【日本三大そば】岩手「わんこ」・長野「戸隠」・島根「出雲」の歴史や特徴
TABIZINE / 2022年12月31日 7時30分
大晦日といえば「年越しそば」。今日、そばを食べる予定の人も多いのではないでしょうか。ところで「日本三大そば」と聞いて、どこのそばが思い浮かびますか? 今回は、日本を代表するそばとして挙げられる3つのそばの歴史や特徴を紹介します。そばの種類や食べ方の違いに驚くかもしれません。
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「日本三大そば」は岩手「わんこ」・長野「戸隠」・島根「出雲」
そばは日本全国にさまざまな種類がありますが、「日本三大そば」といえば、岩手県の「わんこそば」、長野県の「戸隠(とがくし)そば」、島根県の「出雲(いずも)そば」の3つといわれています。
それぞれ麺の色や太さ、味わい、食べ方も異なり、個性がある日本三大そばの歴史や特徴、食べ方を紹介します。
かけ声とともに次々にお椀にそばを投げ入れる「わんこそば」(岩手県)
「わんこそば」とは、「じゃーんじゃん」「それ、どんどん」というかけ声とともに、給仕が一口分のそばを次々にお椀に投げ入れる、岩手県の郷土料理です。「わんこ」とは木地椀を指す方言で、そばの由来は定かではありませんが、花巻説と盛岡説があるそう。
花巻説は、南部家第27代・利直公(としなおこう)が上京する際、花巻に立ち寄り、旅の同行者に郷土名産のそばを振る舞ったところ、利直公自身がそのそばの風味を大変気に入り、何度もおかわりしたという説。
一方の盛岡説は、大のそば好きで、平民宰相として知られる原敬(はらたかし)が盛岡に帰省してそばを食べた際、「そばは椀コに限る」といったことから広まったという説です。
古くから盛岡や花巻などの地域では、客人をもてなすのにそばを振る舞う習慣があったとか。一度に大勢の人に茹でたそばを振る舞うには、少量ずつお椀に盛って出すしかないので、その作法が、わんこの始まりではないかといわれています。食べ終わるとすぐにお椀にそばを入れるのは、「おてばち」と呼ばれるおもてなしの礼儀だそうです。
また、「大食い・早食い・競い合い」のイメージがある「わんこそば」ですが、本来は、お椀に次々と給仕される一口そばを、お好みの薬味(なめこおろし・まぐろ・白ごま・ねぎ・青しそ・のりなど)を加えて、マイペースに食べるもの。お腹いっぱいになるまで何杯でもおかわりできるのも魅力です。さらに「ごちそうさま」したくなったら、お椀にフタをする点もユニーク。花巻市や盛岡市を訪れたら、ぜひ楽しみながら味わいたいですね。
古くから伝わる技を使った、豊かな風味で喉ごしが良い「戸隠そば」(長野県長野市)
写真提供:(公財)ながの観光コンベンションビューロー
朝霧がかかるような標高700m前後の高冷地で育ったそばを使った「信州そば」は、長野県を代表する郷土料理です。朝霧は霜に弱いそばをやさしく守るといわれています。「信州そば」の中でも、「戸隠そば」の歴史は古く、平安時代に山岳修験者の携帯食としてそば粉が珍重されたのが始まりです。
江戸時代には、寛永寺から当時の戸隠山・顕光寺に「そばきり」の技が伝えられたという記録があり、その後、遠来の客人などに振る舞うおもてなし料理として広がりました。戸隠神社となった明治以降も、そば打ちの技は大切に受け継がれ、現在に至ります。
「戸隠そば」は豊かな風味で、喉ごしが良いのが特徴です。また、一本棒・丸伸ばしという古くから伝わるそば打ち方法で、小分けにした盛り付けは「ぼっち盛り」と呼ばれています。ぼっち盛りとは、一口サイズのそばの束を5束ほど用意し、ざるに並べる盛り方のこと。5束になっている理由は、戸隠でいい伝えられている神々を表しているそうです。
さらに、そばの薬味に欠かせない「わさび」は、長野県内の9割以上が安曇野市産。全国一位の生産量を誇ります。北アルプスの雪解け水で育ったわさびは、なめらかな口当たりとまろやかな味わいが評判です。
戸隠そばは、お店によって麺の太さやつゆの味などが異なります。食べ比べたり、訪れるたびに違うお店でそばを味わうのもよさそうですね。
つゆの濃さを自由に調整できる、黒っぽく味わい深い「出雲そば」(島根県)
「出雲そば」は、江戸時代初期に松江藩の松平家初代藩主・松平直政公が信州松本藩から移ってきた際、そば職人を連れてきたことが始まりとされています。現在は、出雲地方を代表する食文化のひとつです。
出雲そばの一番の特徴は、一般的なそばと比べて見た目が黒っぽいこと。通常、そば粉を作るときは、殻をむいたそばの実を一番粉から四番粉に分類します。そばの実の中心に行くほど白くなり、中心の白い部分「一番粉」で打ったそばが、「更科そば」と呼ばれるものです。
出雲そばは粉の選別はしません。殻のついたそばの実をそのまま挽き込む「挽きぐるみ」と呼ばれる製粉方法で作っています。そのため、黒っぽくなりますが、風味豊かで味わい深いのが特徴です。
また、出雲そばには冷たい「割子そば」と、温かい「釜揚げそば」があります。「割子そば」は、江戸時代、松江の城下町では、屋外でそばを食べるために、弁当のような四角い重箱にそばを入れて持ち運んでいました。その名残りで三段に重なった赤くて丸い器に入っているのがポイントです。
「釜揚げそば」は、出雲大社など神社周辺が発祥といわれています。全国の神々が集まる旧暦の10月に「神在祭」が行われていますが、昔はこの祭りの際、神社周辺に屋台が出て、温かい釜揚げで新そばを振る舞っていたそうです。
そばは茹でた後に水洗いをするのが一般的ですが、屋台で都度洗うのは難しく、鍋や釜から茹でたそばを器に盛り、とろみのあるそば湯を入れ、つゆや薬味をかけて食べていたとか。
「割子そば」と「釜揚げそば」の共通点は、自分でつゆを入れて味を調節できる点です。それぞれの食べ方については下記をご覧ください。
割子そば・・・3段重ねたまま1段目の蕎麦の上に薬味を散らし、上からお好みの量のつゆをかけて1段目を食べます。食べ終えたら、残ったつゆを2段目にかけて、空の器は一番下に重ねましょう。そして、2段目に薬味を散らし、つゆを追加して食べます。3段目も同様です。また、そばについてくる「そば湯」には、お好みの量のそばつゆを入れて飲みます。
釜揚げそば・・・そばつゆを入れ、お好みの濃さに調整してから食べます。
出雲地方を旅行したら、どちらのそばも味わってみたいですね。そばの食べ歩きをするのもおすすめ!
[All photos by Shutterstock.com]
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