【ドイツ現地取材特集1】世界無形遺産の伝統行事!10年に1度のキリスト受難劇
TABIZINE / 2022年5月24日 21時0分
ドイツ観光局が主催するプレスツアーにTABIZINEライターが参加。2022年春に首都ベルリンやドレスデンを巡り、バイエルン地方の小さな村オーバーアマガウへ。その後ミュンヘンも訪れました。各地の旅体験とともに、ドイツの今をレポートします。今回は、バイエルン地方の小さな村で開催されるキリスト受難劇『パッションプレイ』をご紹介。10年に1度という機会が今年にあたり、10月まで上演されています。
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ユネスコの無形文化遺産!オーバーアマガウのキリスト受難劇『パッションプレイ』
ドイツ南部バイエルン地方のアマガウ・アルプス自然公園内にある「oberammergau(オーバーアマガウ)」。17世紀から現在まで、10年に1度上演されるキリスト受難劇『パッションプレイ』の開催地として世界的に知られており、ユネスコの無形文化遺産に登録されています。
役者はすべてこの村の住人や出身の人たち。小さな村の人たちによる劇がそれほど有名なのは、なぜ? 「受難劇」と耳にして宗教的な印象を強く持ったこともあり、いろいろな疑問を抱えながら現地でリハーサルを見学させていただくと、想像を超える魅力に触れることになりました。
第1回公演は1634年!17世紀から続く約400年の歴史
この『パッションプレイ』の歴史は、17世紀まで遡ります。ヨーロッパにペストが蔓延した時代、オーバーアマガウは厳重に警戒していたものの、教会祭が行われた1632年に遂に1人目の感染者が出てしまいます。村に疫病が拡がってしまうなか、村の指導者たちが10年に1度キリストの受難劇を開催すると誓ったところ、その後から死者は出なくなったのだとか。
誓いをした翌年となる1634年に第1回が公演され、それ以降第一次世界大戦や第二次世界大戦中の休演を除き、現在に至るまで続いているのです。今回のパッションプレイは、本来2020年に公開される予定だったところ、コロナ禍の影響で今年(2022年)に延期されました。
数々の受賞歴を誇るディレクターによる本格ステージ
パッションプレイのディレクター「クリスチャン・スチュッケル(Christian Stückl)」氏
この劇を手掛けるのは、クリスチャン・スチュッケル(Christian Stückl)氏。普段はミュンヘン民衆劇場(Münchner Volkstheater)のアーティスティックディレクターを務めるほか、ハンブルクやウィーン、チューリッヒでの劇場やオペラ、音楽祭など多方面で活躍。数々の受賞歴を誇る人物です。
オーバーアマガウに生まれ、1990年のパッションプレイでディレクターに抜擢。彼の両親もパッションプレイに出演していたこともあり、この劇は子どもの頃からの憧れだったのだそう。1990年以来、今回が彼にとって4回目の作品になります。
宗教の垣根を超える!?時代に沿って変わるもの
400年近い歴史を誇るパッションプレイは、伝統を守りながらも時代の流れとともにその在り方も変化しているといいます。例えば、1990年公演ではメインキャストとして起用したいと思った人がプロテスタントだったことが理由で、最終的に配役を断念しなければならなかったそうですが、2000年からは教派どころか宗教の垣根もなくなったのだといいます。
今回の公演では20名ほどの主要キャストの中に、イスラム教2人が含まれているのだそう。多様化する現代に、対応も柔軟になってきているようですね。ディレクターのクリスチャン・スチュッケル氏が、「変えていかなければいけない伝統もある」と語っていたのが印象的でした。
出演はすべて村人たち!伝統が受け継がれるもの
一方で、長年受け継がれている伝統も存在します。それは、このステージに出演するキャストがすべて村の人たちで構成されているということ。村で生まれた人、もしくはこの村に20年以上住んだ人のみが出演できるのだといいます。人口5,500人程の村で、約2,000人がパッションプレイに参加しているというので、およそ半分の住人がこの劇に関わっているということになります。
実際に劇を見てみると、民衆役としてステージに立つ人々の中には周りを見まわしたりニコニコ笑っている、自然体の子どもの姿も。メインキャストによる本格的な演技や圧倒的な音楽、コーラスの傍らで、こういったアットホームな雰囲気を感じられるのも魅力のひとつかもしれません。
通りで声をかけて出演交渉?キャスト選びもユニーク
キャスト選びはというと、クリスチャン・スチュッケル氏がオーバーアマガウの村を歩いていて向いていると思った人がいたら声をかけて「パッションプレイに出ませんか?」と出演交渉するのだとか。この村の多くの人はパッションプレイを身近に感じているので、大体はOKをもらえるのだといいます。自ら応募してくる人もいるのだそうですよ。
キリスト役を演じる「フレデリック・マイエット(Frederik Mayet)」氏
今回キリストに配役された2人のうちの1人、フレデリック・マイエット(Frederik Mayet)氏もオーバーアマガウ生まれ。2010年にキリストを演じてから今回が2回目となり、この大役をとても誇りに思っていると言います。
オーケストラや聖歌隊のパフォーマンスに感動
パッションプレイの劇場は、1900年に建設された屋外ステージがベースとなり、2000年に改築されました。ステージの下にはオーケストラが入るスペースがあり、劇中はオーケストラの見事な生演奏が響き渡ります。
聖歌隊によるコーラスもあり、歌声が会場全体を包み外へ抜けて広がっていく感じが素晴らしいこと! 普段は違う仕事をしているという村の人たちによる劇が、これほどまでに大掛かりで本格的であることに驚きました。
【キリスト受難劇「パッションプレイ」】
・所在地:Passionswiese 1, 82487 Oberammergau, Germany
・期間:2022年5月14日(土)~10月2日(日)
・公演日:火・木・金・土・日曜日
・時間:
[2022年5月14日(土)~8月14日(日)]
パート1(午後の部): 2:30 p.m.~5:00 p.m./パート2(夜の部): 8:00 p.m.~10:30 p.m.
[2022年8月16日(火)~10月2日(日)]
パート1(午後の部): 1:30 p.m.~4:00 p.m./パート2(夜の部): 7:00 p.m.~9:30 p.m.
・チケット:60€~180€
・公式サイト(英語):https://www.passionsspiele-oberammergau.de/en/home
※ 公式サイトでのチケット購入のほか、日本からパッションプレイの観覧ツアーも催行されています。
パッションプレイの2022年の公演は10月2日(日)まで。合計5時間のステージが、午後の部と夜の部、2回に分けて上演されます。オーケストラの演奏やコーラスなどで楽しめる部分もありますが、セリフがあるシーンはドイツ語で字幕もないので、キリスト最後の7日間のあらすじを分かっているとより劇に引き込まれるかなと思います。
[参照]
Gemeinde oberammergau: https://www.gemeinde-oberammergau.de/de/mein-oberammergau/zahlen-fakten
Germain Commision for Unesco: https://www.unesco.de/en/culture-and-nature/passion-play-oberammergau
[all photos by minacono]
Please do not use the photos without permission.
取材協力:ドイツ観光局
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