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海外渡航の大きな壁とは?ウクライナ侵攻で生じる物価高騰を考える【政治学者が見る世界の今】

TABIZINE / 2022年6月27日 7時30分

tabizine.jp

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界の情勢を考える人気シリーズ。今回は、ウクライナ問題が引き起こす、私たちの海外渡航への影響を考えてみる。すでに身近になっている物価上昇や治安の悪化は決して対岸の火事ではないのかもしれない。※写真はすべてイメージです


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幸いにも、世界的に新型コロナウイルス感染症が世界的に落ち着く方向となり、今後は日本人を含む世界の人々の国境を越えた移動が再び活発化しそうだ。


しかし、今日、世界は大きな課題に直面している。世界的な物価高騰だ。ロシアによるウクライナ侵攻開始から4カ月となるが、おそらくウクライナやロシアに渡航しようとする人は読者の中でも極僅かだろう。

よって、ウクライナ情勢は対岸の火事と無意識に思っている人が多いかもしれない。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻は物価高騰も引き起こしていて、各国では混乱が生じている。


ウクライナ問題が引き起こす世界の混乱

侵攻開始から1カ月あまり後の2022年4月、南米ペルーではウクライナ侵攻の影響でガソリンや小麦の価格が急騰し、これに耐えかねた市民が全国各地で抗議デモを展開した。中にはデモ隊の一部が高速道路の料金所へ火を放ち、商店を略奪するなどして暴徒化し、治安部隊と衝突するなどした。それによって公共交通機関がほぼ停止し、学校も休校となった。

ペルー政府は一時外出禁止令を発令し、都市封鎖も行った。中東のイラクや南アジアのスリランカでも同様の混乱が生じた。


この影響は途上国だけではない。ベルギーの首都ブリュッセルでは2022年6月20日、物価高対策を求める市民7万人規模の抗議デモが行われ、一部ではストライキも行われ電車やバスなど公共交通機関の運行に大きな影響が出た。


世界的に危惧される資源・食料の不足

欧州の中にはロシア産原油や天然ガスの依存している国も多く、それらの輸出が少なくなればなるほど物価高騰が発生し、先進国でも混乱が拡大する恐れがある。

また、国連のテーレス国連事務総長は2022年5月、「ロシアによるウクライナ侵攻により、今後数カ月のうちに世界的な食糧危機が発生し、それが数年続く恐れがある」、「ウクライナの輸出が紛争前の水準に回復しなければ、気候変動やパンデミックの影響と相まって何千万人もの人が、栄養不良、飢餓、食糧難に陥る恐れがある」など強い警戒感を滲ませている。



ロシアとウクライナは世界の小麦供給の3割を生産しているが、侵攻以降輸出が激減し、世界的に小麦価格が上昇している。


貧困率と治安率の悪化がもたらすものは


国連の中南米カリブ経済委員会(ECLAC)も2022年6月、今年の中南米カリブ海地域の貧困率が悪化するとの見解を示した。ECLACは、地域一帯の貧困率は昨年の33%から0.9%上昇するとみられるが、原因はウクライナ侵攻によって物価が急激に上昇するなど経済的な混乱が拡大したことにあるとの認識を示した。

日本でも少なからずこの影響が出ており、それを感じる人も多いはずだ。世界では現地の治安を悪化させるレベルまで混乱が拡がっており、今後の海外渡航ではこれに注意を払う必要がある。

 
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