令和元年だからこそ感慨深い、80年代バブル期を追体験する『全裸監督』

Suits-woman.jp / 2019年9月26日 19時0分

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令和元年だからこそ感慨深い、80年代バブル期を追体験する『全裸監督』の画像

 
堅実女子の皆さんは、前髪を立てて、ボディーコンシャスなスーツに、チェーンベルトで、激しく踊る高校生たちのダンスを見たことがないでしょうか?このダンスで日本一に輝いた大阪府立登美丘高校ダンス部は、このダンスを「バブリーダンス」と名付けていました。
 
このダンスは、踊っていた高校生たちの親の世代が青春を過ごした、1980年代バブル期をモチーフとして創作されました。また、芸人・平野ノラは、バブル期のブームや流行語を使ったネタを繰り出しますが、ネタ元を知らない若者たちにも大うけで笑いを巻き起こしています。最近、「80年代バブル期」が持つ、人を引き付けて止まない不思議な魅力が、再評価されているようです。
今ほどオープンではなかった80年代
 Netflixが制作した連続ドラマシリーズ『全裸監督』は、そんな80年代、バブル期にのし上がったAV監督・村西とおるをモデルにした、波乱万丈な物語を、当時の風俗を詳細に再現することで、魅力的に描いています。

ストーリーは、さえない英語教材のサラリーマンだった村西とおる(山田孝之)が、チンピラのトシ(満島真之介)と出会い、裏の社会に飛び込み、“エロ”を商売にしてのし上がっていく姿を描きます。村西は、手始めに「ビニ本」と呼ばれた、過激な描写があるヌード写真集の販売を手がけます。
 
街の書店を次々と買収して、ビニ本を扱う一大アダルト書店チェーンを北海道に作り上げると、編集者・川田研二(玉山鉄二)とともに、さらに修正なしでヘアや性器が見える違法なヌード写真集「裏本」の製作と販売に手を染めようとします。ライバルからの嫌がらせや警察の摘発などを、さまざまな困難を乗り越えて、彼らはアダルトビデオの製作に乗り出すのですが……。
 
と書いてみると、まるで、日曜9時の池井戸潤原作のビジネスドラマのようです。ただし、このドラマを見る前に大前提として知っておきたいことがあります。80年代は、性器ではなく陰毛が見える程度の写真でも、警察からわいせつ書画として摘発を受けるぐらい、社会的には問題でした。わざわざ性器や陰毛が見えないように、写真は黒塗りで隠し、ビデオにはぼかしを入れていました。
 
それだからこそ、「隠されていたものが、見える」に価値を感じ、ビニ本や裏本、アダルトビデオに人々は熱狂をしたわけです。村西は、世間から咎められたり、警察に摘発されたりすればするほど、その裏をかくように次々と手を考え、隠されているものを見えるようにすることにこだわりました。彼が、時代の寵児となったのは、80年代のこういった背景があることを知っておくと見やすいと思います。

実力派たちが楽しんで作っている作品

「お待たせしました。お待たせし過ぎたかもしれません」と怪しい光を放つ目が印象的な村西役の山田孝之は、のびのびと演技しています。満島真之介と玉山鉄二はこれまでにない役を楽しんで演じているようです。吉田鋼太郎に板尾創路、リリー・フランキー、石橋凌、國村隼……実力派俳優が印象的な役で次々と登場します。
 
そして、黒木香役を演じる森田望智の葛藤と、積もり積もった思いが爆発し、「ありのままの自分」を見せるAV撮影シーンは最大の山場と思います。30年前は「女性にも性欲がある」という、今ではとっくに当たり前のことが、タブーで人には言えないことだったのかと気付いて驚きました。
 
「バブル期とはどんなだったのか?」と聞かれて、六本木のディスコが毎晩混雑していたことや、深夜のタクシーが全然止められなかったこと、株や土地の高騰、新宿歌舞伎町が今よりもいかがわしく盛り上がっていたことを説明しても、
 
「それで、なにがすごかったの?」
 
となかなかわかってもらえない経験がありました。確かに、今現在の感覚からは、決しておしゃれでもなく、豪華でもないものに熱狂している人たちの姿は、その渦の中にいなければ、なにをそんなにと不思議でしかないと思います。その80年代バブル期への疑問への回答が、『全裸監督』の中にはあると思いました。

 
シーズン2の制作が決まったのは、作り手たちの熱量とともに、あの時代をまだまだ見てみたいと思う視聴者の存在があったのかもしれません。

『全裸監督』Netflixにて全8話配信中。性やモラルに関する意識が30年弱でこんなに変ったのか……と思うと、それもまた感慨深くあります。

 Netflix https://www.netflix.com/
 
文/北沢かえる

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