪農学園大学 佐藤喜和教授)「何か問題があった場合、それが個人の責任にならないような体制ですよね。今後も民間の資格を持った人に、こういう仕事を頼んでいくのか、それとも行政として市民の安全を守るため責任を持てるような形で、そういう人を雇用できる体制にしていくのか。将来を考えていくきっかけになるような、そういう年になったと思います」
夜明け前、ハンターの池上さんがパトロールを始めました。
訪れたのは郊外の農家。
(猟友会砂川支部 池上治男支部長)「これ全部シカの足跡」
周辺に出没するシカやクマの痕跡調査を続けています。
地元の人はそんなベテランハンターの姿を頼もしく思っています。
(住人)「助かるんです。あれだけの人が、鉄砲を取り上げられたのは私はもう悔しくてね」
(猟友会砂川支部 池上治男支部長)「ハンターというのはさ、自分のためというよりも農家のためとか人のためという意識の人が多いと思うんだよ。われわれは協力するのやぶさかではないけど、ああいう判決だと協力しないじゃなくて協力できない状態になっている。やはり考え方を変えていかなければいけない」
クマ対策の最前線に立つ猟友会のハンター。
引き金を引く責任は誰にあるのかー
社会全体で考え直す時が来ています。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
砂川猟銃訴訟高裁で逆転敗訴…当事者の思いと広がる波紋
テレビ北海道 / 2024年12月26日 17時48分
-
駆除めぐる問題 ヒグマ捕獲体制の強化に向け 道職員や警察、ハンターらが意見交換
STVニュース北海道 / 2024年12月25日 6時39分
-
猟銃許可取り消しなど「クマ駆除」めぐる問題 自治体と猟友会などが意見交換 岩見沢市
HTB北海道ニュース / 2024年12月24日 18時32分
-
出没ヒグマの駆除「未定」9支部 北海道猟友会、発砲に慎重論
共同通信 / 2024年12月19日 21時41分
-
猟銃免許取り消されたハンター 上告審に向け新たな弁護団とともに発砲現場に 砂川ハンター猟銃訴訟
HTB北海道ニュース / 2024年12月11日 16時16分
ランキング
-
1「林道に車が放置されている」斜里岳付近で雪に埋もれたレンタカー発見 借り主の中国籍男性と連絡とれず 遭難したか 北海道斜里町
北海道放送 / 2025年1月7日 14時56分
-
2【速報】兵庫県知事選で「稲村和美氏を支持」表明した22市長への告発状を提出『市長が自身の地位を利用した支持表明は公選法違反の疑い』
MBSニュース / 2025年1月7日 13時10分
-
3吉村知事、万博前売り券は「非常に高い目標」 赤字想定の協議はせず
毎日新聞 / 2025年1月7日 16時25分
-
4「火が付いたのを見て作戦成功と思った」 正月のドンキで放火未遂疑い 30分で2回火を付けたか 無職の男(34)を逮捕
ABCニュース / 2025年1月7日 17時49分
-
5バックカントリー中に遭難、外国籍男性3人を発見…全員けがなし 長野・小谷村
日テレNEWS NNN / 2025年1月7日 13時58分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください