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「テレビが1秒も取り上げなかった」都知事選5位の安野貴博さんと考える“選挙報道” 不適切ポスター・政見放送…候補者として感じた課題は?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月10日 14時10分

TBS NEWS DIG

過去最多56人が立候補した東京都知事選で、得票5位となったのがAIエンジニアの安野貴博さん(33)です。不適切なポスターや政見放送、そしてテレビの“選挙報道”など、候補者として課題を感じたといいます。そんな安野さんとともに選挙のあり方を考えます。

「デジタル民主主義」掲げ5位に “異色”候補に永田町注目

投開票から2日が経っても、永田町は都知事選の話題でもちきりです。

立憲民主党 岡田克也 幹事長
「いろんな戦略面での間違いというか、失敗があったということかなと。ただ蓮舫さんは最高だったというふうに思っています」

国民民主党 玉木雄一郎 代表
「2位に食い込んだ石丸候補については、小池知事、そして蓮舫候補にも入れたくないという都民の受け皿になったことは間違いない」

日本維新の会の藤田幹事長が注目したという候補は…

日本維新の会 藤田文武 幹事長
“安野さん”という候補者から学ぶことはあるなと大変感銘を受けた一人であります。意見の集約のしかたやプロジェクトの進め方がビジネスマンとしてプロだなと」

「安野さん」とは…

都知事選に立候補 安野貴博氏(6月30日)
「テクノロジーで誰も取り残さない東京を作る。デジタル民主主義で明日の希望を持てる東京をつくっていきたい」

約15万票を獲得し、5位に食い込んだ安野貴博氏(33)。AIエンジニア・起業家・SF作家という異色の経歴の持ち主です。

AI安野
『AI安野』と呼んでください。安野貴博のマニフェストを学習した私が回答いたします」

約100ページに及ぶマニフェストを学習したAIが、有権者の質問や提案を24時間受け付け。その内容をマニフェストに反映し、アップデートする仕組みを取り入れました。

早稲田大学マニフェスト研究所が主な9人の候補のマニフェストを比較・検証。画面の都合上、5人分の紹介ですが、最高得点は安野氏。当選した小池氏より16点高い50点でした。

小池都知事は3回目の都知事当選を報告するため岸田総理と面会。こんな問題提起をしたといいます。

小池百合子 都知事
「政見放送やポスターの貼る場所がないなど、様々な問題もございました。公職選挙法がこれまで考えてきた想定を超えるもの

今回の都知事選では、不適切なポスターや過激な政見放送などが物議を醸しました。

小池百合子 都知事
「子どもたちが『こういうものなのか』と、政治そのものに忌避感を持つようなことがあってはいけない。国会の方でご議論いただければと思っています」

「選挙手法、デジタルとアナログどちらも意味ある」 AIエンジニアと考える「選挙のミライ」

小川彩佳キャスター:
選挙戦を終えて、実際“選挙とAIの相性”はどう感じましたか。

都知事選に立候補 安野貴博さん:
よかったと思っています。私の「AI安野」が皆さんの質問に答えていましたが、選挙の間で6800個ほどの質問に対して答えていました。普通に有権者と接していてもなかなか人間にはできない数字です。

いただいた質問や意見を我々も把握していて、それをもとにマニフェストを改善しましたし、(有権者と)話している中で「安野の政策いいね」「投票したよ」という声もあったので、すごく良かったのではないかと思っています。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
手応えがあって、得票数も予想できたということですか?

安野貴博さん:
もちろんもっといけたらよかったですが、1か月前まで無名に近かったことを考えると15万票という数字は取れたのではないかと思っています。

小川キャスター:
安野さんはAIを使った選挙戦を繰り広げた一方、従来の街頭演説やポスター張りも行っていましたが、アナログの選挙手法も必要だと感じましたか?

安野貴博さん:
選挙戦をやってみて、私は両方必要だと思いました。ネットやAIだけだと声を届けられる限界があるので、実際に街頭演説やポスター貼りをしました。

街頭に出てみると「自分たちの意見を伝える」以外にも、(有権者から)フィードバック、意見や質問をいただくことでマニフェストの改善にも繋がりますから、両方やることには意味があると思いました。

「報道しない」ルール、都民のためになっているのか?

小川キャスター:
今回の都知事選は過去最多の56人が立候補するという形になりましたが、ご自身の声が(有権者に)届いたかどうか実感はどうですか。

安野貴博さん:
56人いると見つけてもらうのはすごく難しいと思っています。

特に私の場合は、選挙期間中にテレビが1秒も取り上げなかったということもあります。選挙後の7月7日以降にテレビで取り上げていただき、見た人から「知っていれば、絶対に安野に入れたのに」という声をたくさんいただいていて、本当に悔しかったです。「報道しない」ルールが都民のためになっているのか?と私は思いました。

斎藤幸平さん:
100ページのマニフェストを読むとすごく良いんです。具体的な数字や提案も含まれていますし、テクノロジーの話もあるから若者たちも希望を持てるだろうと感じました。

マニフェストを読んで思い出したのは、台湾のオードリー・タンさんです。「ああいう人が出てこないのか」「日本はデジタル化が遅れてる」と言われていて、実際に出てきたら誰も取り上げないという状況は、本人からすれば悔しかっただろうと思います。

