ブラジルの「ガラナ」の自販機を発見!黄色と緑に彩られた群馬県・大泉町【日本の外国人街を歩く2】
TABIZINE / 2022年9月18日 12時0分
横浜の中華街や新大久保のコリアンタウン以外にも、日本には外国人の集まる街がたくさんあります。ネパール、ベトナム、タイ、ミャンマーなどなど、海外に行ったような気分になれる外国人街を、外国人コミュニティの取材を続けているライターの室橋裕和が案内します。第2回は、ブラジルタウンとして有名な群馬県・大泉町です。
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駅舎もブラジリアン・カラーの大泉町
群馬県の大泉町といえば、ブラジルタウンとして有名です。その玄関口、東武鉄道・小泉線の終着駅、西小泉駅に着くと、小さな駅舎がグリーンとイエローのブラジリアン・カラーに彩られていてびっくり。いきなりブラジル気分にさせてくれます。
駅のホームにある表示も、日本語だけでなくブラジルの母語であるポルトガル語のほか、英語やスペイン語など多言語表記。
そして駅前では、やってきたラテン系の人たちが友達同士、楽しそうにおしゃべりしながら電車に乗り込んでいきました。
雑貨店や送金ショップなど生活感のある街並み
駅前のロータリーを出ると、すぐにブラジルやペルーの食材を扱う小さな雑貨店が。スイーツやパンなども売っていて食べ歩きも楽しそう。軒先ではポルトガル語のフリーペーパーが置かれていて、日本の文化の紹介や生活情報、それに求人情報も満載で、この街に暮らす外国人の生活が伝わってくるような気がします。
駅前の大通りを西のほうに歩いていくと、外国人向けの派遣会社や、海外送金のショップ、ビザ手配を請け負う会社など、外国人の暮らしに欠かせない施設も並んでいます。
シュラスコやペルー料理などレストランも充実
そして町の南北を貫く「いすみ緑道」という道に沿って、いくつものレストランが並んでいます。ブラジル名物の肉の串焼きシュラスコを出す店や、ペルー料理の店など、どこも本格的なおいしさ。店内ではラテン系の人々でにぎわい、日本とは思えない雰囲気に包まれています。
もちろんどの店でも、日本語は通じるし日本語メニューもあるので安心。わからないメニューなども親切にフレンドリーに教えてくれます。
いずみ緑道からさらに西へ。日本の街並みの中に、送金会社やブラジル人経営のリサイクルショップ、美容室などが点在している様子を眺めながら歩いていくと、大きなスーパーマーケットが2軒、並んでいる場所が見えてきます。
スーパーマーケットの品ぞろえも楽しい
「TAKARA」と「キオスケ・シブラジル」、どちらにも南米の食材がいっぱい。主食となっているさまざまな豆、ハーブや調味料、スイーツ、お酒やマテ茶やコーヒーなどなど、現地のメルカド(市場)にいる気分。お土産を買うなら、こうしたスーパーマーケットがいちばんでしょう。
肉コーナーを見てみると牛肉がとくに多いのですが、内臓やイチボ(お尻の肉)など日本のスーパーマーケットよりも幅広い部位を扱っていて、しかもとっても安いんです。量もたっぷりで、ブラジル人のパワーの源を見る思いです。
それに、どのスーパーマーケットでもしっかりベーカリーが入っていて、焼きたてのいい香りが漂ってきます。とくにチーズを練り込んだ「ポンデケージョ」はおすすめです。
もう少し西に進んだ場所にあるスーパーマーケット「カサブランカ大泉」の前では、こんな自販機も発見。ブラジルの国民的飲料「ガラナ」と、ペルーの国民的飲料「インカコーラ」が売られていました。
それに大泉では、各所にポルトガル語の表記があることに気づくでしょう。ごみ捨てのルールや公園などの注意書きなど、さまざまな場所で目にします。異なる文化の人々が同居するためには必要なことなのでしょう。
バブル時代に多数の日系人が移住
小さな町ですが、ラテンのムードたっぷりの大泉。どうしてこれだけブラジルやペルーの人たちがたくさん暮らしているのでしょうか? そのきっかけは30年ほど前にあります。
それはバブル時代のこと。製造業の町である大泉をはじめ、日本はどこも人手不足に悩まされていました。好景気のためにさまざまなモノの生産が追い付かず、全国の工場は労働者がまったく足りず、人手を求めていたのです。しかし、日本人の若者は製造業の仕事を「3K(きつい、汚い、危険)といって、あまり就きたがりませんでした。
そこで政府は、外国人の労働力に頼ることにしました。目をつけたのは「日系人」です。ブラジルをはじめ南米には、明治から昭和にかけて移住していった日本人の子孫がたくさん暮らしています。彼らを呼び戻そうと考えたのです。
法律を改正し「日系人の2世と3世、その配偶者」が日本に住み、働けるようにしました。1990年のことです。こうして日系ブラジル人や日系ペルー人が日本全国に急増しましたが、自動車産業をはじめとした製造業の町・大泉はとくに地域をあげて外国人を受け入れたのです。
こうした歴史は、西小泉駅の東側にある「ブラジリアン・プラザ」に入っている大泉町観光協会で知ることができます。日系人の歩みについての詳しい解説や資料、書籍などもたくさんそろっている、ちょっとした博物館です。
観光協会ではレンタサイクルもあるので、これで町を回るのも楽しいでしょう。
さらに多国籍化が進む街
そして現在の大泉は、ブラジルタウンからインターナショナルタウンに変わりつつあります。日系ブラジル人が暮らしてきたことで町に外国人を受け入れる下地ができて、その上にさまざまな国の労働者がやってくるようになったのです。だから、いまではレストランも多国籍。
大泉は半日ほどのプチ旅行にはぴったり。街を歩いて異国のグルメを味わい、移民の歴史を知ってちょっとした学びを得て、スーパーマーケットでお土産をたっぷり買って。そんな休日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
[All photos by Hirokazu Murohashi]
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