リアルな着回しが鍵?『西園寺さんは家事をしない』の衣装が「真似したい」の声を生む理由
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月31日 13時0分
放送中のドラマ『西園寺さんは家事をしない』。原作は7月11日に最新5巻で完結した、人気漫画家・ひうらさとる氏による同名コミック(講談社「BE・LOVE」連載)だ。ハートフルラブコメディを謳う本作では、ドラマならではのポップな鮮やかさの中に、等身大のスタイリングが反映されていることが話題になっている。主人公・西園寺一妃(松本若菜)と、西園寺さんの“偽家族”・楠見俊直(松村北斗)を担当するのは、スタイリストの遠藤和己氏。「“ドラマだからいいじゃん!”ではなく、できるだけリアルに近づけた表現にしたい」という遠藤氏に、キャラクター作りの裏話や、スタイリストならではの気遣いを語ってもらった。
“しごでき”女子の西園寺さんにはスニーカーやフラット靴をチョイス!
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本作の主人公・西園寺さんは38歳という設定だが、SNSの反響では同世代だけでなく幅広い層から共感されるキャラクターになっている。これは良い意味でキャラクターの固定概念がないスタイリングになっているのが大きな理由のようだ。通常のドラマでは、役柄をわかりやすくするために使用色やスタイルをある程度固定することも多いのだが、西園寺さんは“やりたいことをやる”キャラクターのため、コーディネートも“好きな服を着たいように着る”というのが西園寺さんらしさになっている。「幅広くおしゃれを楽しむキャラクターに見せるため、服の系統はもちろん、西園寺さんの年収で手の届くハイブランドからプチプラのアイテムまで、自由に混ぜています。実生活でも同じようにファッションを楽しんでいる方が多いと思うので、親近感を持ってもらえているのかも」と遠藤氏は推察する。
仕事好きでバリバリ働く西園寺さんのようなキャラクターは、以前は“バリキャリ”とも呼ばれ、ヒールを履いてカツカツ歩くようなイメージもあったが、西園寺さんはイマドキの働く女性らしく、スニーカーやフラットシューズを履きこなしている。「その点は岩崎愛奈プロデューサーからのリクエストもあり、特に意識しています。昨今、毎日高くて細いヒールを履いて通勤している人は少ないですし、行動力&機動力のある西園寺さんを表現するには正解でした」と、遠藤氏が制作過程を振り返る。
1話分で15ポーズは平均の倍以上!
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本作では、仕事服だけではなく、西園寺さんの部屋着スタイルにも注目が集まる。おしゃれなブランド服を着用しながらも、リラックス感を再現する遠藤氏曰く「ドラマの部屋着にはファストファッションブランドを選ぶケースも多いですが、お気に入りの服が汚れたり、形が崩れてしまったものを、捨てるのはもったいないからと部屋着にする方も多いのではないでしょうか」と、実生活でのあるある話をもとにしたこだわりを語る。
さまざまな衣装が登場する本作だが、「大人の美しさの中に、かわいさ&ヘルシーさがある若菜さんだからこそデザイン、色も含めてかっこいいからかわいいまで幅広いスタイリングができる」と、松本ならではのポイントも披露。
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そんな西園寺さんのために遠藤氏が衣装合わせに持参したアイテム数は、洋服、バッグ、シューズ、アクセサリーを含む400点近くにも及ぶ。これは、西園寺さんのキャラクターが会社だけで完結するキャラクターではないから。「だいたいの場合、主人公は会社スタイルがメインで、少しだけ自宅スタイルがある程度。でも、西園寺さんの場合は日々の生活シーンが満遍なく描かれるので」とアイテム数にも言及。
シチュエーションごとに変わる衣装を楽しめる醍醐味がある一方、それはポーズ数の多さとスタイリングの煩雑さにも比例する。「西園寺さんに関しては、部屋着を入れると1話分で15ポーズほど。他作品だと主人公でも7、8ポーズくらいが平均なので、いつもの倍以上のポーズ数を作っています。それはもう大変で…(笑)」と、冗談を交えながらもどこか楽しそうな遠藤氏は、はにかみながらこう続ける。「若菜さんはとにかくどんな服を着ても似合う! スタイリングしているこちらも見ていて楽しいので頑張ることができています」。
仕事も育児も全力の真面目な楠見の着こなしはTPOを意識
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一児のパパでもある天才エンジニア・楠見のスタイリングにも注目してみよう。最初に台本を読んだ際には、「もっと無表情で堅苦しいイメージだった」と口にする遠藤氏だが、キャラクターを作り上げる中でどんどんと柔らかい一面も見えるようになったそうだ。それは作中の衣装の変化にも現れており、物語序盤で西園寺が働く「レスQ」に転職したばかりの楠見は、ジャケットで革靴といいわゆるビジネスマンスタイル堅い装いだったが、話数を重ねるごとに少しずつ服装にもカジュアルさも出てきた。
