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ベンチャー企業の挑戦 トラック自動運転の最前線【Bizスクエア】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月10日 6時30分

TBS NEWS DIG

物流業界では、2024年問題などでドライバー不足が大きな問題となっている。こうした中、トラックの完全自動運転技術を開発し、新たな物流サービスの提供を目指すベンチャー企業が注目されている。

トラック自動運転最前線 実証実験の現状は?

新東名高速道路を走る大型トラック。運転席にドライバーが乗っているが、走行は全て自動で行われている。この実証実験を行っているのは、三井物産とAIの開発などを手がけるプリファード・ネットワークスの共同出資で設立された、ベンチャー企業の「T2」だ。T2は、既存の大型トラックにカメラやライダーと呼ばれるセンサーの他、GPSなどを使った自動運転のシステムを開発している。

T2は、設立からわずか2年。社員の数は設立時の5人から現在は80人に増加。自動車メーカーや物流会社、ソフトウェア開発など、様々な業界から集まっている。T2エンジニアの宮澤克規(40歳)さんは元ホンダ。「(車の)レジェンドに搭載されている自動運転レベル3(条件付自動運転車)の開発をしていた。自分が持っている自動運転の技術を使って日本を良くしていきたい」と語る。同じくエンジニアの藤巻由太(41歳)さんは元いすゞ中央研研究所。「物流の問題で新しい物流を作るしかないと思っていて、そこを一刻も早く実現できるのはこの会社だと思った」。

6月21日に行われた実証実験。トラックは取り付けられたカメラやセンサーなどにより、自動で車間距離を把握し、アクセルやブレーキを制御。合流地点やトンネル内でもスムーズな走行を実現している。実験に参加したT2技術開発本部 V&Vteamエンジニアの三浦靖弘さんは「例えば、急ブレーキがかかったときに荷物の荷崩れといった部分も気にしないといけないので、乗用車よりもかなり気を使って制御していく必要がある」。

この実証実験では、新東名高速道路の浜松サービスエリアから駿河湾沼津サービスエリアまで過去最長となる116kmを全て自動運転で走行することに成功した。今後は走行区間をさらに拡大させるため、システムの安定性や走行能力を高める必要があるという。

T2技術開発本部の辻勇気本部長は「一番課題になるのは、車両に異常が発生したときに、安全に路肩退避をしたり、交通インフラも含めて乱さないようにしたりすること。あらゆる事象に対して対応できるようになっていく必要があるので、走行の安定性と機能を徐々に向上していきたい」という。

そしてT2は、開発した自動運転のシステムを他社に販売するのではなく、自社でトラックを保有し、輸送サービスまで担おうとしている。

T2 森本成城CEO:
技術を開発していくのは一つ大きなところだが、運送会社としてしっかりとオペレーションも作っていく。

トラック自動運転最前線 協業で輸送事業実現へ

T2は2027年に完全自動運転トラックでの幹線輸送サービスを始めるため、様々な企業との協業を進めている。三菱地所は2023年6月、T2と資本業務提携を行い、自動運転トラックが一般道に下りずに利用できる高速道路のインターチェンジと直結した発着拠点の開発を進めている。現在、京都の宇治田原インターチェンジの隣で建設が始まっていて、新名神高速道路の開通に合わせて完成する予定。

三菱地所 物流施設事業部の荒木康至部長は「自動運転のトラックを受け入れて、ここから有人トラックに荷物などを積み替えて、そして地域配送に繋げていく切り替えの拠点として重要なポイントになる」と語る。さらに今後、T2の自動運転トラックを使った効率的な物流オペレーションを、大手物流企業セイノーホールディングスのノウハウを生かし、共同で検討していくという。

セイノーホールディングス執行役員の河合秀治さんは「既存の物流の仕組みの中に自動運転の技術を組み込む考え方が必要。一緒に進化することができると思う」と語る。

T2森本CEOに聞く! 完全自動運転トラック 輸送サービスの実現へ

――若い人たちが、集まって活気ある新しい会社だ。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
各業界の第一線のエース級がどんどん入ってきて「本当に日本の物流変えたい」という熱い思いを持った仲間が集まっているという状況だ。

――出資されている企業からの出向者はいるのか?

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
出向者も少しはいるが、ほとんどはOEMだったり、ロボティクスだったりと、色々な業界からこれ(自動運転開発)をやりたいと入ってくれた。(やめてこの会社に来てくれた?)はい。そういう人たちが今80人ぐらい(いる)。

――その熱い想いは「日本の物流が駄目になる前に何とかしたい」ということか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
日本の物流を支えたい。あとうちの技術者は研究開発だけではなく、実際に製品を世に送り出して需要化して社会貢献したいとか、それによって家族や周りに誇れるものを作りたいとか、そういう面白いメンバーが集まっている。

いまドライバー不足は深刻だ。2030年度にはトラックドライバーが全国で36%不足して物が運べなくなるという予測があり、物流業の人手不足倒産は2024年1月から6月にかけて27件あり、2023年同期からほぼ倍増している。もう既に人手不足始まっていて、毎年状況が悪くなっていく。しかも2024年は残業規制も既に始まっている。

――自動運転には、いくつかレベルがあるとか。

現在T2はドライバーが乗車して、高速道路での自動運転を行う「レベル2」の段階となっている。そして2027年には高速道路でドライバーが乗車しない“特定条件下における完全自動運転”「レベル4」を目指している。

――このレベル4は、なかなか実現しないが、トラックで可能なのか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
できると思っている。“特定の条件”が「高速道路」というある程度、環境が安定しているところで、一定の天候条件等であればしっかりと開発すれば、実現できると考えている。

――いま、レベル2で実験していて、運転手さんが乗っていて手を離して運転できるという映像はもう何年も見ているが、いつ「完全自動運転」ができるようになるのか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
我々のターゲットは2027年だ。

現在建設中の新名神高速道路で京都の宇治田原インターチェンジに直結する形で、自動運転トラックなどが利用できる物流施設の建設も進んでいる。一方、東京側にも同様の物流施設を建設する予定だ。

――日本で一番需要が多い東阪間を完全自動運転でトラックを走らせたいと。やはり採算性から?

