『不適切にもほどがある!』も大ヒット!昭和オヤジの逆襲【画像】読者アンケート「リアルな声」
日刊大衆 / 2024年4月21日 12時0分
「これって何ハラ?」と常にハラハラ。言いたいことも言えない世の中より、懐かしの時代にレッツ、トリップ!
阿部サダヲ主演、宮藤官九郎脚本
俳優の阿部サダヲ(53)が主演を務め、1月クール最大の話題作となった、宮藤官九郎(53)脚本のドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)が、3月29日に最終回を迎えた。
「阿部が演じたのは、1986年(昭和61年)の中学校の体育教師である小川市郎。言葉遣いが荒く、不適切な言動が多い“昭和のおじさん”市郎が、ある日、2024年の現代にタイムスリップし、コンプライアンス意識に縛られた令和の人々に、考えるきっかけを与えていくヒューマン・コメディとして、人気を博しました」(テレビ誌記者)
劇中、現代のコンプラに照らし合わせて“不適切”な言動が出てくると、「〈この作品には不適切な台詞や喫煙シーンが含まれていますが 時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み 1986年当時の表現をあえて使用して放送します〉などと注意喚起のテロップが流れるのも“ふてほど”の恒例でした」(前同)
ふてほど人気の理由
ジャーナリストで放送評論家の小田桐誠氏が、こう語る。
「昭和の時代に学生から社会人になった僕らの世代は、あのドラマを見て、“あの頃は社会全体に余裕があったよな”と思うだろうし、当時を知らない世代も、昭和って、こんなに面白い時代だったのかと思えるところが、人気の理由じゃないでしょうか」
昨今は、コンプラ、セクハラ、〇〇ハラなどと、何かと気を遣う世の中でウンザリするばかり……。
そこで『不適切にも~』の大団円を記念し、コンプラ地獄な令和の時代をぶったぎるような、80年代の昭和のモーレツな日常を振り返ってみよう。
タバコはかっこいい
まずは、“タバコはカッコいいもの”だった喫煙事情に関して。
ドラマの中でも、教師たちが校長室で保護者の前でタバコをプカプカしているが、そんなのは、昭和では当たり前すぎる光景だ。『#平成生まれは知らない
昭和の常識』(イースト新書Q)の著者でコラムニストの服部淳氏がこう続ける。
「当時は教室でタバコを吸っている教師もいましたからね。病院の待合室には灰皿が設置してありましたし、タバコを吸いながら診察する医師もいたとも聞きます。ガソリンスタンドなどの引火の危険がある場所以外なら、ほぼ、どこでもタバコが吸えた時代です」
男性の喫煙率の高さ
その最大の要因は男性の喫煙率の高さにあった。
「JT(日本たばこ産業)が毎年発表している『全国たばこ喫煙者率調査』によれば、調査開始の翌年である66年(昭和41年)には、男性の喫煙率は83・7%を記録、特に40代にいたっては87・3%と、健康な人のほとんどが喫煙者と言っても過言ではない状況でした」(全国紙社会部記者)
さすがに80年代は、そこまでの割合ではなかったものの、タバコを吸うことに後ろめたさなどは感じない時代だったのは間違いない。
通勤電車や職場でも
それは通勤時も同じ。通勤電車の車内で吸う人こそ、いなかったが、
「高架ホームに着くなり、タバコをふかしながら階段を下りて改札を通り、そのまま地下鉄の駅へ降りて行っていました。
喫煙所ができて制限されるまでホーム全体が灰皿代わりで、電車が近づいてくると、吸殻を線路に投げ捨てる光景も、よく見かけました」(前出の服部氏)
営団地下鉄(現・東京メトロ)が終日禁煙になるのは88年(昭和63年)になってから。それまでは朝夕通勤通学時の禁煙タイムを除き、密閉された地下の空間でタバコが吸えたのだ。
本誌が3月18日号で実施した読者アンケート「『昭和のほうが良かった』と思うのは、どんなときですか?」(以下=読者アンケート)でも、
「列車や職場で、自由にタバコが吸えた」(66・会社員)
「どこでも自由にタバコが吸えたのは、よかったな~」(58・自営業)
「タバコの吸える場所が多かった」(51・農業)
と、嫌煙だの受動喫煙だのという風潮など、存在しなかった時代の愛煙家オヤジたちの意見が多かったのも納得だ。
ハラスメントも日常茶飯事
