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「忘れられそうで怖い」能登半島地震から半年…自宅・店舗が全壊の料理人「長い目で助けてほしい」 公費解体わずか4%止まり 進まぬ復興なぜ?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月2日 15時40分

TBS NEWS DIG

能登半島地震から半年。公費解体が進まない中、被災した建物の倒壊が相次いでいます。半年経っても変わらぬ風景、なぜ復興は進まないのか…住民からは「忘れられるのが怖い」との声も。被災地で生活を続ける人の半年を追いました。

進まぬ復旧・復興「忘れられそうで怖い」

午後4時10分、地震発生の時刻に合わせ捧げられた祈り。穴水駅では黙とう後、復興の願いを込めた七夕の短冊が飾られました。

元日の能登半島を襲った地震。亡くなった人は災害関連死を含め299人に上っています。

地震発生から半年。何が変わり、何が変わらないのでしょうか。

大規模な火災に見舞われた輪島市の朝市通り。

半年前の1月4日、煙がくすぶっていた場所は、

7月1日、緑が茂って見える場所もありますが、焼け焦げた建物は手つかずのままです。

進まない復興に、住民は…

輪島市民
「『半年経ってどうや』って言われると、『そんなに変わっていないな』となりますね」

輪島市民
「何も変わらんし…見慣れてしまった感もあるけど。忘れられるのが怖いね、みんな言うと思うけど。ちょっと外に出た友人はみんな『テレビで一切震災なんてやっていないぞ』って、『みんな復興しとるもんやと思ってるぞ』と」

野球部の生徒はこんな思いを口にしました。

中学3年生・野球部
「外野は地震で崩れちゃって使えなくて。(Q.これからも野球やりたい?)続けていこうかなと。部活で活躍したいです。注目されて、輪島のことをもっとみんなに知ってほしい

「もっと知ってほしい」。半年が経った今も被災地には目を向けるべき課題が山積しています。

公費解体は4%止まり 断水などの影響も…

これまで持ちこたえていた建物の倒壊が相次ぐ中、急務となっているのが公費解体です。石川県は2万棟以上の公費解体を想定していますが、完了したのは、わずか911棟全体の4%です。

公費解体が進まない理由の一つは、いまだ続く断水。解体作業で生じる埃は水で抑える必要がありますが、この地区では断水が解消されておらず、作業の効率が悪くなっています。

中には全く手つかずの場所も…。珠洲市の海沿いの地域では、津波で流されたがれきが散乱し、どの建物のものかわからない状態に。

石川県構造物解体協会 中谷和浩さん
「空き地なのかよく分からないところに全部流れている。『それは公費解体じゃないですよね』と言われるし、僕もそうだなと思う」

所有者が特定できないままでは公費での撤去は難しいのが実情です。

一方、県内の仮設住宅は必要戸数6810戸に対し、6月末までに約5000戸が完成しました。プライバシーの確保と引き換えに懸念されているのが、孤独死などの増加です。

輪島市の仮設住宅では5月、70代の女性が孤独死しているのが見つかりました。女性には持病があったということです。

避難生活で体調を崩すなどして亡くなる災害関連死は70人となる見込みです。

ただ、この数にはまだ含まれていない別れも…

避難中の母親が突然帰らぬ人に「1回は話したかった、会いたかった」

夫婦で営むこの眼鏡店は半年前、ガラスが割れ、商品が散乱していましたが、今は綺麗に片付けられ、営業を再開。妻の恭子さんは、店に来た人から被災経験を聞くことも多いといいます。

メガネ・時計店「キロク」 木下京子さん
「聴くだけしかできないけどね、店ってそういう役割もあるかなって」

しかし、京子さん自身も大切な人を亡くしました。母親のたけのさん(93)。最後に会ったのは昨年末でした。

メガネ・時計店「キロク」 木下京子さん
『京子に会うと母ちゃん元気になる』と言っていた」

震災前は大きな病気もなく健康だったたけのさんですが、かほく市の家族のもとに避難して1か月が経ったころ、突然、帰らぬ人となりました。

メガネ・時計店「キロク」 木下京子さん
「家の片づけと店の片づけに毎日追われていて、『明日必ず電話しよう』と思っている間に死んじゃった。1回くらいは話したかった、会いたかった

