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世界的に高評価のワインと新鮮な魚介類が楽しめる!南アフリカ観光局日本人スタッフに聞く「豊かな暮らし」の魅力

TABIZINE / 2021年10月11日 7時30分

tabizine.jp

なかなか海外旅行に出られない時代が続いていますが、海外への理解を深める学びは継続できるはず。各国の観光局に勤める日本人スタッフを通じて海外の文化を理解する連載をTABIZINEでは組んできました。第3回は、南アフリカ観光局の近藤由佳さんに現地の魅力やカルチャーショックを教えてもらいました。

警戒していたイメージとは真逆

南アフリカのサッカースタジアム

南アフリカと言われたら、どのようなイメージがありますか?2010年(平成22年)にはサッカーW杯が開催されたので、その記憶が強い人もいるのでは。2015年(平成27年)・2019年(令和元年)のラグビーW杯における日本対南アフリカ戦の熱戦を強く記憶している人もいるかもしれません。

マイナスのイメージとして一方で、アパルトヘイト(有色人種差別政策)を思い出す人も多いでしょう。学校の社会科の授業で習いましたね。南アフリカで日本人が「名誉白人」と呼ばれるものの、その理由が感心できる話ではないと学んだ中学校の社会科の授業を今でもはっきり覚えています。

そのネガティブな歴史のイメージが強烈すぎるからか、南アフリカ=ちょっと怖いなどの印象を持つ日本人は少なくない気がします。


ケープタウン

しかし南アフリカ観光局の近藤さんによれば、以上のようなネガティブなイメージは南アフリカの実態と大きくかけ離れているとの話です。南アフリカの人たちは温和で、気さくで、フレンドリーで、多様性を認め合うカルチャーが人々に根付いているといいます。

パッケージツアーで日本の旅行会社が数千人の日本人を現地に送り込んでも、すりや置き引きなどトラブルに遭う人の数は年間1人程度だそうです。

われわれ日本人は南アフリカを誤解しているのかもしれませんね。
大都市の注意が必要なエリアは興味本位で行かなければ大丈夫

西ケープ州ケープタウンにあるボ・カープ地区

とはいえ、日本の外務省が運営する海外安全ホームページによると、南アフリカの大都市、例えば首都のプレトリア、近郊のヨハネスブルグ、世界的に有名なケープタウン、同じく港町のダーバンなどの大都市部には警戒レベル1(十分注意してください)が出ています。

Global Peace Index(世界平和度指数)の最新版(2020年)を見ても、南アフリカの平和度ランキングは世界で123位です。下位とは言いませんが、順位としては中位に分類されています。

参考までに中国が100位、タイが113位、エジプトが123位、ブラジルが128位、インドが135位、メキシコが140位です。日本は12位、世界で最も平和な国はアイスランド、第2位がニュージーランドです。

もちろん外務省が警戒レベル1を出しているからといって、Global Peace Indexで平和度指数が低いからといって、南アフリカが危険な地域だと断定できるかといえば、必ずしもそうではないとトラベルライターとして筆者も感じます。

Global Peace Indexで世界第2位の「平和度」を誇るニュージーランドのオークランドで、当時まだ珍しかったiPhoneの初期モデルをバスですられた経験も筆者にはあります。「土地勘のない外国人旅行者=カモにできそうな相手」として異国へ行けば、どこの国であっても悪い人からある種の標的にされやすくなるわけです。

「安全そうな国」では旅行者も油断してしまうので逆に危ないとの見方もできるはずです。

ただし日本の外務省などが安全度について注意を出している点も事実です。近藤さんに南アフリカの治安を率直に聞いてみると、

「大都市の一部には確かに観光客が近づいてはいけないエリアがあります。とはいえ日本でも例えば『東京の夜の繁華街はちょっと怖いな』といった印象があるのではないでしょうか。

むしろ東京の繁華街の場合は、ふらっと観光客も入れてしまう立地にあると思います。南アフリカの注意が必要なエリアは、観光客が間違って紛れ込んでしまう立地では決してありません。興味本位で狙って行かなければ、たどり着けない場所にあります」

との答えがありました。



聞けば、南アフリカを含めてアフリカ各国を何度も訪れた経験のある近藤さん。その渡航先には当然、外務省が発表する海外安全情報で注意喚起の出ているエリアも含まれているそうです。それでもトラブルには過去に一度も巻き込まれていないのだとか。

言い換えれば「南アフリカだからこうしてください!」という注意情報は存在しないとの話。どこの国へ行っても「自分は外国人」との意識を持って注意や気配りを忘れなければ、トラブルに巻き込まれる危険性もゼロに近づけられるはずだと、海外経験の豊富な近藤さんは教えてくれました。

旅を愛する人たちであれば、赤ペンや蛍光ペンで下線を引き二重丸も付けて強調しておきたい大切な教えですね。
ポジティブな心境の変化が南アフリカ旅行最大の魅力か


「南アフリカは遠い」との印象も多くの人が持っているはずです。一生に一度の旅行先として「何かの機会があれば行けたらいいな」「自分の人生では行かないだろうな」という感覚ではないでしょうか。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症の騒ぎが起こる前は、年間2万6,000人ほどが日本から渡航していたといいます。サッカーのW杯が2010年に開催された後の数年間は、日本からの観光客が4万人以上に増えた実績もあります。