タバコを吸いながら出勤し、会社に着くと、「おはよう!」と挨拶代わりに同僚女性にタッチ。どこかの町長が、そうやって辞職に追い込まれたばかりだが、そんなセクハラ行為も日常茶飯事だった。
当時、証券会社に勤めていたというA子さんが、苦笑いをしながら言う。
「書類を渡せば必ず手を握られるし、エレベーターで二人きりになると、何度もキスされそうになりました。他にも、“オレは洋服の上からでもスリーサイズが分かるんだ”とか“一発やらせろ”とか、冷静に考えれば、すごい時代でしたね」
令和では、それこそ一発アウトになるような光景だが、むしろ、これが昭和では一般的だったのだ。
景気が良く税金も安かった
おおらかでありながらも、当時は景気もアゲアゲで、気持ちもイケイケ。前述の読者アンケートにも、
「景気が良かったし、税金が安かった。医療費の自己負担も少なかった」(62・自営業)
「給料も毎年、1万円以上の昇給があった」(57・会社役員)
「貯金するだけで金利で儲けられた」(62・畜産業)
と、バラ色の未来に目を輝かせていた意見も多く寄せられた。
「3月、日銀がマイナス金利政策の解除を決定しました。ただ、金利が復活したとはいえ、いまだ、その値は雀の涙以下。それに比べ、80年代の初めは、10年の長期国債の利回りが12%超。10 万円の小遣いで国債を買えば、利子だけで毎年、ディナーを楽しめた時代です」(経済誌ライター)
会社の飲み会では
仕事をバリバリとこなした後は、給料を握りしめてアフター5へGO!
「もちろん、会社の飲み会で若い女子社員は全員、上役の席の近くに座らされ、お酌を強要されました。完全に“ホステス”扱いでしたね(笑)」(前出のA子さん)
これに関して、興味深いデータもある。
職場結婚が減っていき
「昭和から平成に移る頃に、職場結婚が減ってくるんです。つまり、昭和の時代には上司が職場の若い男女を飲みに誘い、仲良くさせる文化が残っていたということでしょう」(服部氏)
今なら「おまえ、まだ結婚しないのか? いい男、紹介してやろうか」と言ったら即、セクハラ及びパワハラ認定だが、当時は、それが許された時代。
国内企業の9割近くが社員旅行
また、「観光庁の資料によると、バブル期には国内企業の9割近くが社員旅行を実施していましたが、近年は半分以下にまで落ち込んでいます」(前出のライター)
読者アンケートでも、「社内行事、懇親会がなくなり、女性との交流機会がほとんどなくなった」(58・会社員)
「あの頃は家庭的な職場が多くて明るかったし、牧歌的だった」(70・無職)
との声があったように、男女の社員同士が出会う機会は、令和の時代より確実に多かったのだ。
「居酒屋で、“だから、おまえはダメなんだ!”と後輩を説教して絆を深めた」(66・公務員)
「キャバレーやカラオケスナックで、朝まで後輩を連れ回して楽しんだ」( 59 ・教員)
プロ野球のナイターやプロレス中継も
ときには午前様になるほど“飲みニケーション”も活発だったが、まっすぐ家に帰れば、別の楽しみが。
「地上波では毎日、プロ野球のナイター中継が楽しめたし、プロレス中継も88年(昭和63年)までゴールデンタイムに放送されていました」(服部氏)
当時はテレビも一家に一台の時代から一人一台の時代へ。オヤジたちは晩酌しながらプロ野球選手に、若者たちはアイドルに声援を送っていた。
松田聖子や中森明菜、小泉今日子らアイドル全盛
「80年代といえば、松田聖子、中森明菜、小泉今日子らアイドルの全盛時代。『ザ・ベストテン』(TBS系)や『ザ・トップテン』(日本テレビ系)などの歌番組も真っ盛りでした」(夕刊紙デスク)
今の時代のように、メディアや趣味が細分化しておらず、アイドルや歌番組、野球中継は、世代を問わず“共通言語”だった。
「アイドルの実力と知名度が今と雲泥の差。今はグループアイドルが多いが、一人で歌もグラビアもドラマもこなしていた」(73・無職)
「歌詞に大きな意味やメッセージが込められていた。誰もが口ずさめました」(55・公務員)
河合優実も話題に
ちなみに、ドラマ『不適切にも~』で、主人公の娘・純子を演じたのは河合優実(23)だが、
「昭和のアイドル・山口百恵さん似のルックスもさることながら、聖子ちゃんカットでロングスカートをはくスケバン女子高校生役で、ドラマが始まるなり、“あの娘、誰?”と話題を呼びました」(前出のデスク)
刺激的なテレビの宝庫
昭和のテレビは、今では考えられないほど刺激的な番組の宝庫だった。
