経済力は重要視されず、基準は「母性優先の原則」!「親権に関する法律」について弁護士に聞いてみた!
日本タレント名鑑 / 2017年6月13日 14時30分
2017春ドラマ「母になる」。それぞれに抱える過去や現実が明かされ、いよいよ終盤に向け盛り上がってきました。お腹を痛めて子を産んだ母、時間と愛を注ぎ育てた母、それぞれに抱える想いが伝わってきて、子を持つ親としても非常に考えさせられるドラマです。
さて、このドラマのテーマでもある「母になるとはどんな事なのか」。今回はそんな視点から、改めて「親権」について弁護士の先生に聞いてみました。今回、「親権」について教えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の吉岡一誠先生です。
--記者
先日のココリコ田中さんの離婚報道の中で、親権を田中さんが持つという事も大きな話題となりました。改めて親権について教えて頂ければと思います。親権とは具体的にどういった権利・義務が発生するものなのでしょうか?
--吉岡先生
親権とは、子を養育監護し、その財産を管理する権利義務であり、大別すると身上監護権と財産管理権に分けられます。
身上監護権には、子の住む場所を指定する権利(居所指定権)、子に対してしつけをする権利(懲戒権)、子が就業することを許可する権利(職業許可権)、認知の訴えの提起など子の身分行為に関する代理権や同意権などが含まれます。
財産管理権には、子の財産を管理する包括的な権利や、子の財産に関する法律行為の代理権などが含まれます。判断能力の未熟な子を保護し、健全な育成を図ることは、親が果たすべき義務でもあることから、親権は「権利」であり「義務」でもあります。
--記者
一般的に父親が親権を持つ事はとても難しいと聞いた事があります。経済的には父親側の方が有利な気もするのですが、実際はどうなのでしょうか?離婚の原因にもよるのでしょうが、過去の判例などでは、どういった場合に父親の親権が認められてきたのでしょうか?
--吉岡先生
裁判所が親権者を定める際の判断基準のうち重要なものとして、「監護の実績・継続性」が挙げられます。これは、主に監護にあたっている親と子の結びつきを尊重し、子の養育環境に変更を加えないようにすることが、子の福祉に資するという考えに基づくものです。
また、子が乳幼児の場合には、「母性優先の原則」という基準も重要になります。これは、低年齢の子については、母性的できめ細やかな監護が必要であるという考え方に基づくものです。これらの判断基準を前提に、一般社会においては、主として母親が育児を担当する家庭が多いことから、母親が親権を取得するケースが多いといえます。
もっとも、父親であるからといって、母親と同様のきめ細やかな育児ができないということはありませんし、実際に父親が親権を取得するケースも存在します。主に父親が子を養育監護しており、監護環境にも特段問題がないといえるケースや、母親が子に対して虐待や育児放棄をしており親権者としての適格性が欠けると認められるケースでは、父親が親権を取得できる可能性が高くなります。
なお、例えば妻の不貞が原因で離婚に至ったというような場合でも、不貞行為を行ったことそれ自体だけで親権者としての適格性がないとはいえないため注意が必要です。また、経済力の差については、養育費で埋めるものと考えられているため、夫婦間で余程の収入の差があるケースでない限り、重視されることはないでしょう。
--記者
ちなみに、親権を得る権利を持っているのは両親だけなのでしょうか?(子供の)兄弟や祖父母、もしくは血縁の無い他人が、両親と同じように親権を得るケースもありえるのでしょうか?
--吉岡先生
親権者には、実親か、養子縁組をした場合の養親しかなれません。しかし、親権者が死亡した場合や行方不明になった場合、または虐待等の理由で親権者が親権の喪失や停止の審判を受けた場合など、親権を行使する者がいなくなったときには、「未成年後見人」が選任され、子の養育監護権や財産管理権など、親権者と同様の権利義務を有することになります。かかる未成年後見人には、親族のほか、弁護士など血縁関係のない者が選任されることもあります。
--記者
今まで親側の目線でいくつか質問させて頂いてきましたが、法的に子供が親を選ぶ権利は認められていないのでしょうか?また、親権の対象となる年齢は決まっているのでしょうか?
--吉岡先生
民法上、「成年に達しない子は、父母の親権に服する」と定められています(同法818条第1項)。そして、現行民法では、「年齢二十歳をもって、成年とする」(同法第4条)と定められていることから、原則として親権の対象となる年齢は20歳未満ということになります。例外的に、20歳未満の子でも、結婚した場合には、成年に達したものとみなされるため(同法第753条)、親権の対象から外れることになります。
子が親権者を選ぶ権利というものは認められていませんが、子が15歳以上の場合は、裁判所が親権者を定めるにあたって、子の意見を聴取することになっており、子の意思が尊重されることになります。子が15歳未満の場合でも、おおむね10歳以上で自分の意思をはっきり示すことができるようであれば、裁判所は子の意思を重視する傾向にあります。
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というワケで、今回は“親権”について、弁護士の吉岡先生に色々とお話を伺いました。「母性優先の原則」について初めて知りましたが、この原則がある以上、フラットな状況の中で父側が親権を持つという事は、非常にハードルが高いようです。また、経済力に関しては重視されないとの事。これも父親側にはなかなか厳しい状況です。
もちろん、両親が仲良く協力しながら子育てが出来れば良いのでしょうが、事情によってそれが出来なくなってしまった場合、やはり子供の将来、幸せを最優先に考えて判断して頂きたいものです。
・取材協力
吉岡一誠(よしおかいっせい)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所
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