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スナイプ…未来の医療を担う最先端技術~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.7&8~

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月8日 17時0分

TBS NEWS DIG

二宮和也主演で6年ぶりに日曜劇場に帰還する『ブラックペアン シーズン2』。シーズン1に引き続き、医学監修を務めるのは山岸俊介氏だ。前作で好評を博したのが、ドラマにまつわる様々な疑問に答える人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」。シーズン2の放送を記念し、山岸氏の解説を改めてお伝えしていきたい。今回は「治験」「スナイプ」についてピックアップする。

※登場人物の表記やストーリーの概略、医療背景についてはシーズン1当時のものです。

治験とは?

開発中の新しい医薬品や医療機器を、患者や健康な人に使用してもらい、データを収集して有効性(効果)や安全性を確認する試験で、この「新薬開発、新医療機器開発」の為の「治療を兼ねた試験」を治験と言います。人数や被験者の条件を変えて綿密な試験が行われ、この結果が厚生労働省で審査され、安全でかつ効果があると判断されたものが販売、使用を承認されます。

“スナイプ”って?

ドラマに登場する高階が持ち込んだ“スナイプ”とはどんなものなのか、実在するかなど気になっている方も多いと思います。スナイプとは、ドラマの中で「僧帽弁の治療」に使用されるもの。そこで今回は「僧帽弁の治療に関して」をはじめ、「佐伯式とスナイプの違い」や「スナイプは実在するか」について、山岸先生に解説していただきます。

僧帽弁の治療に関して

心臓には四つの部屋があり、それぞれの部屋の間には扉(弁)があります。血液の流れが一方向になるように仕切られています。

左の上の部屋を左心房(左房)、下の部屋を左心室(左室)と言います。左房と左室は僧帽弁という扉(弁)で区切られ、左室と大動脈は大動脈弁という扉(弁)で区切られています。肺で酸素を取り込んだ血液は左房に入り、左房から僧帽弁を通って左室に入り、大動脈弁を通って大動脈から全身に流れていきます。

僧帽弁の病気は主に2種類あります。
ひとつは僧帽弁狭窄症と言い、僧帽弁という扉が開きにくく、狭くなってしまう病気で、左房から左室への血流が流れにくくなってしまいます。

もうひとつは僧帽弁閉鎖不全症といって、扉が閉じてくれず、血流が左心室から大動脈に流れず、左房に逆流してしまう病気です。

治療(僧帽弁手術)は2種類あります。僧帽弁形成術と僧帽弁置換術です。
形成術は扉を修理すると考えてください。扉の枠をしっかり取り付けたり、扉の蝶番を交換したりするのと一緒です。

置換術は全く新しい人工弁という弁に取り替える手術です。
弁の壊れている範囲が小さい場合は修理(形成術)、壊れている範囲が大きい場合は取り替える(置換術)と覚えていていただいて大丈夫です。

一般的には胸の真ん中を切開(正中切開、正中開胸)して、人工心肺を使用して、さらに心臓を止めて手術を行います。現在ではミックスといって右胸部を小さく切開して手術することも可能です(ある一定の基準を満たした患者さんだけ可能です)。

佐伯式とスナイプの違いは?

ブラックペアンでは「佐伯式」「スナイプ」という2種類の僧帽弁手術が登場します。

佐伯式とは…佐伯式は正中切開(正中開胸)して、人工心肺を使用して、心臓が動いたまま弁を修理する手術(形成術)です。

スナイプとは…スナイプとは正式にいうと経心尖アプローチ(カテーテル)僧帽弁置換術となります。経というのは〜から挿入すると考えていただいて大丈夫です。

ですので経心尖アプローチとは心尖部という左心室の先端の部分からカテーテル(医療用の管)をつたって僧帽弁置換術を行うということになります。

高階先生のおっしゃっていたように人工心肺を使用しませんし、左胸部に約4cmの切開ですみます。先端にマイクロセンサーを内蔵しており、僧帽弁に全く狂いなく到達し、最新の弁に僧帽弁を取り替えることができます。

透視画像(レントゲン画像)でスナイプから最新の弁が出る映像が出ておりましたが、あのジャングルジムのようなステントの中に最新の弁が入っていることとなります。心尖部から抜くときは、先端に止血デバイスがついており、出血を防ぐことも可能です(念のための縫合は必要です)。

スナイプは実在するの?

前述した大動脈弁に関しては、大動脈弁置換術をすでにカテーテル(血管に入れる細い管のようなもの)により治療が行われるようになってきました(日本でも行われており、一定の基準を満たした患者さんに可能です)。
心尖部からもできますし、大腿動脈といって足の付け根の動脈からも行うことができます(もちろん一定の基準を満たした患者さんのみです)。

スナイプ(のような治療器具)に関していうとまだ日本では行われておりませんし、世界でもまだ臨床試験レベルです。ただこのスナイプ(のような治療器具)の開発に世界で数十の医療機器メーカーがしのぎを削っているのが現状で、いつの日かは日本の患者さんにも使用できる日が来るかもしれません。

その先の未来には大腿静脈といって足の付け根の静脈から僧帽弁を置換したり完璧に修理したりできる時代が来るかもしれません。今世界の僧帽弁治療はそこに向かって進んでいます。

※ドラマでは演出上、治験をめぐり、多額のお金が動いていますが、実際には定められた基準の中で、患者や病院側に支払われます。

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イムス東京葛飾総合病院 心臓血管外科 
山岸 俊介
冠動脈、大動脈、弁膜症、その他成人心臓血管外科手術が専門。低侵襲小切開心臓外科手術を得意とする。幼少期から外科医を目指しトレーニングを行い、そのテクニックは異次元。平均オペ時間は通常の1/3、縫合スピードは専門医の5倍。自身のYouTubeにオペ映像を無編集で掲載し後進の育成にも力を入れる。今最も手術見学依頼、公開手術依頼が多い心臓外科医と言われている。

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