遺影の隣には、たけのさんが大好きだった実家のアジサイを置いています。

メガネ・時計店「キロク」 木下京子さん
「人の話をたくさん聴くけど、自分の話はなかなかできないので。生きることって、胸に色々抱えて、それをおさめて毎日を送ることなのかなって思う

震災直後、“ファミレスで美味しいもの”が「夢のようなこと」

半年前の1月8日、雪が降る中、子どもたちの声が響いていました。

亮吉くん「替える服がないから服が欲しい」
恵吉くん「友達の情報。どこにいるとか」

父親の坂口竜吉さん(47)は和食店「のと吉」の店主。自宅と店は全壊しました。

坂口竜吉さん
「子どもたちとお風呂に入ったあと、ファミレスに行って美味しいものをいっぱい食べて帰ってこようという、夢のようなことですけど、そういう話をすることが一番大切で」

坂口さんの半年を追いました。

「こんな美味しいもの」避難所で食事の提供

2月2日、再び坂口さんの元を訪ねると…

坂口竜吉さん
「今は家族で二次避難して移っていて、僕だけ往復するような感じで。子どもたちの大切なもの、写真とか取り出せるものは取り出して」

中でも、輪島塗の食器には“特別な思い”があります。

坂口竜吉さん
「これが叔父さんの蒔絵の。こういう蒔絵をする人で、大好きで」

坂口さんの叔父・市中圭祐さんは輪島塗の芸術家。朝市に住んでいましたが、火災で亡くなりました。

坂口竜吉さん
「叔父さんの顔が浮かんでくるくらい思い入れが強い漆器なので。形見のようなものなので、ずっと使い続けようと思います。小さなお店をまた建てて店を再開させたい

地震から5か月が過ぎた6月3日、最大震度5強の揺れが再び輪島の街を襲いました。

その翌日、避難所の横のテントに坂口さんの姿がありました。料理人の仲間と3人で、避難所で暮らす約60人分の食事を用意しています。

避難している住民
「きょうもこんな美味しいもの、手間がかかっている」

土日も休みなく炊き出しを続けますが、余震の不安も抱えています。

坂口竜吉さん
「いまは解体を待っている状況。昨日の震度5強は1月1日の揺れを思い出したし、リスクとの共存は続くので」

“全壊”がれきの中から、家族で「宝探し」

6月29日、坂口さんの自宅と店の公費解体が始まりました。

金沢に避難している子どもたちは、週末だけ輪島を訪れます。夕方、思い出の品を探していました。

坂口亮吉くん
「見つけた。お母さん、壊れる前の『のと吉』の写真出て来たよ」

震災前の店の写真が見つかりました。

坂口しほさん(41)
「これは『宝探し』です。ただの瓦礫かもしれないけど、思い出1つが宝物。あったのも忘れていましたけれど、思い出が甦って、ぐっときます」

坂口亮吉くん
「(Q.思い出の品が見つかった時の気持ちは?)ちょっと嬉しい。(Q.いま輪島でやりたいことは?)友達と遊びたい」

坂口さんも子どもたちと一緒に「宝探し」をします。家族が一緒に過ごせるのは週末だけ。

坂口ももちゃん
「(Q.お父さんと一緒にいるとどう?)たのしい」

坂口竜吉さん
『輪島には戻って一緒に暮らしたい』というのは、1月、被災してから変わらない」

7月1日も炊き出しを続ける坂口さん。能登半島地震から半年、坂口さんが今一番、伝えたいことは…

坂口竜吉さん
「ここはまだまだこれからです。まだ何も始まっていないということ。心の奥底で一番思っていることは、ずっと『助けて欲しい』という気持ちはやっぱり絶対あると思うんです。でも、なんかそういう気持ちって、弱音を吐くという意味でなかなか口に出して言いにくい と言いますか。『長い目で助けて欲しい』というのは一番の思いですかね」

