どこまでが合法でどこからが違法!?「ギャンブル・賭博関連の法律」について弁護士に聞いてみた!
日本タレント名鑑 / 2017年3月10日 9時55分
2017冬ドラマ「銀と金」をご存知でしょうか?あの有名な作品『賭博黙示録カイジ』の作者、福本伸行さんがギャンブル勝負を描いた名作です。今期、同作がドラマ化され、放送も最終回直前。クライマックスに向け盛り上がってきています。
現在は麻雀を題材にしたラスボス相手の最終章に入っていますが、その前にはポーカーを題材にしたヒリヒリするようなギャンブル勝負が繰り広げられていました。知っているようで実はあまりよく分かっていないギャンブルについての法律について、弁護士の先生に詳しく聞いてみました。今回、教えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の篠田恵里香先生です。
--記者
ドラマの中で、ポーカーで数億を賭けで勝負するシーンがあります。改めてギャンブルに関する法律について教えて頂きたいのですが、結局のところ、(今現在)法的にギャンブルとは、どこまでが許されてどこからが違法になるのでしょうか?
--篠田先生
ギャンブル=「賭博」は、法的には、「偶然の事情によって勝敗が決まる勝負事について金銭やその他の財産を賭けること」をいいます。例えば、プロ野球の勝敗や、カードゲーム、ルーレットの勝敗につきお金をかける行為は「賭博」の典型例です。
賭博罪(刑法185条)の条文は、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」となっています。要は、賭博行為をすれば原則違法(犯罪)→「一時娯楽物」を賭けた場合は例外的に合法となるわけです。
まとめますと、「どこまでが許されるギャンブル?」というよりは、「ギャンブル行為は原則として全て賭博行為として違法(犯罪)」であって、一時娯楽物を賭けた場合と、後に述べる特別法による許可がある場合に限って、例外的に合法となるという説明が適切かと思います。ギャンブル場で、ポーカーで現金を賭ける行為は、当然ながら賭博罪として違法ということになります。
--記者
賭けるものがお金で無い場合、例えば「労働」や「物品」などでは、法的な扱いはどうなるのでしょう?後から物品を買い取るようなことも出来るでしょうし、結局のところ、お金を賭けているのと変わらないように思うのですが?
--篠田先生
「賭博」は「お金」のみならず「何らかの財産」を賭ければ成立します。したがって、偶然的な勝敗につき物品を賭けた場合でも、原則賭博にあたります。ただ、「一時娯楽物」の例外がありますので、「負けた方がお菓子1個、ジュース1本」というようなケースであれば、一時娯楽物を賭けたとして合法となる可能性が高いです。判例上は、「低額でもお金を賭けたら一発アウト」と考えられているので、たとえ10円であっても、「今日の試合の予想、負けた方が10円ね。」等とお金自体を賭けた場合は、賭博罪にあたるといえるでしょう。
「労働」は財産ではないので、これを賭けても原則として賭博罪には当たりません。それでは、「負けた方が今日の1000円ランチを奢る」というケースはどうでしょうか。概念的には、お金を賭けたり労働を賭けているように見えますが、裁判所の考え方は、このようにおごりを賭けた場合には、「敗者が一時娯楽物の対価となる金銭を支出した場合は、一時娯楽物を賭けたといえる」と判断しています。要は、「お金を出す行為をしているけれどランチという料理を賭けたのと同じ」ということです。あまりに高額でない限りは、この場合もセーフという判断になる可能性が高いです。
一方、食事の席であったとしても、「持ち帰り可能な高いワインボトル」等を賭けた場合は、一時的な娯楽のためではなく、換価可能な物を賭けたとして賭博罪に該当する可能性が高くなります。
--記者
パチンコ、競馬、競艇など、現時点で世の中に浸透しているギャンブルもいくつかあります。この辺りは、どのような法律でどのような扱いをされているのでしょうか?また、それぞれにおいて、個々の破たんを防止するような制約(賭金の上限など?)は法的に設けられているのでしょうか?