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
一番困っている区間でもあるので、東京~大阪間をまずやって、その先に九州・四国にも伸ばしていきたいと考えている。

――物流拠点をいくつも作っていくことでネットワークが広がっていく。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
はい。これは三菱地所がつくっているが、我々としても高速道路出入口付近に独自に土地を押さえて、有人から無人、無人から有人に切り替える拠点を作って、その近辺の物流センターに運んでいくオペレーションを考えている。それで会社をスケール化させていこうと考えている。

――物流センターから本線に合流していくところもレベル4の自動運転にしていくのか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
今はまだそこまではやっていない。合流というのは車線変更の延長にあり、車線変更に関しての開発をテストコースで、色々なケースでやっている。2024年の秋ぐらいから公道で車線変更を実証していき、それができたら年末年始あたりに、ジャンクション等の公道で合流の実験をやっていきたい。

2027年完全自動運転実現へ 新たな輸送事業を開始

――T2の事業として一番面白いところは、自動運転トラックや自動運転のシステムを開発して売るということだけではなく、運送業そのものをやろうとしている。なぜなのか?

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
事故が起こった場合や問題が起きた場合に車側の問題なのか、運行側の問題なのか割り切れない、整理ができないという現状があると思うので、コンセンサスとかいろいろなことがあって、整備されることを待っている間に、既に「2024年問題」で危機が始まっていて、待っていたらどんどん遅くなるというところで「一旦は、我々は開発も、運送も、全部やってリスクを取っていって、いち早く始めて、物流危機に対して何かしらできるようにしましょう」という考え方でやっている。

――まず「全部リスクはこの会社だ」という形にした方がいいということか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
はい。それと事業化してこその技術だと思っているのでユーザー目線、運送会社の目線で技術開発とオペレーションを構築していきたい。それによって実際に事業として成立して、世の中の役に立ちたいという考え方がある。

――技術がテストコースで完成しても、どこでどんな形でトラックを止めたり、荷物を置いたり、積み替えたりするのが適切かというのはやってみないとわからない。そのために今いろんな会社と協力しているのか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
客もニーズも違う。そこまでやるからこそ、色々な株主・サポーターの方に集まってもらって本当に助けられている。

――このいまの「仲間づくり」(他社との連携)は、これから先も進めていかなければならないと思うが、まだどういうパーツが足りなくて、強化していきたいのか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
安全な車両をつくっていかなければならない。かつ2000台、3000台という大量の車を使うので、大量生産していくというところで、OEMやTier1 、Tier2。あとはオペレーションを本当にもっと強くして、物を運べるようにするという意味では、セイノーホールディングスに協力してもらっているが、他の運送会社にもどんどん入ってもらい盛り上げて欲しいと思っている。

――運送会社に東阪間はT2のサービスを使ってくださいという感じか。競合になるのではないか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
いいえ。(運送会社は)自社で運んでいる部分と下請けに出している部分がある。今後ドライバーがどんどん少なくなって下請けができるところも減っていく。その中で我々は、できない部分を入っていくというので、コンペティター(競争相手)ではなく、傭車として使ってくださいということだ。

――つまり「大手運送会社の東阪間運送の下請けとして使ってください」という意味か。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
はい、そういうことだ。

今後のT2の計画。2024年に「実証実験の走行区間を拡大」、2025年に「輸送事業開始(レベル2自動運転)」そして2027年に「レベル4 完全自動運転での輸送事業開始」、2029年に「事業黒字化」、2031年「トラック2000台規模でオペレーション」となっている。

――2025年には輸送事業をレベル2で始めたいというが、なぜレベル2で始めるのか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
いきなり2027年のレベル4で始めたら、無人で10tトラックが走っているとびっくりされる。その中で2025年にレベル2でまずドライバーが乗っている状態で始めて皆さんに安心してもらう。社会受容性を高めていくということと、技術開発だけではなく運送事業までやろうとしているので、この2年間で運送会社としての足腰を鍛えていくということを考えている。それとオペレーションもいろいろ試していく。

――そして最終的には2000台ぐらいのオペレーションをしたいと。事業を黒字化するには何百台ぐらい必要?

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
大体3、400台ぐらいだと思う。ある程度大きくならないと経費がカバーできないので、スケールメリットを取って黒字化していく。

――2000台までいくと、日本の物流危機に対応できるのか。

T2代表取締役 CEO 森本成城氏:
2000台でオペレーションしたとしても、35~6%運べなくなるという内の5%しか満たされない。なので我々のような事業者や自動運転だけでなく、いま「2024年問題」に対応している人たちが頑張って、この36%をどういうふうに埋めていくか、どうみんなで協力するか、これからもっと考えなければならないし、我々としてもやりたいと思っている。

(BS-TBS『Bizスクエア』 7月6日放送より)

==========
<プロフィール>
森本成城氏(46)
T2代表取締役CEO
三井物産でモビリティ関連事業投資・経営を経験
自動運転トラック幹線輸送サービス実現に挑む

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