近親結婚は法律でNG!でも恋愛は?キスは?その先は?「近親恋愛の法律」について弁護士に聞いてみた!
日本タレント名鑑 / 2017年5月30日 10時35分
今期も魅力的な作品がたくさん放送されている春ドラマ。その中のひとつに、土屋太鳳さんが告白12連敗中のヒロインを演じるドラマ「兄に愛されすぎて困っています」があります。今回は、こちらの作品のテーマでもある「兄妹愛」から、改めて「近親恋愛」について、法律の観点から掘り下げてみたいと思います。今回、「近親恋愛」についてお話を伺ったのは、アディーレ弁護士事務所の時光祥大先生です。
--記者
従妹とは結婚出来る、なんて話はよく聞きますが、改めて近親恋愛についての法律を教えて頂けませんでしょうか?また、法律の中で「恋愛」の定義ってどんなものなのでしょうか?
--時光先生
近親結婚について規定した法律は、実は3条分しかありません(民法だけでも1000条以上あるのに、たった3条だけです)。それが、民法734条から737条です。まずは近親者間での「結婚」(法律用語的には「婚姻」と言います)を禁止している734条を見てみましょう。
(近親者間の婚姻の禁止)
第七百三十四条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
この規定により、親子(直系血族)、兄弟(2親等の傍系血族)、おじと姪(3親等の傍系血族)、おばと甥(3親等の傍系血族)等は結婚できません。いとこは4親等の傍系血族なので結婚ができます。この規定に違反する結婚は、そもそも役所で受理されませんし(民法740条)、誤って受理された場合は取り消すことができます(民法744条1項)。
なお、法律上「恋愛」について定義はありませんが、基本的には日常用語の「恋愛」と同じものだと思っていただいて大丈夫だと思います。(ストーカー規制法2条1項柱書には「恋愛感情」という言葉が出てきますが、法律上の定義はありませんので、やはり日常用語と同じように考えていくことになると思います)。
※傍系血族(ぼうけいけつぞく):同じ祖先から分かれ出た血族のことで、兄弟姉妹・おじ・おば・甥・姪・いとこなどはこれに当たります。
--記者
例えば、手をつなぐ、抱きしめる、キスをするなど、愛情表現は様々だと思いますが、具体的にどこからがNG、どこまでがOKなど線引きはあるのでしょうか?
--時光先生
実は、法律が禁止しているのは、あくまで「婚姻」だけです。恋愛感情を抱くことから肉体関係をもつことまで、法律は禁止をしていません(もちろん、それが強制わいせつなど別の犯罪に当たれば別です)。また婚姻しようとしても、犯罪にはなりません。あくまで受理されないか取消しができるだけです。
--記者
養子縁組や離婚など、法的に家族関係が無くなるケースもあるかと思います。そうなった場合は(実際の)血縁関係があったとしても、上記の法律ではさばけなくなるのでしょうか?(もしそうだった場合)逆に意図的にそういった対処をしたケースなど、過去に判例などはあるのでしょうか?
--時光先生
離婚や、養子縁組が解消(離縁)されたあとも、一部の婚姻は禁止され、息子の離婚した妻や、自分が養子にしていた人とは婚姻できなくなります。一度家族になったあとは、婚姻禁止が続くということですね。
ちなみに普通の養子縁組をしても、実の親は親のままで、法的に親子関係がなくなることはありません(親権者は養父母になりますが)。親が2組いるということになりますね。法律上の親子関係を消滅させる特別養子縁組では、実の親と子との婚姻は禁止されます(民法734条2項)
(直系姻族間の婚姻の禁止)
第七百三十五条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
(養親子等の間の婚姻の禁止)
第七百三十六条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
--記者
最後にもうひとつ。漫画などでは時々みかけますが、逆に連れ子同士など、実際の血縁関係は無いが書類的には家族、そういったケースもあるかと思います。その場合はどうなるのでしょう?
--時光先生
連れ子同士の婚姻を禁止する法律の規定はありません。自分の親と、自分の親の再婚相手の連れ子とが養子縁組をしていない場合、そもそも法律上兄弟姉妹関係はありません。養子縁組をしていて、法律上義理の兄弟姉妹になっていても、民法734条1項但書が婚姻を認めていますので、法律上は問題なく婚姻できます。
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というワケで、今回は“近親恋愛”について、弁護士の時光祥大先生に色々とお話を伺いました。今回、改めて驚いたのは、「法律が禁止しているのは、あくまで「婚姻」だけであり、恋愛や行為に対しての法律はない」という事実。漠然と家族間での恋愛は法律でNGだとばかり思いこんでいましたが、あくまで禁止されていたのは「結婚」という制度だけだったのですね。ということで、春ドラマ「兄に愛されすぎて困っています」、楽しみですね。今回教えて頂いた法律を踏まえた上で作品を視聴すると、また違った見方が出来るかもしれません。
・取材協力
時光祥大(ときみつしょうた)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所
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