「PPAP」「ペンパイナッポーアッポーペン」の権利問題ってどうなった?「著作権と商標権」について弁護士に聞いてみた!
日本タレント名鑑 / 2017年2月16日 9時55分
少し前に、ピコ太郎さんの「PPAP」や「ペンパイナッポーアッポーペン」の商標登録に関する問題がニュースなどで話題となりましたが、実際のところ、どういった制度の中、どんな権利が行使されどのような申請・出願がおこなわれていたのか、いまいち把握出来ていない、そんな人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、著作権と商標権について弁護士の先生に改めて聞いてみました。今回「著作権と商標権」について教えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の岩沙好幸先生です。
--記者
少し前に、「PPAP」や「ペンパイナッポーアッポーペン」について、全く無関係の企業から商標出願されていたことがニュースになっていましたが、改めて今回の件について、一体どんなことが起こっており、どこにどんな問題をはらんでいるのか、具体的にご説明をお願いできますでしょうか?
--岩沙先生
商標法上、同一・類似の商品・役務について使用する同一・類似の商標については、先に出願した者に商標を付与するという先願主義が採られています。
しかし、他人が芸や楽曲に使用する文字を商標登録することが登録拒絶事由に該当しないのかどうか、また、ピコ太郎さんは、「PPAP」等について著作権を有しているため、商標登録を認められた企業がこれを使用することが、許されるかが問題となります。
--記者
そもそも、なぜ全く関係のない企業(個人も?)が、勝手に商標権を獲得・出願できるシステムになっているのでしょうか?人のものやアイデアを勝手に法的に自分のものにできる、不思議なシステムのように見えるのですが?
--岩沙先生
他人のコンテンツであっても、商標法上は、これを自己の商品・役務に使用する標章として出願すること自体は制限されていません。もっとも、このような商標の登録を出願した場合に、登録拒絶事由に該当するかどうかが審査されます。
登録拒絶事由はいくつかありますが、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標を登録拒絶事由と定めており(商標法4条1項7号)、出願の経緯や目的が社会的相当性を欠くような場合がこれに当たるとされています。
ピコ太郎さんが芸や楽曲に使用している造語を商標として出願することはその経緯や目的が社会的相当性を欠くとされ、登録拒絶事由に当たるとされる可能性があります。
ただし、公の秩序や善良の風俗といった概念は多様な解釈があり得るので、今回の出願が登録拒絶事由に当たるとは限りませんが、商標法29条は、商標登録が認められた場合に、この登録商標が、商標登録出願の日より前に生じた他人の著作権と抵触するときは、これを使用することができないとしています。
「PPAP」等の芸や楽曲に用いられる造語には創作性が認められ、ピコ太郎さんが著作権を有しているので、この登録商標を商品に付するなどして使用することは、ピコ太郎さんの著作物についての複製権の侵害となるため、ピコ太郎さんの承諾なくこれを使用することは許されないことになります。
--記者
今回争点となっている、商標権と著作権、それぞれどのような力・効力を持つ権利なのでしょうか?また、両方の権利を比較した場合、結局どちらの力・効力の方が強いのでしょうか?
--岩沙先生
商標法は、自己の商品・役務と他人の商品・役務を識別する標識を保護する法律です。商標は登録により権利が発生しますが、未使用の商標であっても、登録を受けることによって独占的な使用が認められ、他人が同一・類似の商標を使用することの差止めや損害賠償請求が可能です。商標の存続期間は設定登録日から10年ですが、更新を繰り返せば、半永久的に保護されます。
これに対し、著作権法は、人の思想・感情を表現した著作物を保護の対象とするもので、表現に一定の個性がある著作物が創作されれば、その時点から、登録等の手続きを行わなくても保護の対象とされます。また、著作権は、保護期間が長いことが特徴で、創作者の死後50年間保護されます。
登録の手続をせずに保護の対象とされること、保護期間が長いことは、著作権に強い権利性が認められますが、商標のように登録主義が採られていないため権利の発生時期が不明確であり、権利の侵害基準にもあいまいな面があります。
このように、商標権と著作権は、法的性質が異なるため、一概にどちらが強い権利ともいいにくく、一長一短があることになります。
--記者
今回に限らず、こういった事は今後も起こる可能性があると思います。例えば私たちが何か新たなサービスや商品を生み出した場合、商標出願含め、どのような対応を行っておけば、こういったトラブルやリスクを回避できるのでしょうか?
--岩沙先生
商標権に限らず、特許権、実用新案権等の知的財産権は、基本的に登録主義、先願主義が採られており、先に出願をした者の権利が優先的に保護されるので、発明や考案をした場合には、早期に出願をしておくということが、権利保護を図り、リスクを回避するための有効な手段ということになります。
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というワケで、今回は“著作権と商標権”について、弁護士の岩沙先生に色々とお話を伺いました。おそらく、今回の件もきちんと正しい判断がなされるとは思いますし、特許庁も既に「自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)」との声明を出しているようです。とはいえ、現在の制度の中で今回のようなトラブルリスクを回避するには、兎にも角にも早めの出願が大切との事。皆様も何か新たな発明やサービスを考案された際には、すぐに出願して自身の権利を守りましょう。
・取材協力
岩沙好幸(いわさよしゆき)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所
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