藤森祥平キャスター:
TBSとしては今回の都知事選で、主に4人の候補者を取り上げました。まずは現職の小池都知事、国会議員の蓮舫氏、直前まで広島県安芸高田市長を務めていた石丸氏、前回出馬した都知事選で60万票余りを取った得票実績などを考慮した田母神氏の4人です。

ニュース番組には時間的な制約もあるという中で総合的に合理的に考えて、選挙のたびに基準を設けて、今回はこういった形となりました。ただ、これは長年の課題でもあり、問題がなかったかといえば、検証や再検討しなければいけないことだと受け止めています。

小川キャスター:
今回、政治的な実績が考慮されましたが、既存の政治にないものが求められている時代にこの基準で十分だったのか、正解だったのかという検証をする必要があると私自身も感じています。

課題が浮き彫りとなった今、次の選挙までに選挙報道をアップデートしていこうという意思が有権者に伝わらないと、テレビの選挙報道が信頼を失っていのではないかと危惧を持ちます。

選挙報道はどう変えていく必要があると考えますか?

安野貴博さん:
伝える価値がある、ニュースバリューがあるものはぜひ伝えていただきたいと思っています。

例えば、今回小池さんが作った「AI百合子」をすごく取り上げていたと思いますが、私の「AI安野」の方が質問に答えるなど、技術的に高度な話もしているのでニュースバリューはあったと思います。

マニフェスト研究所が主な9人の候補のマニフェストを比較・検証したところ、私のマニフェストの方が小池氏より高い点ということもニュースバリューがあったのではないでしょうか。

一方で、売名目的の候補者の問題行動はテレビで取り上げられていました。真面目に政策に取り組む候補者を取り上げず、問題行動を取り上げるというのは、“逆”になってしまっているように感じます。

斎藤幸平さん:
“問題行動”を取り上げるが、強く批判もしていなかったように思います。

世界的なトレンドですが、「アテンションエコノミー」が日本では特に広がり、「目立てばいい」「相手を論破すればいい」という雰囲気が、政治不信がある中で、ますます民主主義への信頼を低めてしまいます

そういうものがSNSやネットで蔓延してるからこそ、テレビでは質が高い議論を展開する必要があると思います。

選挙が終わってから特番を放送するのではなく選挙前に放送して、みんなが議論できるような場があれば、関心を持つのではないでしょうか。

ポスター掲示「デジタルサイネージも活用すべき」

藤森キャスター:
都知事選のポスター掲示枠の問題では、都政に関係のないメッセージを発信する人が複数出てきましたが、当事者としてはどう感じましたか。

安野貴博さん:
私は立候補が増えること自体は良いと思っています。いろんな人が出てくることで都民の選択肢が増えるというのは良いことかと思います。

一方で、ポスターを選挙のために使わないということは「どうなのか」と思います。あとは、ポスター枠からはみ出た人がいますが、それは不公平な土台から始まってしまっているので、選挙のやり方や掲示板の運用方法を改善していくべきではないかと思います。

小川キャスター:
改善策としてどんな提案がありますか?

安野貴博さん:
例えば、「デジタルサイネージのようなものを混ぜていく」という案があると思います。デジタルサイネージの場合、時間ごとに候補者を切り替えれば立候補者が何人でも問題ありません。

また、1万4000か所の全てに(ポスターを)貼りに行けない候補者でも、デジタルサイネージであれば一気に出すことができます。

選挙のたびに掲示板を作ったり壊したりしますが、(デジタルサイネージを)常設すれば無駄も省けますし、選挙期間以外は広告を出したり、防災情報を流すなど色々な使い道があると思うので、混ぜていくのが良いと思います。

斎藤幸平さん:
デジタル技術が進み、デジタル民主主義というのは確かに聞こえはいいですが、例えば経済学者の成田悠輔さんは、「究極的にはビッグデータとか、アルゴリズムがあって、AIが判断してくれれば政治家は猫でもいい」というような話をしていて、デジタルが発展すればするほど、むしろ人々の無関心や政治不参加が広まるのではという不安もあります。

安野貴博さん:
「デジタルを活用しよう」という人の中でも、派閥はあると思っています。成田さんが言うように「全てがAIでできる」ようになるとは、私はまだ考えていません

最終的な意思決定を、責任が取れる人間が最後に決める必要があるのではないかと思っています。

小川キャスター:
最終的に決断をする人間が必要で、課題をどう解決していくか案を提示してくれる人も必要だと思います。

安野さんのような人が出てきたことで、政治側から「どんどん提案をしてください」という声もかかってくるのではないかと感じます。小池さんから安野さんに何かオファーがあった場合は受けますか?

安野貴博さん:
オファーの内容に応じて判断したいと思っています。都民の皆様のためになることであれば前向きに考えたいと思います。

藤森キャスター:
エンジニアの最強のブレーンと政治のリーダー、どちらを目指すのでしょうか。

安野貴博さん:
これから、今回の反響などを見ながら、総合的に判断することかなと思います。

========
<プロフィール>
安野貴博さん
都知事選で5位
「デジタル民主主義」掲げる
AIエンジニア・起業家・SF作家

斎藤幸平さん
東京大学准教授
専門は経済思想社会思想
著書『人新世の「資本論」』が50万部突破

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