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受刑者を「さん付け」号令行進もなし 高い再犯率に高齢化 改革が進む札幌刑務所に潜入取材

STVニュース北海道 / 2025年1月18日 6時35分

【動画】歴史的な転換 号令行進もなく受刑者を「さん付け」 改革が進む刑務所にカメラが潜入

「懲役」と「禁錮」。

よく聞く刑罰ですが、懲役は刑務作業が義務付けられていて、禁錮はその義務がありません。

実は2025年6月に、この刑罰が大きく変わります。

懲役と禁錮が廃止され「拘禁刑」に一本化されます。

これは、受刑者個別に必要な刑務作業や教育・指導を行うことで、更生を促すというものです。

なぜいま刑の大改革を行うのか。

全国に先駆けて拘禁刑のモデルケースを始めている、札幌刑務所の最前線を取材しました。

札幌刑務所の象徴・高い「塀」。

塀の向こうでは700人を超える受刑者が償いの日々を送っています。

(受刑者)「私は覚せい剤取締法違反でここにいるわけなんですけど、こういうところ二度と来たくないなって思いで日々過ごしています」

その刑務所がいま、歴史的な転換点を迎えています。

2025年6月から刑罰が抜本的に変わり、懲役刑と禁錮刑を一本化した「拘禁刑」が新たに導入されます。

懲役刑で義務付けられていた一律の刑務作業を廃止し、受刑者ひとりひとりに合わせた刑務作業や教育を行うようになります。

ただ、塀の向こうの隔絶された世界の話だけに…

(山﨑記者)「拘禁刑というものに一本化されるんですけど…」

(道民)「いや知らないですね」

(山﨑記者)「ご存じないですか?」

(道民)「そうですね」

(道民)「刑法変わる?聞いてないねぇ」

(道民)「知らないです」

やはり拘禁刑導入を知らない道民が圧倒的でした。

拘禁刑のモデルケース 札幌刑務所のいまを取材

札幌刑務所では全国に先駆け、拘禁刑のモデルケースが行われています。

その一端の撮影が許されました。

(山﨑記者)「拘禁刑の導入を控えるなか、札幌刑務所ではこの扉の向こうである取組みが進められています」

(刑務官)「右クリックで新規作成をやってみましょう」

刑務作業の一環としてパソコンの訓練を導入しました。

社会復帰後の就労につなげるためです。

進捗は受刑者それぞれなので、きめ細かく指導します。

(作業療法士)「心の症状を持っている人の方がストレスに弱い部分が強くなりやすいので…」

作業療法士や看護師など専門職による指導の時間も。

一律の刑務作業ではなく、個々にあわせた指導を柔軟に行います。

大きな転換の背景にあるのが「高い再犯率」です。

窃盗で4回目。

この受刑者にはある特徴がー

(山﨑記者)「どのような障害を?」

(モデル事業の受刑者)「統合失調症です。普通の刑務所の工場とは全く違う内容で、指先を結構使うような作業をして記憶力や認知機能を上げていくんですけど、やってみると始めたころより全然記憶力がよくなっているなと」

精神に障害がある者の再犯率の高さが長らく課題になっていました。

(モデル事業の刑務官)「適切な対応ができる職員が限られていました。必要な福祉支援が行われずに(受刑者が)知識なども学ぶことができずに出所していくという課題がありました」

また、受刑者の高齢化も急速に進んでいます。

通常の刑務作業が難しい受刑者も少なくありません。

高齢の受刑者も、一律ではないひとりひとりに合わせた作業や教育が必要です。

高齢の受刑者には認知機能の訓練や身体機能の維持も欠かせません。

課題は”高い再犯率” 再犯防止のキーワードは”懲罰”と”更生”

懲役刑に課せられていた刑務作業がトレーニングなどに置き換えられていて、刑の中身も変わり始めています。

「懲罰」に加えてより「更生」の道へ。

それが「再犯防止」にー

拘禁刑への転換の理由はそこにあるのです。

(担当する刑務官)「拘禁刑に変わったからといって受刑者にとって刑務所が居心地いい場所になってはいけないと思うので。規律・秩序の維持というのは必ず必要になってくる部分ではあると思うので、運用が変わったとしても根底は変わらない」

この“大転換”には賛否両論もー

(札幌市民)「仕方ないというか、時代の流れがあるので仕方ないのかなと思う」

(室蘭市民)「賛成だよ。やっぱり悪いことした人間も真面目な人間も同じ人間。社会に出て一生懸命働けるように社会のためにも貢献してもらいたい」

(札幌市民)「良くないね。もっと刑罰を重くしてほしい。その人を良くするとか教育なんて必要ないよ、もっと厳しくしてほしいなと思う」

(札幌市民)「いまいちピンとこない。いまいちちょっとわからないです」

進む刑務所改革 受刑者は”さん付け” 歩き方や会話も自由に

いまから20年以上前の札幌刑務所の映像です。

古くから義務付けられていた号令行進。

受刑者たちは手足の動きをそろえて刑務所内を移動していましたが…

令和のいま、号令はなくなり、手足も自然な動きに。

さらにー

(刑務官)「○○さん!」「□□さん!」「□□さん!」

呼び捨てを改め、2024年2月からは刑務官は受刑者を「さん付け」で呼ぶことに。

(受刑者)「持っていってもらっていいんだよね…」

刑務官の許可が必要だった作業中の会話も、一部では自由になりました。

名古屋刑務所で起きた刑務官による受刑者への暴行なども、拘禁刑の導入や刑務所改革のきっかけになりました。

全ては「更生」の強化のためです。

これまで出入りを繰り返し、過去の刑務所を知る受刑者も変化を感じています。

(受刑者)「良い方向で変わると思います。ストレスというか考えも卑屈になりやすかったと思うんですよ、呼び捨てにされたりすると。改善更生への意欲も高まると思います」

刑務官の負担も課題 志望者は減少傾向… 採用活動にも注力

刑務所改革に向けて、課題は刑務官の負担増です。

札幌刑務所は採用活動にも余念がありません。

この日は学生向けの見学会を開催。

刑務官の志望者は減少傾向で、拘禁刑を進めるために人手不足は頭の痛い課題です。

(専門学校生)「大変な仕事だと思いました。世間一般的に刑務官の仕事が知られていないのかなと思います」

取材を進めると、世間から隔絶された空間の大改革だけに、ひろく実情を周知し、わたしたちもひとりひとりが考えてみる時だと痛感しました。

(山﨑記者)「国の法改正により大きな転換期を迎えている刑務所。受刑者の処遇の改善と刑務所内の規律の維持をどう図っていくのか。難しい対応を迫られるなか、模索が続いています」

取り組みの効果判明はまだ先 2人に1人が再犯する現状…打開なるか

拘禁刑の導入の背景にあるのが「高い再犯率」です。

刑務所には罰を与えると同時に、受刑者を更生させるという大きな目的がありますが、犯罪で検挙された人の数は減っているものの、再犯率は上昇傾向にあります。

2023年の再犯率は47%で、およそ2人に1人が犯罪を繰り返している実情があるのです。

こうした背景から、受刑者が社会で自立して生活し、再犯を防ぐために必要な教育や指導などを行うことになりました。

札幌刑務所の拘禁刑のモデル事業は2024年3月に始まり、まだ出所した受刑者はいません。

拘禁刑導入の効果が分かるまでには、まだまだ時間がかかります。

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