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「ほっとした」戸籍上の性別変更 広島高裁が“手術なし”認める決定 好意的な声の一方、「戸惑いの声も」トランスジェンダー当事者の受け止めは?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月11日 11時45分

TBS NEWS DIG

戸籍上の性別を変えるために必要とされる性器の手術。広島高裁は、手術を受けなくても男性から女性に性別を変更することを認めました。トランスジェンダー当事者たちはこの決定をどのように受け止めたのでしょうか。

外観要件は「違憲の疑いがある」広島高裁の判断

代理人 南和行 弁護士
「電話の向こうで嗚咽、泣いている感じで。『とにかく長く思っていたことなので、ほっとしました。とにかくほっとした』ということだった」

裁判を申し立てたのは、生まれた時の性別は男性で、今は女性として生活する西日本在住のトランスジェンダーでした。

戸籍上の性別を変えるには、法律で決められた5つの要件を満たす必要があります。

【特例法における性別変更の5要件】
(1)18歳以上
(2) 結婚していない
(3) 未成年の子がいない
(4) 生殖腺・生殖機能がない
(5) 変更する性別に近い性器の外観を備えている
※2人以上の医師が性同一性障害と診断している人

問題となったのは、▼生殖機能がない、▼変更後の性別に近い性器の外観を備えている、という2つの要件で、いずれも事実上、手術を求めるものとなっていました。

当事者は「手術なし」での性別の変更を申し立てていました。

これに対し、最高裁は2023年10月、「生殖不能要件」については「憲法違反で無効だ」と判断。一方、「外観要件」については結論を出さず、審理を高裁に差し戻していました。

7月10日、広島高裁は外観要件についても「違憲の疑いがある」と判断

広島高裁の決定
「(外観要件は)過剰な制約を課すものとして、違憲の疑いがあると言わざるを得ない」

当事者がホルモン療法を受けて、体が女性と似た状態になっていることを踏まえて、戸籍上の性別変更を認めました。

トランス女性「体は自分のもの。手術は自分のためにするべき」

今回の決定を「大きな変化」だと受け止めた人がいます。

トランス女性 土肥いつきさん
「戸籍を変えるために手術をしなくてはいけないというのは、すごく違うなと思っていた。もっと体って自分のものだから、(手術は)自分のためにするべきだろうと思う」

女性として生活する土肥いつきさんは、14年前に男性器を切除する手術を受けました。それは「女性の体を獲得したい」という思いからだったといいます。

土肥いつきさん
「職場では女性の扱い、トイレや更衣室を使わせてもらっていたので、ほぼ社会生活を女性として過ごすことができている状況で、初めて本当に自分にとって手術が必要かどうかということを考えられた」

土肥さんは教員として働く傍ら、トランスジェンダーの子どもたちをサポートする活動を行っています。願うのは…

土肥いつきさん
「子どもたちが幸せであってほしいという、それだけですよね。生き生きと、本当に自分らしく生きられる社会。手術をしないとそれができないというのは、あまりにも子どもたちには酷だと思う。(出生時の性と性自認が同じ)シスジェンダーの人はそんなことしなくても望みの性別で生きているんですから」

当事者の受け止めは様々、戸惑いの声も

藤森祥平キャスター:
戸籍上の性別を変更するための5つの要件のうち、生殖機能をなくすことについては、2023年に最高裁で「憲法違反で無効」という判断が出されました。

一方、変更後の性別に近い性器の外観を備えているという要件については、高裁に差し戻していましたが、10日に広島高裁が、いわゆる外観要件について「違憲の疑いがあると言わざるを得ない」と指摘しました。手術なしでも外観要件は満たされるという考えを示したわけです。

今回の広島高裁の決定について、トランスジェンダー女性の土肥さんは好意的に受け止めています。

しかし、トランスジェンダーで弁護士の仲岡しゅんさんは「『戸籍を変えているんだから、当然に身体も変えている』という前提で扱われてきた当事者たちの心情を懸念する」としています。

また、「戸籍変更済みでもかえって身体の特徴を詮索されかねず、複雑な思いをしている当事者も少なくない。当事者の受け止めは様々で、戸惑いの声も聞いている」ということです。

戸籍上の性別変更「個人の責任にせず…」

小川彩佳キャスター:
当事者の中にも喜びや戸惑いなど、様々な感情があるということですし、こうした判断を受けて、当事者への風当たりが無用に強まるようなことは避けたいですね。

トラウデン直美さん:
置かれた環境や思い、悩みは様々だと思います。いかに良くしていこうかと模索している中で、逆行しない形であってほしいと思うばかりです。

当事者の間でも意見が分かれることだからこそ、こうした機会のたびにできるだけ多くの声を聞いて、どんなことができるのか集約できるように考えていくことが大事なのかなと思います。

日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
「集約」というのは重要だと思います。

裁判は個別具体的に「この人はどうか」と判断しますので、今回はおそらく、明らかに女性に見えて、体が女性化しているから「実際に違和感がない」と判断されているのだろうと思います。

当事者全員が訴訟しなければいけないとなると、お金や時間がそれぞれにかかるわけですので、法律である程度“集約”した上で、多くの人に該当する要件を作って法律で定めないと大変苦しいと感じます。

法律で“原則”を作っても、当然、例外は出ますので、例外を裁判で争うことにしないと大変ですよね。

トラウデン直美さん:
法律とともに、社会はどう変われるか模索し続けないといけないと思います。

日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
たまたまその性別で生まれた人の個人の責任という問題ではなくなっています。アレルギーも昔は即死と思われていましたが、今となっては非常に多くあるものです。個人の責任にせずに、社会全体で基準を作らなければいけません。

小川キャスター:
戸籍上の性別変更をめぐっては、公明党が先週、特例法の見直しに向けた見解を示し、秋の臨時国会での改正案の提出も視野に議論を進めていきたいとしています。

この議論の行方を見守りながら、またお伝えすることになるかと思います。

========
<プロフィール>
 トラウデン直美さん
慶応大学法学部卒
環境問題やSDGsについて積極的に発信

藻谷浩介さん
(株)日本総研主席研究員
著書「デフレの正体」
NYコロンビア大学ビジネススクール卒業

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