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台風7号関東接近へ 東の海から接近“珍しい台風”相次ぐ 背景にある巨大な渦「モンスーンジャイア」の正体

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年8月16日 7時0分

TBS NEWS DIG

台風7号が非常に強い勢力となって関東などに接近する予想です。月曜日には台風5号が岩手県に上陸したばかり。本州の東側からの台風の接近が相次いでいます。実は、東側からの接近は過去にそれほど多くなく、上陸は過去3例しかありません。そんな珍しい東側コースの台風が相次いでいるのはなぜなのでしょうか。その理由は、日本の南海上に生まれた”巨大な渦”にあるといいます。

3例しかない東北太平洋側への上陸 岩手県で記録的大雨

月曜日に岩手県に上陸した台風5号は、自転車並みのゆっくりとしたスピードで東北地方を横断しました。

気象庁によりますと、1951年の統計開始以降、東北の太平洋側から日本に上陸したのは、わずか3例目です。初めて東北太平洋側に上陸したのは、2016年8月。岩手県に上陸したその年の「台風10号」は、北海道と岩手県に記録的な大雨をもたらしました。経験のない台風上陸に自治体は混乱。避難指示や勧告を発表しなかったことなどが原因で、27人の死者・行方不明者を出しました。

2例目は、2021年7月に宮城県から上陸した「台風8号」。当時行われていた東京オリンピックの競技日程が変更となる影響が出ました。

今回の「台風5号」は、台風本体が上陸する前から岩手県上空に湿った空気が流れ込み、久慈市で平年の8月1か月分の2倍を上回る雨量となるなど、記録的大雨なりました。

青森県の太平洋側や福島県、茨城県には、これまで台風が上陸したことがありません。日本の上空には偏西風と呼ばれる強い西風が吹いているため、日本列島に近づく台風の多くは南西側から近づいてきます。そのため気象庁の担当者は「台風が本州の東側から接近・上陸するのは珍しい」と話します。しかし、この8月は5号から8号まで日本の東側で発生。7号は非常に非常に強い勢力となって東日本や東北へ接近する予想です。

なぜ珍しいコースを取る台風が相次いでいるのでしょうか。横浜国立大学・台風科学技術研究センターの佐藤正樹副センター長に詳しく聞きました。

原因は巨大な大気の渦「モンスーンジャイア」 台風を生み出し日本へ運ぶ

横国大・台風科学技術研究センター 佐藤正樹副センター長
「今回は特殊な要因があると思っています。その原因は、日本の南海上に広がる『モンスーンジャイア』です」

聞き慣れない「モンスーンジャイア」とは一体何なのでしょうか。
モンスーンは季節風、そしてジャイアは渦巻きのこと。つまりモンスーンジャイアは「季節風の渦巻き」のことをいいます。

日本の上空には「偏西風」という強い西風が吹いていて、寒気と暖気の境目になっています。佐藤副センター長によると、日本の上空付近で南に蛇行していた偏西風が、蛇行が大きくなりすぎて切り離され、取り残された寒気が低気圧となったものがモンスーンジャイアです。日本の南海上にはモンスーンジャイアが形成されていて、南西からの季節風と太平洋高気圧を回る風が反時計回りの巨大な大気の渦を生み出しています。

いま日本周辺には、南側にモンスーンジャイア、東側に太平洋高気圧があります。モンスーンジャイアによる大気の渦と、太平洋高気圧の縁を回る風がぶつかることで、モンスーンジャイアの東から南側では、台風の“卵”である「熱帯低気圧」が発生しやすい状況になっているというのです。

そしてモンスーンジャイアがもたらす影響はこれだけではありません。

横国大・台風科学技術研究センター 佐藤正樹副センター長
「渦の東側は風が北向きの流れになっています。この流れに沿って台風が移動しやすいという特徴があります」

この気圧配置では、日本の東側では北に向かう風の流れができています。その結果、発生した熱帯低気圧や台風が北上しやすく、日本付近へと運ばれやすいというのです。

この風の流れに乗って台風5号は岩手県に上陸。6号も日本の東海上を北へと進み、7号は関東付近へと向かっています。

こうした状況はいつまで続くのでしょうか。

横国大・台風科学技術研究センター 佐藤正樹副センター長
「太平洋高気圧が強まってくるので、モンスーンジャイアは徐々に小さくなっていきます。今回のモンスーンジャイアに影響を受けるのは、8号までかもしれません。しかし一旦おさまった時期があったとしても、1か月後ぐらいにはまた対流が活発になって台風の発生が多くなるというのは、この時期にはよく見られる現象です。9月も台風シーズンですので、台風の脅威は油断なりません」

海面水温?エルニーニョ? 「モンスーンジャイア」の背景は不明 

特に東日本の台風シーズンに大きな影響をもたらす「モンスーンジャイア」は、どういったときに形成されやすいのでしょうか。

横国大・台風科学技術研究センター 佐藤正樹副センター長
「偏西風の蛇行によるものだとはわかっていますが、どういう状況だとそうなるのかというのは、はっきりとはわかっていません」

その背景は謎に包まれているといいます。横国大・佐藤センター長が注目しているのは「海面水温」です。

横国大・台風科学技術研究センター 佐藤正樹副センター長
「日本の周りでは海面水温が非常に高い状態というのが続いています。このことが大気の動きに影響し、普段とは異なる動きをもたらすというのは、要因として考えられる事だと思います」

一方、気象庁・異常気象情報センターの田中昌太郎所長が注目しているのは「エルニーニョ現象」との関係です。

気象庁・異常気象情報センター 田中昌太郎所長
「モンスーンジャイアは、岩手に台風が初上陸した2016年8月にもみられていました。8年前の8月と今月の共通点は、どちらもエルニーニョ現象が終息した後の夏だということです。エルニーニョ現象がモンスーンジャイアとどう関係しているのかはわかりません。今後調べていく必要があると考えています」

田中所長は「モンスーンジャイアができやすい条件を知ることができれば、台風の予想などにも役立つかもしれない」としています。

台風7号は、暴風域を伴い、非常に強い勢力となって関東や東北に接近する見通しです。計画運休などが発表されているほか、国交省は「停電や断水も視野に入れて準備を進めてほしい」としています。気象庁も「台風の心構えを一段高めてほしい」と危機感を示しています。

天気が荒れる前に台風の準備を進め、暴風や土砂災害、低い土地の浸水などに厳重に警戒するようにしてください。

(本記事に記載した予報は15日午後6時時点)

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