紙巻きタバコ、加熱式タバコ、電子タバコ、法律的な扱いの違いは!?「喫煙」について弁護士に聞いてみた!
日本タレント名鑑 / 2017年8月24日 15時30分
2017夏ドラマ「僕たちがやりました」に出演する新田真剣佑さんの喫煙シーンに対する視聴者からのクレームが話題になりました。役柄は高校生ですが演じている新田真剣佑さんはもちろん成人しています。フィクションの世界の演出にすらクレームを入れ始めたら、殺人事件を題材にした刑事ドラマなど全滅・・・なんて思うのは私だけでしょうか。まあ、このような喫煙に関するクレームも、昨今の嫌煙ブームが少なからず後押ししているのかもしれません。
さて、ここ数年で喫煙に対する認識・印象・対策は大きく変わりました。街中から多くの喫煙所が消滅し、お店は全面禁煙が当たり前。電車のホームに灰皿が設置されていたり、電車の普通車両の中でタバコが吸えた事など、もはや若い方々には信じられない光景かもしれません。
加熱式タバコの登場など、喫煙者側の状況も大きく変わってきている昨今ですが、法律的にはどのような変化があったのでしょうか?今回は、「喫煙」に関しての疑問を弁護士の先生にぶつけてみました。今回お答え頂いたのは、アディーレ法律事務所の正木裕美先生です。
--記者
まず、喫煙に対する制約や権利など、喫煙に関する法律について改めて教えて頂けますでしょうか?
--正木先生
喫煙する権利という主張が喫煙者からされることもありますが、法律上の規定はありません。また、最高裁の判例では、(拘禁者という特殊な事例ではありましたが)「喫煙の自由は、憲法一三条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。」(最高裁昭和45年9月16)とされ、明確に喫煙の自由が憲法上保障されるとはしていません。
一方、非喫煙者から嫌煙権が主張されることもありますね。過去に国鉄が喫煙可能だった頃に、他の乗客のタバコの煙で被害を受けたとして損害賠償等を求めた裁判がありました(いわゆる旧国鉄嫌煙権訴訟)。結果的に請求は認められなかったものの、以後公共の場での分煙化や禁煙化が進みました。
現在の喫煙に対する法的制約としては、未成年者喫煙禁止法による20歳未満の喫煙を禁止、鉄道営業法や海上運送法による特定の場所での喫煙禁止、消防法による火災の予防・警戒に必要な範囲で喫煙を禁止する権限などがあります。最近問題となっている受動喫煙の防止については、健康増進法が、多くの人が利用する施設の管理者に防止措置の努力義務を課しています。各自治体が歩きタバコやポイ捨てなどを条例で禁止している地域もありますよね。
今国会では、受動喫煙の防止対策強化を盛り込んだ健康増進法改正(いわゆる受動喫煙防止法案)は見送られました。受動喫煙は医師等専門家からも批判の多いところです。WHO・IOCはたばこのないオリンピックを目指すとしていますし、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、様々な動きがでてくると思われます。
--記者
ちなみに、タバコと同じように葉っぱを燃やして吸引する大麻とは、法律的にどのように差別化されているのでしょうか?また、大麻は所持しているだけで違法になると思うのですが、例えば未成年がタバコを所持していた場合、何かしらの罰則が科せられる事はあるのでしょうか?
