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マンガ原作映画はオリジナルを超えることができるか?日本名(迷)作マンガ映画史

日本タレント名鑑 / 2016年3月15日 9時55分

マンガ原作映画はオリジナルを超えることができるか?日本名(迷)作マンガ映画史

映画はマンガ原作を超えられるのか!?

日本が世界に誇る文化であるマンガを映画化する試みは多数行われていて、最近は特にマンガ映画の比重は大きくなっている。日本のマンガ映画の歴史は、マンガが一般に普及し、「子供の読むもの」というイメージから「オトナや学生も夢中にさせるもの」として認知されてきた「60〜70年代以降から」といえるのではないだろうか。


大島渚の『忍者武芸帳』(1967)はマンガの原画そのものを撮影し、そこに役者が吹き替えるという「漫読」的な、今見るとかなり斬新な方式で、マンガの映画化作品の先駆的な作品だった。以降も人気マンガは続々と映画化されていったが、SMAPの香取君バージョンに先駆け映像化されていた、せんだみつおが両津勘吉を演じた実写版『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(1977)など、原作のイメージとあまりにかけ離れた「何でこうなった?」というような作品も多く存在していた。

同様に、小栗ルパンに先駆けた初実写化作品『ルパン三世 念力珍作戦』(1974)などは「これがルパン?」と思う方もいるだろう。田中邦衛の次元大介はアニメ版のダンディーな次元に慣れたファンからすると卒倒モノかもしれないが、なかなかの見物ではある。マンガの映画化には原作と実写化キャストとの「イメージの差」という問題は絶えず付きまとうようである。

時にはマンガ以上にコミカル!?マンガ映画の珍表現

ストーリー展開もオリジナルの物語にするもの、連載中のマンガを刊行されているところまで映像化してみるもの……と色々だ。映画のオープニングで文字通りマンガから主人公、山田太郎が飛び出してくる『ドカベン』(1977)は、マンガを丹念に映画化した結果、映画のほとんどが原作冒頭の柔道編中心、野球は触れる程度という驚きの展開を見せる。

「ドカ弁を高速喰い」「人が空を飛び地面に頭から突き刺さる」などの仰天描写が連発、監督の鈴木則文が『トラック野郎』シリーズから培ってきたマンガ表現が凝縮された、マンガ映画の最高峰的作品といえるのではないだろうか。

同種の作品としては谷岡ヤスジのナンセンスな世界を描いた『メッタメタガキ道講座』(1971)などがあり、大量の鼻血が噴出する「鼻血ブー」を発泡スチロールで実写化している。

マンガ映画はスターの登竜門?

80年代になってマンガ映画のムーヴメントは一気に花開く。映画とマンガのパワーバランスはこのあたりで並んだと言えるのかもしれない。当時隆盛したアイドル文化とマンガ映画が結びつき始めるのだ。アイドル映画草創期には、東宝がたのきんトリオを起用した一連の映画作品があったが、その中では当時のヤンキーのバイブル的マンガ『ハイティーン・ブギ』(1982)が映画化されている。この流れは、後に映画化されたヤンキーの聖典『ホットロード』(2014)などなど、今のマンガ映画のトレンドの1つでもある「恋愛マンガ」系に受けつがれているといえるだろう。

 『コータローまかりとおる!』(1984)など、学園ドタバタコメディマンガの映画もこの時期に多く作られた。ジャパンアクションクラブの総協力でアクション大作になった『伊賀野カバ丸』(1983)では若き日の真田広之が長髪の美少年役で登場している。

そして近年では「マンガのTVドラマ化作品のスペシャル版としての映画版」という作品が増えている。『ごくせんTHE MOVIE』(2009)はTVシリーズのヤンクミの教え子、卒業生が一堂に会する完結編であり、『ルーキーズ -卒業-』(2009)にいたってはTVから繋がった物語が映画版で完結する、という流れになっていた。どちらも元々がマンガ原作であると知らない人もいるほど映像版の印象が強い作品ではないだろうか。

マンガ映画で期待の新人をチェック!

マンガ→TVドラマ→映画というメディアミックス手法が日本映画の興行収入をあげ、一時は邦画の興行収入が洋画を追い越す、といった逆転現象が起こったのも記憶に新しいところである。

『ごくせん』や『クローズZERO』(2007)などは、生徒役で多くの人物が登場する。その中には、小栗旬など後に出世する役者が出ていることも多いので、そういった先物買い的なチェックの場にしてもいいかもしれない。大作マンガ以外でも、近年ではカルト的な人気を誇っている古屋兎丸のマンガを原作にし、多感な思春期の少年たちが暴走していく様や耽美的な世界観などを見事に実写化した『ライチ☆光クラブ』(2015)などもある。

ハリウッドに追いつけるか!?今後期待のマンガ映画

近年のハリウッドでは、バットマンやスパイダーマンといった、人気アメコミの映画化が多くなっているが、これと同様の現象は邦画でも起こっており、CG技術でのビジュアルの進化によって「実写化不可能」と思われていたマンガが続々映画化されている。

その筆頭が『進撃の巨人 ATTACK OF TITAN』(2015)であろう。この作品は劇場版オリジナルのストーリーで展開した事から原作ファンを中心に賛否両論が巻き起こったが、作中での圧倒的な巨人のビジュアルはすでに海外にも驚きを持って迎えられ、映画以外のゲームなど様々なメディアでの映像表現に影響を与えている。
今後待機している期待のマンガの映画化作品としては、花沢健吾のゾンビもの『アイアムアヒーロー』が大泉洋、有村架純主演で公開目前で、ZQN(ゾキュン)に満ちた都会や舞台となるショッピングモールなど完コピで再現されているようだ。

三池崇史のマンガ映画にハズレなし?

また大人気SFマンガ『テラフォーマーズ』(2016)も今年公開予定で待機中だ。火星での超進化ゴキブリとの強化人間の戦い…まさに映像表現の進歩なしには到底不可能な企画であろう。武井咲や山下智之など、豪華なキャスティングにも期待が高まる。

もう1本の期待作が『無限の住人』(2017)。沙村広明原作の、手足がちぎれても再生する不死の剣豪、万次が主人公の伝奇時代アクションマンガだが、なんと主演は木村拓哉。その全貌はキムタクが主演すること以外まだ不明であるものの、否が応でも期待が高まる。この2作、どちらも三池崇史が監督を務めているのだが、三池監督はやくざの抗争が地球を壊滅させるカルト作『DEAD OR ARIVE 犯罪者』(1999)でのマンガ的表現を買われ『クローズZERO』ほかマンガ原作映画を多数監督しており、『ドカベン』の鈴木監督以来のマンガ映画の巨匠であるといえるのではないだろうか。

原作を愛しイメージ通りの実写化を望むファン、単なるなぞりに留まらない実写化を目指す製作サイド……。皆が満足するマンガの映画化はなかなか険しい道なのは事実だ。しかし、吉田秋生原作の『海街ダイアリー』(2015)のようなマンガ映画の枠組みを超越した作品を生む事もあり得る。「マンガの映画化=映画界の企画の涸渇」と安易に切り捨てることなく、日本のマンガ映画に注目していきたいものである。

 

◆ 文/多田遠志

映画ライター。『映画秘宝』ほか各種媒体にてコラムを執筆中。
LOFTグループのライブハウスなどで定期的にイベントを開催している。

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