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時価総額10兆円企業からスタートアップ起業へ ―40歳目前の挑戦

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月6日 9時0分

TBS NEWS DIG

「起業」という選択肢は、多くのビジネスパーソンにとって「一つの夢」であり、「挑戦」でもある。長年勤めた安定した企業を辞め、新たな道を切り拓くことは容易ではない。そこには勇気、決意、そして深い考察が必要となる。今回は、リクルートに18年間勤め、その後、40歳で起業し、300人のスタッフを抱える会社へと成長させたWAmazing株式会社の代表取締役CEO・加藤史子さんに、就活中の学生が“逆面接”を行い、彼女の決意のプロセスとその苦労について掘り下げていく。

リクルートでのキャリアと起業の動機

大学を卒業後、新卒で入社したリクルートで約18年間、「じゃらんnet」や「ホットペッパーグルメ」などの新規事業開発に携わってきた加藤史子さん。そんな彼女が40代に差しかかろうという頃、次なるキャリアとして頭に思い浮かんだのが「スタートアップ」という選択肢だった。

「40歳を前にして、『これからの仕事人生どうしよう』と考えたときに、スタートアップという手段で、もう一度社会にスケーラブルに貢献できる事業をやりたいと思った。18年勤めた会社を辞めて、仲間とともに起業した」

独立起業を決意するにあたり、加藤さんが目をつけたのはインバウンド旅行客だった。リクルート時代、観光や地域活性化のプロジェクトに携わる中で、この市場の成長性をデータを通じて実感したという。

「独立起業って、成長市場でやることが成功確率を高めるんですね。リクルート時代、観光立国推進基本法が成立して観光庁ができて。そこからもう、うなぎ登りに外国人旅行者数が急増しているデータを見て、この市場で一発、勝負してみるっていうのはアリなんじゃないかと」

しかし、当然「リスク」を取ることへの怖さもあった。18年間勤めた大企業を辞め、本当に自分の力だけでやっていけるのかーーその不安は大きかったと振り返る。

「正直に言うと、やっぱり怖かったです。そうは言っても10兆円ぐらい時価総額がある大企業なので、そこを飛び出して、本当に自分の力でやっていけるのか。1年以上はウジウジ考えていたと思う。最初に名刺交換するときは、名刺を出す手が震えたし、足も震えたし」

痛感した少子化の現実…決断の背景と新たな挑戦

―― インバウンド市場に興味を持ったきっかけは?

「データを見ていると、日本の市場は少子化のスピードに勝てないと思ったんです」

加藤さんはリクルート時代、19歳ならスキー場のリフト券がタダになるキャンペーン「雪マジ!19」を仕掛けた張本人。若者の旅行需要を喚起し、地域の魅力に気づかせ、地方創生にも貢献する一方で、日本が抱える少子化の現実をまざまざと痛感させられたという。

「例えば、私の父や母は団塊の世代で1学年270万人くらいですけど、2023年の新生児は75万人ぐらいなんですね。『雪マジ』は国内旅行市場を対象にしたサービスですが、やはりどうしても少子化のスピードに勝てないなって。それで成長市場であるインバウンド市場でもう1回、観光と地域活性に取り組みたいって思ったんです」

そして2016年、加藤さんは40歳でWAmazingを起業。インバウンド向けのオンライントラベルエージェント(OTA)事業を開始し、創業1年で10億円超の資金調達に成功するなど、幸先の良いスタートを切った。しかし2020年、コロナの影響で事業は休止を余儀なくされてしまう。

「コロナが来てしまい、OTA事業を一時休止にして、行政向けのコンサル事業と大企業向けの広告事業も始めた。2022年10月11日にインバウンド旅行者がビザなしで自由に入国できるようになって、そこからOTA事業も再開し、現在はこの3つの事業を核に約300名のメンバーとともに事業を成長させている」

海外市場へのフォーカスとローカライズ戦略

加藤さんが注力したのは、中華圏(中国、香港、台湾)の個人旅行者向けのサービス展開。これらの地域からの旅行者は多く、リピーターも多いことから、ビジネスチャンスが大きいと判断したのだ。

「中華圏から来るFIT(Foreign Independent Tour)と言われる個人旅行者の方々にフォーカスしている。2019年にインバウンド旅行者は3,188万人来たんですが、そのうち52%はこの3地域の方々が占めています。しかもかなりリピーターなんですね。もちろん英語圏向けにもサービスを提供しています」

中華圏向けのマーケティングは、各地域の特性に合わせたアプローチが求められるため、香港や台湾ではグローバルなマーケティング手法を使い、中国では独自のプラットフォームを活用するなど、きめ細かい戦略を展開しているという。

「台湾と香港と中国に関しては、かなり細かくローカライズをやっておりまして、香港繁体字、台湾繁体字、簡体字と3種類の翻訳をしております。また香港と台湾はFacebookやInstagramなどを活用していますが、中国はグレートファイアウォールっていう、簡単に言うとインターネット上の鎖国政策のようなことを行なっているので、中国独自のプラットフォームを活用しています」

経営者としての成長と家庭との両立

―― 子育てとの両立は大変ではなかったですか?

「両立というよりは共倒れみたいな感じなんですけど(笑)。もちろん忙しいですが、気分転換にはなりますよね。会社でしんどいときには『家庭がある』と思えるし、家庭がしんどいときには仕事があると思えるので」

加藤さんは事業家から経営者へと成長する過程で、『我慢すること』と『見守ること』の重要性を自身の子育てから学んだという。

「やりたくなっちゃうんですよ。自分で手を出したくなっちゃうんだけど、例えば、子供が歩く道の小石を全部拾って歩くのが子育てじゃないと思うんですね。小石につまずいて転んでも、また立ち上がって歩き出す子供を見守ることだと思うんです。事業家から経営者になるときにもそういうスタンスが必要になる時があります」

ただ、子育てについては、現在ほど子育て支援制度が充実していなかった時代の実情を身に染みて感じた場面もあったという。

「31歳で第1子、34歳で第2子を産んで。もちろん忙しいですけど、メンタルバランス的には私の性格だと、仕事も育児も両方あった方が良い30代でした。当時住んでいた鎌倉の保育園に3〜4歳のお姉ちゃんを預けて、0歳の赤ちゃんを抱っこして東京のリクルートまで毎日通っていましたね」

新たなチャレンジとモチベーション

―― モチベーションとかどのように維持されていますか?

「モチベーションが高い位置に自分を置くことがすごく大事だと思います。リクルートを辞めたもう一つの理由は、ちょっと、未来が見えちゃったんですよね。年収も高いし、子供にも恵まれたし、生活には何の不満もなく、理解してくれる上司と有能な部下に恵まれて、自分の好きな新規事業で成果を上げて、メディアとかによく取材されたり、その国とか自治体の有識者として社会的信用も築いてきた」

一見すると、うらやましがられる状況だが、加藤さんの受け止めは違ったという。

「ここから定年まで20年間“それなりの人生”が耐えられないっていう思いだった。先が見えてくるとそれが心の安定に繋がる人もいますけど、私はそういうタイプじゃなかった。見えない未来の方が自分のモチベーションが高いし、ワクワクできる。なので、自分のモチベーションがどういうときに高くなるのか、というのを自分でよく知って、その環境を選び取っていくっていうことが大事なのかなって思う」

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