--正木先生
法律的には、タバコは「たばこ属の植物」(たばこ事業法2条1号)、大麻は「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品」(大麻取締法1条)と定義されています。ですので、使用方法が同じでも原料が違えば別々の規制を受けます。罰則が科せられるかどうかは、規制する法律の規定次第です。大麻は、大麻取締法で、所持や譲渡自体が禁止されていますが、吸うこと自体を罰してはいません。
しかし、未成年者喫煙禁止法は、未成年者の喫煙行為を禁止していますが、所持に関する罰則はありません。そのため、未成年者がタバコを持っているだけで未成年者本人に罰則が科されることはありません。しかし、同法は、タバコの没収、知りながら喫煙を止めなかった親権者や監督者への科料(1000円以上一万円未満)や、未成年者が喫煙することを知ってタバコを販売した者に対する50万円以下の罰金を定めています。未成年者の教育は大人の責任ではありますが、本人以外も法的に罰せられる可能性はあるので注意しましょう。
とはいえ、依存性や有害性の点ではタバコも大麻も同じように扱うべきでないかと言われることもありますね。ブータンではタバコの販売所持が禁止されていますし、諸外国でも禁煙・分煙の扱いが厳しくなってきています。日本でも、将来的に国民全体の意識が変わり、法改正があれば、タバコに対するより厳しい規制、大麻と同じ扱いになるなどの可能性はあると思います。
--記者
喫煙者のマナーとして問題視されている行為のひとつに「歩きタバコ」があります。こちらに関して取り締まる法律はあるのでしょうか?また、過去に歩きタバコに関しての訴訟や裁判などの事例がありましたら教えて下さい。
--正木先生
歩きタバコそのものを取り締まる法律はありませんが、各自治体で歩きタバコを禁止する条例を制定し、過料を科すなどしています。また、歩きタバコが原因で他人を火傷させた、服やカバンに焦げ跡を付けたなど、他人に被害を及ぼした場合には、刑法の過失傷害罪等の犯罪や、民法の不法行為として損害賠償請求として対応することになります。
歩きタバコに関する裁判は、横浜市の喫煙禁止地区内で喫煙し過料を支払った人(原告)が、処分の取り消し等を求めて横浜市等を提訴したものがあります。一審では、路上喫煙が禁止されている地域は現在のところ極めて限られていること、一見してわかりにくい路面表示や看板の状況から、本件違反場所が喫煙禁止地区内であることについて原告が知らなかったことに過失があるとはいえないとされました。
しかし、二審は、受動喫煙防止や路上喫煙規制が広がっている状況から、「あえて路上で喫煙する場合には,その場所が喫煙禁止か否かについて,路面表示も含めて十分に注意して確認する義務があるというべきである」として原告の過失を認め、最高裁でも上告棄却となり、結論は変わりませんでした。
原告自身も歩きたばこは是としておらず、当時の取締をされた状況等から、市等の取締の手法が悪質だという点の問題提起をするために裁判をされたようです。報道もされたのでご存じの方もいるかもしれませんが、歩きタバコをやめようという動機付けになった方もいるのではないでしょうか。
--記者
最後に、最近急激に利用者が増えている加熱式タバコ(アイコスなど)について。これは法律的にどのような扱いになるのでしょう?やはり紙巻きタバコと同等の扱いになるのでしょうか?また、ものによってはニコチンやタールの含まれないリキッドタイプの電子タバコもありますが、これについてはいかがでしょうか?
--正木先生
加熱式タバコは、タバコの葉を蒸して水蒸気を吸うものです。タバコの葉を使っているため、法律上の「たばこ」にあたり、基本的には紙巻きタバコと同じ扱いとなります。ただし、加熱式タバコの普及により条例の改正がされていることもありますが、自治体ごとにタバコの定義が異なるため、地域によっては路上喫煙等の規制の対象外となるところもあります。
リキッドタイプの電子タバコは、タバコの葉を使用せず、香りをつけた水蒸気を吸うものです。こちらは法律上の「たばこ」にあたりません。また、ニコチンを含むものは、医療品医療機器等法により、製造販売に必要とされる厚労省の許可承認がされていないので、事実上禁止ですが、個人での輸入やニコチンを含まないものは現時点では特に規制はありません。
とはいえ、受動喫煙防止法案の中でも問題となっている加熱式タバコの現状の扱いは、地域・場所等により様々です。加熱式であれ電子式であれ、トラブル防止のため、臭いや身体への影響がハッキリしていないため気にされる方への配慮などをから禁煙場所での使用は控え、喫煙者・禁煙者がともに気持ちよく過ごせるようにすべきだと思います。
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というワケで、今回は喫煙について、弁護士の正木先生に色々とお話を伺いました。喫煙者の肩身が日に日に狭くなっている昨今ですが、東京オリンピック開催に向けてさらにその傾向は強まりそうです。また、加熱式タバコの扱いは地方自治体によって変わるとの事。加熱式タバコを吸っている方は、ご自身がいる場所の規則が明確でないのであれば、吸わずにいる方が無難でしょう。いずれにせよ、タバコを吸わない方が不快にならないようにきちんとマナー・ルールを守り、喫煙を楽しむようにしましょう。
・取材協力
正木裕美(まさきひろみ)弁護士(愛知県弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所
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