日銀 利上げを決定 専門家でも意見割れた中…利上げで為替や物価など生活への影響は?【news23】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月31日 13時26分
日銀が「金利」を引き上げるかどうか決める金融政策決定会合が始まりました。「利上げ」か「見送り」か、日銀は悩ましい判断を迫られています。利上げが行われる場合、為替や物価など、私たちの生活はどう変わるのでしょうか?
政治側から“異例の言及” 日銀の利上げ判断は
都内の住宅展示場を訪れた夫婦は、戸建ての購入を検討していますが、大きな買い物だけに気になるのが、ローンの“金利”だと話します。
戸建ての購入を検討する夫婦
「(返済期間が)30年とか超えてくるので、予測できない。変動(金利)は安いんですけど、変動のリスクを取るのは結構きつい」
人気の「変動型」は金利が約0.38%と、「固定型」の約1.84%(35年ローンの場合)より金利が低く、約7割の人が借りている人気のローンです。(モゲチェック2024年7月)
ただ、近々その金利が上がるとの観測が高まっています。
鍵を握るのが日本銀行の判断です。
記者
「現在0~0.1%程度としている短期金利を引き上げるのか、その議論が日銀で始まりました」
日銀が検討する「利上げ」は、市場で秋以降になるのでは、とみられていました。
今回の会合の直前になって…
自民党 茂木敏充 幹事長(7月)
「段階的な利上げの検討も含めて、金融政策を正常化する方向で着実に政策を進める」
岸田総理(7月)
「金融政策の正常化が経済ステージの移行を後押しし」
政治側から利上げに言及するのは極めて異例です。
背景にあるのが円安対応です。
日銀が利上げすれば、5ポイント以上も開いているアメリカとの金利差がわずかですが縮まり、“超円安”が少しやわらぐ可能性もあります。
一方、マイナスの影響が大きいのは住宅ローンです。
もし4000万円の住宅ローンを借り、金利が0.15%上がれば、月々の返済額は2644円増える計算です。
すでに一部の銀行は動き始めました。
ソニー銀行では、8月から変動型ローンの基準金利を0.2%引き上げます。引き上げは14年ぶりです。
利上げは行われるのか、そして家計への影響はどうなるのでしょうか。
有力「0.25%引き上げ案」で為替・物価・預金・住宅ローンは?
片山薫 記者:
仮に利上げが行われるとどんなことが起きるのか見ていきます。
現在の0~0.1%程度としている政策金利を、0.25%に引き上げる案が有力だとみられています。
為替ですが、150円台半ばで推移しているものが152円台くらいまで円高に進むとみられています。それとともに物価は、年間1000円程度は押し下げる効果があるともみられています。預金では、仮に100万円を銀行に預けた場合、普通預金の場合は年間300円程度、定期預金(10年)の場合は年間6000円程度は利息が増える可能性があるそうです。
一方で、住宅ローンについては、4000万円のローンで年間3万円程度は支払額が増えるとみられています。(みずほR&T・酒井氏及びニッセイ基礎研・福本氏の試算)
早稲田大学教授 澤康臣さん:
今の生活に、どう関係してくるのかが一番気になるところです。色々なものを輸入して成り立っている国です。円安の影響で、ずいぶん物が値上がりしていますが、少しやわらぐということで、物価などに良い影響が出るのであればいいかなと思います。
ただ、一つ忘れるわけにいかないのが住宅ローンの話です。金利が上がれば、返済額が増える。国の借金にも似たような効果が現れてしまうと思うので、返済額が膨らんでいくことが考えられます。そうすると、お金の使い道が圧迫されるわけですね。
例えば、教育・福祉・介護などのお金が出せなくなる可能性もあるので、「利上げして良かった」という話だけではなく、今後のお金の使い道がどうなっていくのか議論を今まで以上に真剣に見ていく必要があるのではないかと思います。
「利上げ」ならサプライズか 政治側からの発言で注目される
藤森祥平キャスター:
実際に金利を引き上げるかどうか専門家の意見は割れているようです。「31日利上げ」は35%、「見送り」は65%と、見送るとの見方が多いんですね。(大和証券 末廣氏 30日・OIS市場動向から試算)
片山薫 記者:
「見送る」側としては、歴史的な賃上げが春闘で行われましたが、地方や中小企業まで波及してるかのデータが出てくるのは秋なんです。それを見て、経済が良くなってると確認してから利上げすべきで、今は見送った方が良いという意見です。
一方「31日利上げ」側としては、円安が進めば物価高がずっと続いてしまいます。経済にとってリスクなので、早めに回避するために利上げに踏み切るとの見方も出ています。こちらの場合はサプライズになるかもしれません。
小川彩佳キャスター:
その利上げが行われるのか、ますます注目されている背景には、7月に入って河野デジタル担当大臣や自民党の茂木幹事長が日銀に利上げを求める発言があります。
河野 デジタル担当大臣(7月17日・ブルームバーグのインタビュー):
「円は安すぎる。価値を戻す必要がある」
自民党 茂木 幹事長(7月22日・都内の講演会):
「段階的な利上げの検討も含めて、方針をもっと明確に打ち出す必要」
早稲田大学教授 澤康臣さん:
「異例」という指摘がありました。中央銀行である日本銀行は、政府から独立していることが大前提ですが、これまでずっと景気の刺激のために、低金利というか、アベノミクスをやってきているわけです。ただ、急な事態に私は違和感というか、人気取りというわけではないと思いますが、ちょっと気になるところです。
小川キャスター:
「その場その場」という感覚があるということですか。
早稲田大学教授 澤康臣さん:
何か場当たり的なことを言っているのではないかというような議論は起きると思います。もっと長期的な、長いスパンのデザインを見せてほしいと思います。
小川キャスター:
31日、日銀の金融政策決定会合で結論が出るということになります。
「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『日銀の“追加利上げ”』について「みんなの声」を募集しました。
Q.日銀“追加利上げ”の影響 一番気になるのは?
「物価」…62.3%
「賃金」…8.7%
「為替」…16.8%
「住宅ローン金利」…9.2%
「その他・わからない」…3.0%
※7月30日午後11時34分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは31日午前8時で終了しました。
==========
<プロフィール>
澤康臣さん
早稲田大学教授 元共同通信記者
パナマ文書報道など数多くの調査報道を行う
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