東映、Vシネ、アウトレイジ……任侠映画は大物俳優への近道?
日本タレント名鑑 / 2015年11月11日 9時55分
今も昔も海外で評価される日本産・任侠映画。
昨年末には高倉健・菅原文太という二人の偉大な任侠映画スターが逝去しましたが、任侠映画という不動の日本ブランドを支えた二人の功績は、一言では言い表せないものがあるでしょう。
日本における任侠映画と時代を彩る俳優たちの歴史をざっと振り返ってみました。
任侠映画の創成期を支えた二人の俳優
1950年代、日本映画は「時代劇」ブームでした。
黒沢明監督・三船敏郎主演の映画、『酔いどれ天使』(1948年)など、ヤクザを取り扱ったものはいくつかありましたが、「任侠映画」というジャンルが一般的に浸透することとなったのは、のちに東映の社長となる岡田茂がプロデュースし、大ヒットを記録した『人生劇場 飛車角』(1963年)によるものであったといわれています。
当時、「時代劇の東映」と呼ばれるほどに数多くの時代劇を取り扱ってきた東映ですが、時代劇ブームの衰退により、会社の経営が悪化。『人生劇場 飛車角』のヒットを機に、時代劇から任侠映画の会社へと変貌を遂げました。
この映画に主演した俳優が鶴田浩二。戦後日本を代表するアイドルであり、映画スターでもあった鶴田は、この映画の成功によって、任侠映画のスターとしても認知されることとなります。
この『人生劇場 飛車角』の共演者に、もう一人の任侠映画のスターがいます。その俳優の名前は、高倉健。
「健さん」の愛称でお馴染みですが、以降も『日本侠客伝シリーズ』『網走番外地シリーズ』など、出演した数多くの任侠映画が軒並み大ヒットを記録しました。
不滅のブランド『仁義なき戦い』
50年代の時代劇ブームから一転、60年代は東映を中心に、多くの任侠映画が世に出ました。
もはや「任侠映画といえば東映」と呼ばれるまでになった東映は、70年代になると「実録シリーズ」と呼ばれる作品を手掛けるようになります。
「実録シリーズ」までの任侠映画は、50年代の時代劇ブームの流れを受け、勧善懲悪的で単純明快なストーリーがその多くを占めていました。ところが「実録シリーズ」の走りとされる、深作欣二監督の『仁義なき戦い』(1973年)は、実際に起こった広島での抗争事件を基とした、よりリアルでバイオレンスな作風が話題となりました。
それまでの虚構的な任侠映画から一転、血なまぐさい描写と怒号がこだまするこの『仁義シリーズ』の主演俳優といえば、菅原文太。
ストイックで静的な高倉健のヤクザとは対照的に、野犬のように感情をむき出しにする菅原文太もまた観客の熱狂的な支持を受け、任侠映画のスターとして認知されることとなります。
現在でもバラエティ番組などで乱闘が始まると「パララーー♪」というメインテーマがBGMとして流れるほど有名となった『仁義シリーズ』、「実録」と謳うだけあって、現実の暴力団よろしく非常に多くの登場人物がおり、菅原文太の他にも、梅宮辰夫、松方弘樹、田中邦衛など、のちに大物俳優と呼ばれるようになる面々が数多く出演しました。
Vシネ、アウトレイジ……現代に受け継がれる任侠映画のDNA
80年代、レンタルビデオが一般的になると、娯楽要素の強い任侠映画の需要はさらに高まりました。
劇場公開はせず、ビデオ販売(レンタル)のみを目的とした低予算映画は「Vシネマ」と呼ばれ、バブル景気の煽りも受け、実に多くのタイトルが流通しました。
任侠モノのVシネマは、「ヤミ金融」「ギャンブル」といった身近に潜むテーマを取り扱ったものが多いことや、映画というよりはテレビドラマ寄りのわかりやすいキャラクターが多いことも特徴で、哀川翔、竹内力、小沢仁志などの個性派俳優を輩出したことでも知られています。
また、現代の任侠映画を語るうえで、北野武監督の存在は欠かせません。ハリウッドの監督からも支持される「キタノ映画」、その作品の多くにヤクザが登場します。その最たる例として『仁義なき戦い』のように、暴力団間の抗争をテーマにした『アウトレイジ』(2010年)がありますが、加瀬亮や三浦友和といった、普段はヤクザとかけ離れた芸風の役者たちが織り成す迫真の演技は必見の価値があるでしょう。
近年では『ROOKIES』(2009年)や『クローズ』(2007年)など、「ヤクザ」ではなく「ヤンキー」を題材に扱った映画も多く見受けられますが、登場人物の多さや、俳優の個性が存分に発揮されるアクションシーンなど、任侠映画の影響は色濃いと言えます。
「任侠映画」というジャンルは昔に比べると減少してはいるものの、任侠映画のDNAは脈々と受け継がれているのではないでしょうか。
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