アフリカの中央部・西部で流行した感染症の風評被害で半数近くに落ち込むものの、その後は目標である5万人を目指して順調に伸びていたらしいです。

多くの人にネガティブな印象を持たれているはずの南アフリカへ、こだれだけの日本人が現実に足を運んでいるわけです。少なくない日本人の旅行者は一体何を求めて訪れていたのでしょうか。


首都プレトリアにあるネルソン・マンデラの銅像

西洋から見た「世界史」に南アフリカはオランダの植民地として登場します。後にイギリスの支配の下に変わり、長い年月を送ってきました。

しかし時代の変化と記憶の風化、アフリカ系住民の台頭とともに、植民地時代の痕跡が本来の暮らしに次第に溶け込んできて、(あくまでも純粋な観光客目線に立てば)独特の味わいと魅力を生むに至っているのかもしれないと筆者は思いました。その意外な魅力に渡航経験者が魅了されているのではないでしょうか。

例えば植民地時代にはヨーロッパ(オランダ)からワインが持ち込まれました。少しずつ黒人オーナーも参入し始めている南アフリカ産のワインは世界的評価を確立しています。

牛・ラム・鶏・ダチョウなどの肉の生産も盛んで、自生したハーブを食べて育つラム肉などは、まさに絶品だと近藤さんは言います。その肉を現地ではおいしいワインと一緒にお腹いっぱい経済的な値段で食べられるのです。野菜もフルーツの生産も盛んで、訪れた日本人旅行者は食のおいしさに一様に驚くようです。



ケープタウンなどの港町では新鮮な海産物が捕れる上に、すしや刺身まで食べられるレストランもたくさんあるのだとか。そのケープタウンに向かって、国土を横断する全室スイートの豪華列車ブルートレインも走っています。海岸線沿いには植民地時代からの名残で欧米人が別荘を構え、ビーチリゾートの景観をなしているそうです。

ワインにフルーツ、新鮮な野菜、ハーブで育つラム肉、全室スイートの豪華列車、ビーチリゾート、どれもこれも日本人が一般的に抱く南アフリカのイメージとは、かけ離れているのではないでしょうか。

いい意味でネガティブな印象を180度覆してくれる観光資源の数々が、南アフリカ旅行最大の体験であり、繰り返し訪れたくなる魅力と言えるのかもしれません。


南アフリカが誇る豪華列車ブルートレイン
南アフリカには「豊かな暮らし」がある


近藤さんについても聞いてみました。一般的な感覚として、外国の観光局で働いている日本人と言われると、ただものではない印象を受けます。さらに近藤さんの場合は、日本人がなじみの薄い南アフリカの観光局に勤めているわけです。

どうして南アフリカ観光局に勤めているのか、その経緯を聞いてみると、「長いですよ」と近藤さんから笑顔で断りがありました。

すごーく簡単に経歴をまとめると、日本の航空会社で地上スタッフとして勤務した後、南アフリカの北部にあるザンビアに家族と7年暮らしたそう。近藤さんの家族の転勤についていったのです。

帰国後は日本の航空会社で予約受付の仕事をしていたところ、いつの間にか「アフリカ担当者」のような立ち位置にされ、長いアフリカ経験が日本では個性になると感じたのだとか。ちょうどそのころに日本で発行されている英字新聞で南アフリカ観光局の求人を見つけ、年齢制限を超えていたものの構わず応募し、見事に採用となったそうです。

その後の長い勤務で、今では日本における南アフリカの「顔」として、メディアや旅行会社向けのイベントから幼稚園での異文化教育に至るまで、八面六臂(ろっぴ)の活躍をしているとのことです。



そんな近藤さんに、南アフリカで感じる最大のカルチャーショックを聞いてみると「多様性」を一番に挙げてくれました。南アフリカには11の公用語があり、日常的に会話する相手が違う民族・人種の場合のほうが圧倒的に多いそうです。

多様性が当たり前、意見が違っても当たり前で、自分の意見が否定されたからといって誰もひねくれないし、「へー、そんな考え方もあるんだね」とおおらかに反応するみたいです。

ビジネスの場面でも会議で黙っている人なんて誰もいなくて、好き勝手に皆が発言するとの話。新人だろうが社長だろうが立場なんて関係なし。そんなカルチャーに染まった近藤さんは、「もしこの観光局の仕事をやめたら、日本の会社では受け入れてもらえないと思うので(ちょっと変わっている?から)生きていけないですね」と笑っていました。



海に素潜りして魚介類を捕れる漁業権の「年パス(1シーズン)」が、まちの郵便局で1,000円くらいで買える話にも筆者は驚きました。自分で捕ってきた魚介類を毎週末のように楽しむブラアイ(バーベキュー)で焼いて、冷えたワインと一緒に地元の人は楽しむそうです。

「豊かですよ。南アフリカの暮らしは」と近藤さんは笑顔で教えてくれました。筆者も南アフリカを訪れた経験がありません。この目でその豊かさを確かめるべく、「コロナ後」に行きたい国として筆頭の候補になりました。

 

[取材協力]



近藤由佳さん・・・7年間のザンビア生活を経て、南アフリカ観光局に入局。旅行会社のセミナーやメディア向けのプロモーション活動などを行う。

 

[参考]

※ AGRICULTURE: FACTS & TRENDS South Africa

※ 南アフリカ共和国(Republic of South Africa) 基礎データ -  外務省

※ Global Peace Index 2020

※ In South Africa’s Fabled Wine Country, White and Black Battle Over Land  - The New York Times

※ South African white farmers, Black protesters face off over farm murder - Reuters

※ エボラ出血熱について - 厚生労働省

[写真提供:南アフリカ観光局]

 

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