--篠田先生
パチンコ・競馬・競艇・競輪・スポーツくじ・宝くじ等も、先ほどの定義いからいえば「賭博」に当たることは明らかです。しかしながら、これらのように「堂々と世間で公然と行われている賭博」については、特別法によって例外的に許可されているので合法ということになります。1回の購入金額や、くじの発行枚数については一応の定めがありますが、基本的に「〜〜円までしか購入できません」という購入総額の上限は設定されていないようです。
なお、堂々と行われている場合であっても特別法がない場合には、やはり賭博罪として違法・犯罪ということになります。典型例は、実際にお金を賭けて行われている賭け麻雀や、ゴルフ場で行われている賭けゴルフなどがこれに当たると思いますが、やはりこれらの賭博行為は、特別法がない以上、お金や物を賭けて行ったら違法・犯罪ということになります。
また、賭博のための遊技場が存在した場合は、そのような遊技場を設置した設置者に「賭博場開帳等図利罪」が成立します(刑法186条2項:「賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。」)。遊技場で、客として賭博行為を行った場合は、通常の「賭博罪」となりますが、何度もそこに出入りして賭博を行ったということであれば、常習賭博罪(刑法186条1項:3年以下の懲役)が成立し、通常の賭博罪よりも刑が重くなる可能性が高まります。
このように見てみると、「結構身近で違法賭博って行われている気がする」とドキッとする方もいらっしゃるかもしれません。そのとおり、本来は、「ジャンケン負けた方が100円ね。」等と、賭け事をすれば原則全て「賭博罪」に該当します。
しかし、実際に全ての賭博行為を処罰するのは現実的ではありませんよね。したがって、実際には、「遊技場がある」「常習的に行っている」「金額が高い」といった悪質な賭博罪に限って、逮捕・立件されている現状はあります。プロ野球選手の野球賭博などは実際に捜査がなされています。
お友達と「負けた方がおごりね」と楽しむ程度であれば良いですが、実際に「儲かる・儲からない」といったレベルの賭けをしてしまうと、賭博罪として立派な犯罪になりますので、気をつけてくださいね。
--記者
最後にもうひとつ。ギャンブルによって破たんした場合に「自己破産」というワードを耳にする事があります。この自己破産というのは、法的にどのような状況で認められる処置で、その後どのような制約が発生する制度なのでしょうか?
--篠田先生
自己破産というのは、借金が膨らんでもはや返済が不可能となった場合に、裁判所に破産手続きを申し立てて、原則として借金をゼロにしてもらう手続きのことをいいます。法律上は、「浪費・ギャンブル」で作った借金の場合、免責(借金を原則ゼロにすること)が認められないとされていますが、ギャンブルで自己破産する方は少なくなく、相当悪質や高額な借金でなければ免責が認められることが多いといえるでしょう。
自己破産をすると、「選挙権がなくなる」「戸籍に載る」といった誤解をされている方も多いようですが、そのような制約はありません。破産手続中(3〜6カ月間)は一定の士業等の職業に就けなくなることと、破産手続き後、しばらくの間、金融機関から借入をしたり、カードを作ったりするのが難しくなるといった制約意外に、さほどデメリットはありません。
破産はさほど怖いものではなく、法的に認められた制度ですので、仮にギャンブルによる借金が含まれていた場合であっても、返済に困窮した場合には、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
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というワケで、今回は“賭博関連の法律”について、弁護士の篠田恵里香先生に色々とお話を伺いました。誰もが気軽に小さな賭け事をした事が一度くらいはあるのではないでしょうか?実はどんな小さな金額であっても本来は違法のようです。お友達と賭け事を楽しむのであれば、あくまで「娯楽物」を賭ける程度にし、大きな金額でスリルやドキドキを楽しむのはドラマや漫画の中だけにしておきましょう。
・取材協力
篠田恵里香(しのだえりか)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所
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