「レスQ」は気鋭のベンチャー企業のため、社員の服装もかなり自由。社員の武田英美里(横田真悠)が着用するおしゃれでカラフルな服装でも問題ないのだが、岩崎プロデューサーのリクエストもあり、律儀で真面目な楠見には、松村の体格に合わせたピッタリサイズの襟付き服を選ぶようにしているという。さらに、「クールビズが浸透して、街中で夏にネクタイをしている人はあまり見かけなくなりましたし、店舗のラインナップもクールビズ商品が中心。なので、襟付きといっても半袖シャツやポロシャツなどを使用するようにしています」と、現代ならではのビジネス服を意識する。
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一方で、パパの顔を見せる時の楠見の普段着は、基本Tシャツにイージーパンツスタイルとシンプルで動きやすい服装だ。「ほとんどの父親がそうだと思いますが、子どもと公園で遊ぶのに格好つけた服では行かないですよね。基本子どもファーストなスタイリングですが、TPOにも気をつけていて、第3話で亡き妻・瑠衣(松井愛莉)の実家に行く時や、ルカの誕生日パーティーで保護者を家に招くようなシーンの時は、カジュアルだけど襟がついている服にしています。楠見ならそこに真面目さが出るだろうなと」と、イメージを膨らませる。
時にはアクセサリーが邪魔になることも。そんなところまで考えているの!?スタイリストの細やかな気遣い
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ドラマ衣装のスタイリングでは、主演に対して1人のスタイリスト、相手役には別の担当者がつくことが多いが、本作では遠藤氏が西園寺さんと楠見2人分のスタイリングを担っている。「1人の俳優さんだけを担当する場合もありますが、プロデューサーから『いつも2人でいるキャラクターだから一緒に見てほしい』と言われることも多いです。相手の衣装を確認する手間も省けますし、自分の中で色かぶりも調整できるのである意味楽かもしれません(笑)」。
そう明かす遠藤氏には、20年以上ドラマ全体の衣装を担当していた経歴も。そんな彼だからこそ「ストーリーに沿った衣装を選ぶのがモットーで、見栄えで選ぶことはない」のだそう。「ドラマではワンシーンだけを切り取っておしゃれに見せることはできますが、実際の生活はそうはいかないので、登場人物の1日の生活も大切に。どんなに洋服が好きな方でも、家に帰ったら楽な格好をするように、西園寺さんの場合も部屋着は基本イージーパンツ。Tシャツもビッグシルエットだけに偏らないように、コンパクトなTシャツもローテーションに入れて…」と、アイテムのかわいさに加えてリアルさも求める。着回し感覚で再登場する衣装もあるため、バリエーションやコーディネートの違いにも注目してみると面白い。
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「ドラマの衣装では、見た目だけのスタイリングではなく、台本や芝居の流れに沿ったスタイリングをすることも必要。洋服のデザインや色、アクセサリーの華美さが大事なシーンのさまたげにならないようにしています」と続ける遠藤氏。ある時は目立たせ、ある時は存在感を薄くしながらもおしゃれに。視聴者に違和感なくドラマを楽しんでもらうために、さりげなくメリハリをつけるのもスタイリストの役目なのだ。
ドラマの統一した世界観を作り出すために、セットのチェックも怠らないという遠藤氏。「個人的にセットを見るのがすごく好き。その際に西園寺さんの部屋がどんなトーンなのか、会社のセットはどんな配色になっているかなどを確認し、俳優さんが映像の中で沈まないように、背景に馴染んでしまう色は避けるようにしています」と、登場人物の彩り方も披露してくれた。
代用可能な西園寺ファッション。組み合わせに注目を?
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毎話「真似したい!」という声が多く上がる西園寺さんのスタイリング。視聴者が憧れの西園寺さんに近づくにはどうしたらよいのだろうか。「西園寺さんの衣装は、強い個性があるスタイリングではないので、同じアイテムじゃなくても身近に似たようなものを探すのは難しくはないと思います。作中で好みのアイテムを見つけたら、似ている服を探し、組み合わせを参考にチャレンジしてみてほしい」と、視聴者の背中を押す。
視聴者がドラマの世界観と俳優の芝居に没入できるよう考え抜かれたスタイリング。「プロデューサーやディレクター、スタッフ全員が細部まで見てくれているからこそ、世界観にピッタリなリアルなスタイリングができていると思う」と、遠藤氏は作品作りがチームプレーであることを改めて口にする。“迷った時はワクワクする服を!” そんな洋服選びをしながら、日々を彩るのも楽しいだろう。
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