残る崩壊した建物 「人手不足」で進まない公費解体

小川彩佳キャスター:
能登半島の被災地からは、これまで懸命に耐えながら気丈に振る舞う皆さんの姿を多く見てきたように感じますが、半年経って聞く『助けてほしい』という言葉は、悲鳴のように胸に迫るものがあるように思います。

復旧・復興がなかなか進まない現状について、被災地の皆さんからはどんな声がありましたか。

藤森祥平キャスター:
「公費解体の遅れ」についての話がたくさんあり、手続きが非常に煩雑であること、解体作業をする人員が非常に不足しているという声が聞かれました。

日々、職員は受付作業を一生懸命やってくれているが、書類提出に何時間もかかったり、何度も行かなければいけなかったりすることもあり、結果、実際に解体作業が始まるのが数か月先になることもあるそうなんです。

取材した坂口竜吉さんは、「復興の道筋が見えないと時間が経つとともに、心のダメージがどんどん蓄積してしまう」「建物が崩れてしまったマイナスの状態を、いかに早く復興のスタートラインに立つゼロの状態に戻せるかが大きな鍵になる」と話していました。

復興ではなく、まだ復旧の状態だと私は受け止めました。

小川キャスター:
先が見えない中での苦しさというのがありますね。

喜入友浩キャスター:
公費解体が進んでいない背景には、人手不足があるようです。

輪島市や珠洲市は国や県などを通じ、全国の自治体に対して、「中長期の応援職員」を派遣するよう要望していますが、なかなか集まらないという状況です。

総務省の応援派遣室担当者は「他の自治体からはがしてもってくるのは厳しい」としています。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
自治体の人手不足に加えて、ゼネコン全体も人手不足になっているようです。能登半島地震の場合は旅館などが被災していることもあり、ゼネコン関係者によると、「被災地の近くに宿泊先が少ないため、移動に時間がかかり、マンパワーが少ない」ということです。マンパワーが圧倒的に少ないということが、今回の公費解体の遅れに繋がっています。

喜入キャスター:
政府は7月1日、「能登創造的復興タスクフォース」を発足させました。150人規模の職員を常駐させて、公費解体などの課題について、被災自治体を支援していくというものです。

星さん:
政府関係者とも話しましたが、一時しのぎにすぎないところがあるように思います。

自治体もゼネコンも人手不足という中、被災地からは「国が頼り」という声が出てきます。

基本的に国は常設の緊急対応部隊を作って、いざというときに出動できる体制を作る必要があるのではないでしょうか。地震や水害など、過疎地で起きる災害が予想されますので、新しい組織作りが大事だと思います。

今回、国は43兆円の防衛費を5年間で計上しますが、一部でも国民を災害から守ることに振り分けることも考える必要があると思います。

取材に対して「話を聞いてくれてありがとう」、被災者の半年

小川キャスター:
今回の取材を通して、今後の課題についてはどう感じましたか。

藤森キャスター:
「変わらない」と思ったことは、子どもたちの元気いっぱいな姿と、能登の人たちの優しさです。

私の後ろにある木は坂口竜吉さんの親族の自宅の庭にあったものです。焼け落ちている空間で、この木だけが奇跡的に残っています。

輪島市はこの木を震災遺構にするかどうか検討しているということです。長期的には「(震災を)忘れない」ためのシンボルになると思われますが、「今を助けてほしい」という声を、キャッチできるかが大切だということを痛感しています。

母親を震災発生後に亡くした眼鏡店の木下京子さんは、「自分の話を聞いてくれてありがとう」と、私達に対して何度も言ってくださいました。自分の話をできる機会が今までなかったということです。

気持ちを整理し始めることすらままならないまま、半年を迎えてしまった現実をしっかりと受け止めて、より一層、被災地の人たちのSOSに耳を傾けていかなければならないと感じました。

被災地の復旧・復興のペース 「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『能登半島地震から半年』について「みんなの声」を募集しました。

Q.被災地の復旧・復興のペース 改めてどう思う?
「順調に進んでいる」…0.6%
「少しずつ進んでいる」…7.5%
「あまり進んでいない」…24.6%
「ほとんど進んでいない」…65.4%
「その他・わからない」…1.8%

※7月1日午後11時08分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは2日午前8時で終了しました

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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年

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