「“ふてほど”にも、『トゥナイト』(テレビ朝日系)を参考にしているであろう『早く寝ナイト チョメチョメしちゃうぞ』が登場しました」(前同)
伝説の深夜番組『トゥナイト』、
「『早く寝ナイト~』でも、お笑いトリオ『ロバート』の秋山竜次(45)演じるMCの鈴木福助が、スタジオの内外で“大暴走”。廊下ですれ違った女性に“ネエちゃん、チョメチョメ足りてる?”なんて言いながら、触っていましたけど、まさに“ザ・昭和の業界”って感じでしたね」(同)
コンプラなきに等しい芸能人水泳大会
コンプラなど、なきに等しかったが、その代表格の一つが、70年代に始まり、80年代には民放各局が、こぞって放送した「芸能人水泳大会」だ。
「当時はアイドルブームの全盛期。“花の82年組”など、大人気の女性たちの水着姿を見られるとあって、夏の夕食時の風物詩にもなりました。中でも話題になったのが、水上騎馬戦でのお約束、“ポロリ”でしょう!」(同)
そう、騎馬にまたがるビキニ姿の女性アイドルが揉み合いの末に水着が外れる“ハプニング”が、ゴールデンタイムに日本中のテレビで流れたのだ。
「やがてアイドルや事務所側が“ポロリ”を嫌がって出演辞退するケースが出て、水着がビキニからワンピースに変わっていきました。
それでもビキニ姿の女性が必ず登場し、お茶の間の男性陣の視線が彼女たちに集中しました」(芸能事務所関係者)
深夜番組で夜更かし
あの頃のテレビは面白かったという声は、読者アンケートでも特に目についた。
「青春時代そのものだった」(60・契約社員)
「深夜に、こっそり楽しめる番組があり、親の目を盗み見るのに興奮した」(53・フリーター)
「『トゥナイト』『ギルガメッシュないと』『オールナイトフジ』『11PM』……すべて復活希望!」(50・団体職員)
「深夜番組が面白かった。今では考えられない映像がいっぱいで、夜更かしをしまくっていた」(55・会社員)
お笑い時代劇バラエティ『志村けんのバカ殿様』
お色気番組だけではない。前出の小田桐氏は、こう続ける。
「仕事柄、ユーチューブで当時の番組をチェックすることがありますが、『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ系)シリーズなどの一部に、よく、こんな番組が作れたなというシーンが出てきます」『志村けんのバカ殿様』は、まさに『不適切~』の時代の舞台となった86年(昭和61年)に、事実上レギュラー化し、ゴールデンやプライムタイムに放送されていた、お笑い時代劇バラエティ番組。
「たとえば、バカ殿様が蔵の中で時間を止める懐中時計なるものを発見し、動けなくなった腰元の手を取って……」(小田桐氏)
おっとっと、『これ以上は当編集部のコンプライアンス規定にのっとり、表現できません』とテロップを入れたくなるほど!?
8時だョ!全員集合やオレたちひょうきん族も
「もちろん、昭和の時代であっても、『8時だョ!全員集合』(TBS系)、『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)のように、放送後に視聴者からクレームが来るケースもあったので、作る側がまるで無関心だったとまでは言いません。しかし、今に比べると、かなりハードルが低かった時代です」
小田桐氏は、こう分析する。
ドラマは内容に奥行き
一方、ドラマには今より内容に奥行きがあり、社会性のある作品が作れたという。
「バラエティだって時の権力者を皮肉る漫才もありました。やはり、良くも悪くも、表現方法が多様だったから可能だったんでしょうね」(前同)
多様性の時代といわれながら、逆に、どことなく息苦しさを感じる現代。
「『不適切にも~』の最終回、物語を締めくくる最後に、〈この作品は不適切な台詞が多く含まれますが 時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み 2024年当時の表現をあえて使用して放送しました〉とのテロップが映し出されましたが、未来からしたら、令和の今も不適切かもしれませんね」(前出のテレビ誌記者)
昭和オヤジがモーレツに闊歩したあの頃を懐かしく感じつつ、時代に合わせてアップデートしていくとしますか……。
【画像】読者アンケート「リアルな声」
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