通常国会が事実上の閉幕 先送りにされた“4つの課題”「停滞する日本を象徴」との声も
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年6月21日 15時22分
6月23日に会期末を迎える通常国会は事実上閉幕した。およそ5か月にわたる国会は、自民党の派閥の裏金事件を受け「政治改革国会」とも言われたが、多くの時間が「政治と金」問題に費やされることとなった。岸田総理も自ら政治倫理審査会に出席するなど、この問題の対応に追われる日々が続き、幾つもの課題が”先送り”される結果となったのは停滞する日本を象徴するようにも映るー
先送りされた課題①政治資金規正法
今国会、最大の焦点となった改正政治資金規正法は6月19日に成立した。政治家の責任強化や外部監査の強化など、再発防止策や政治資金の透明性の向上に向けた内容が盛り込まれた。ただ、野党からは「抜け道だらけのザル法だ」などとの声が相次いでいる。
政党から議員個人に支給される「政策活動費」については、10年後に領収書などを公開することとされたが、具体的な内容については「早期に検討が加えられ、結論を得る」と先送りされた。第三者機関の設置も明記されたが、こちらも具体的な内容については「検討」のままとなった。附則には「検討」として残る物が6つ記され、実効性のある改正法となったのか疑問も残った。
先送りされた課題②調査研究広報滞在費(旧文通費)
これまでも度々、議論されてきたものの結論を得られてこなかったのが、国会議員に毎月100万円支給される調査研究広報滞在費、いわゆる「旧文通費」改革だ。
岸田総理は今年4月「この国会で結論を出せるよう各党で議論を行う」と意欲を見せ、5月末には、”旧文通費改革が政治資金規正法改正案に賛成する条件”とする日本維新の会と「使途の公開と残金返納を義務づける立法措置を講ずる」との合意文書に署名した。
しかし、その後議論に進展は見られず、法改正は先送りされた。維新は「党首間の約束が反故にされた」と反発し、参議院では政治資金規正法の改正案に反対するなどドタバタ劇が展開された。
衆議院議院運営委員会の自民党・山口俊一委員長は「政治資金規正法の改正を最優先にやらざるを得なかったので、こっち(旧文通費)にもしわ寄せがきた」と話す。
先送りされた課題③憲法改正
憲法改正について、岸田総理は事あるごとに「自民党総裁任期中に実現したい」と意欲を示してきた。岸田総理の自民党総裁の任期は今年9月まで。今国会で憲法改正の発議をおこなうことが出来なかったことで、総裁任期中に憲法改正は事実上、断念せざるを得なくなった。
衆議院の憲法審査会では、自民党の他、公明党や日本維新の会、国民民主党などが緊急事態における国会議員任期延長については議論が尽くされたとして条文案の作成を提案したが、共産党は憲法改正に反対しているほか、立憲民主党も時期尚早などとして慎重な姿勢を崩さなかった。
憲法上の参院の緊急集会で足りるという主張もあるが、大災害などで選挙が出来ない時に衆院議員が不在で万全な対応が出来るのかなど、課題は残る。
政治資金問題が憲法改正の論議の遅れに繋がった面もあるが、憲法は国家の根本的な原則を定めるものであり、政局とは離れた議論が求められている。
先送りされた課題④皇族数の確保策
安定的な皇位継承に向けた皇族数の確保策について、自民党の見解がまとまったことで、5月17日、衆参両院議長と各党・各会派の代表者らによる協議が始まった。
2022年、政府の有識者会議が国会に提出した報告書では、「女性皇族が結婚後も皇族に残る」案と「養子縁組を可能として旧宮家の男系男子を皇籍に復帰させる」案の2案が盛り込まれ、各党・各会派は両案への意見を述べたが、温度差が浮き彫りとなった。
額賀衆院議長は今国会での意見集約を目指す方針を掲げていたが、皇族数の確保が喫緊の課題という点では概ね一致したものの、最後まで各党・各会派の主張の溝は埋まらず、意見集約は先送りされることとなった。
岸田政権を待ち受ける課題
子ども・子育て支援金制度を創設する「少子化対策関連法」や、大規模災害など重大な事態が発生した際に国が自治体に対して必要な指示ができるようにする「改正地方自治法」など、今国会の法案の成立率は約98%に達した。しかし高い法案成立率の一方、先送りされた課題も多く、「停滞する日本、決められない日本を象徴している」との声も上がる。
国会が事実上閉幕し、永田町の関心は今年9月に予定される自民党総裁選へと移っていくものと見られるが、経済や安全保障、少子化対策など国政に遅滞は許されない。
岸田総理には自民党の派閥の裏金事件で高まった政治不信を払拭し、政策を前に進めていくリーダーシップが求められている。
政治部・与党キャップ
中島哲平
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