ハリス氏がトランプ氏を支持率でリード ガザ問題で“バイデン離れ”した若者も支持 民主党大会開幕で「打倒トランプ」に向けてどう戦う？【news23】

TBS NEWS DIG

最新の全米の世論調査で、ハリス氏がトランプ氏を上回る勢いを見せています。この勢いを維持したい民主党は党大会を開きます。「打倒トランプ」に向けて、どのような戦いを展開していくのでしょうか。

トランプ猛攻も ハリス氏 若者の支持拡大

大統領選はますます熾烈になっています。

民主党 ハリス副大統領
「食料品価格の不当なつり上げを禁止する初の連邦法制定に取り組みます」

民主党候補のハリス副大統領が16日、経済政策を発表すると、共和党のトランプ前大統領は、すかさず･･･

共和党 トランプ前大統領
「カマラは完全な共産主義者になった」
「マルクス主義でファシストだ」 

自身のSNSに投稿したこちらの画像。「共産主義」を示す旗に、演説するハリス氏とみられる女性の後ろ姿、右側には「シカゴ」と書かれています。シカゴで行われる民主党の全国大会で演説予定のハリス氏を揶揄したものとみられます。

SNSで激しい攻撃を見せるも、最新の支持率ではハリス氏が優勢。

そんなハリス氏が今、特に支持を広げているのが「若者」です。激戦州のひとつ、ジョージア州。飲食店に集まっていたのは、民主党を支持する若者たちです。

民主党の支持者
「バイデンが撤退して 久しぶりに希望を持ちました。この選挙はあまりに重要だと思うからなにかしたいと思って参加しています」

「地元のレストランやバーと協力したことはある？」

ハリス氏勝利に向け、作戦を練ります。

リーダーのタイガーリリーさんは、バイデン大統領が撤退するまでの選挙戦を複雑な思いで見ていたといいます。

民主党支持 タイガーリリーさん（24）
「イスラエルに対するバイデン政権の政策とパレスチナで起きているすべてのことに本当に懸念を抱いてきました」

混迷のガザ情勢　ハリス氏の姿勢は？

パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルとイスラム組織「ハマス」の戦闘。バイデン政権はイスラエルへの連帯を表明し続けてきました。

その一方で、SNSではガザの人々の苦しみが拡散。その結果、バイデン氏から若い世代の支持が離れていきました。

そうした中、バイデン氏に代わって登場したハリス氏。バイデン氏が候補のときには若い世代の支持率は拮抗していましたが、ハリス氏に代わると、トランプ氏を上回る調査結果が出るようになりました。

タイガーリリーさん（24）
「ハリス氏はバイデン政権の一員としてイスラエルを支持していました。それは心配ですがハリス氏はバイデン氏よりパレスチナに対して 同情的な言葉を使っています」

ただ、ハリス氏はガザ情勢をめぐる明確なスタンスを示していません。

デモ
「パレスチナに自由を！」

民主党大会の会場近くで声を上げる人々。大会中はガザ情勢への対応に抗議するデモも計画されています。

停戦協議の先行きが見通せない中、ブリンケン国務長官はイスラエルを訪問。停戦や人質解放に向けてネタニヤフ首相と会談しました。

そんな中で始まる民主党大会。ガザ情勢について、ハリス氏からどのような言及があるのでしょうか。

「ほぼトラ」のはずがハリス氏支持率リード

藤森祥平キャスター：
一時は「ほぼトラ」「確トラ」とまで言われていましたが、民主党ハリス氏が候補になってから世論調査逆転というところまで来ました。斎藤さんいかがですか。

東京大学准教授 斎藤幸平さん：
急に盛り上がってますよね。トランプ氏も「マルクス主義だとか共産主義だ」とか言ってますが、私のような本当のマルクス主義者に言わせれば、ハリス氏はただのリベラル派の典型的な政治家だと思っています。

今はオバマ氏とかヒラリー氏も出てきて、寄付もすごい集まって盛り上がっていますが、私はここには不安があると思います。ガザの問題をとっても、ハリス氏は、新しいリーダーではなく、今のイスラエルのジェノサイドをアメリカが支えているバイデン政権のNo.2であるわけです。

バイデン氏からハリス氏に変われば、ガザ問題についても状況が変わるといったことは、リベラル派の勝手な幻想に過ぎず、それをみんなが信じ込んでいるだけです。
けれどもそうした欺瞞が、世界でもそうだしアメリカの中でもいろいろな分断を生んでしまったという現実もあるわけです。

そういう意味では、女性で有色人種のハリスっていうのは非常にリベラル派にとっては理想の候補者ですが、政治家として現状この4年間での能力は、ちょっと微妙なところがあるし、当選した場合にも結果的にはアメリカの分断や世界の分断がますます深まっていってしまうことを懸念しています。

藤森祥平キャスター：
せめて今の政権との違いをどこまではっきり示せるかが一つポイントになりそうです。

民主党大会「打倒トランプ」歴代大統領集結

上村彩子キャスター：
では、4日間行われる民主党大会の会場にはワシントン支局の樫元支局長がいます。民主党の勢いを現地でどのように感じていますか。

樫元照幸支局長
バイデン大統領が撤退を表明してからおよそ１か月。1か月前を振り返りますと、民主党は推進力を失って、まさに失速状態でした。ですが、そこから急速に勢いを取り戻しています。特に黒人それから若者の間で支持が広がっているのが世論調査などでも確認できます。

ただ、先週ハリス氏が一部明らかにした経済政策を巡って、リベラル派のメディアの間でも否定的・批判的な報道が広がっています。
今まで見えていなかった具体的な政策が今後明らかになるにつれて、ハリス氏への逆風も吹き始め、勢いに陰りが出る可能性もあります。

今回の党大会では、バイデン氏、オバマ氏、それからクリントン氏という3人の大統領経験者が登壇をして女性初の大統領を目指すハリス氏へのエールを送ります。
まず注目なのは、初日の今日行われるバイデン大統領の演説です。現職の大統領が、再選を断念して、選挙戦から撤退をするという。1968年以来の歴史的な決断をしたバイデン大統領が、どんなことを訴えてハリス氏にバトンを渡すのか。そしてそのバトンを受け取ったハリス氏は最終日22日に演説を行います。

バイデン政権の一員のハリス氏が、ガザ情勢を含めた主要な問題に対してどのようなことを訴えるのか、そしてバイデン氏と色の違いをどのように出していくのか。
演説の内容は今後の選挙戦の流れを占うことになります。

藤森祥平キャスター：
星さん、今後は共和党との論戦も注目すべきですね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん：
とりわけ9月10日のテレビ討論ですね。ここでハリス氏は経済政策を含めた政策論争にしたいんですけど、おそらくトランプ氏はまだ誹謗中傷といった方に終始するのでそれがかみ合うかどうか、それがまずポイントだと思います。

藤森祥平キャスター：
経済・外交の具体的な中身の徹底した論戦、これは日本と同じように期待される点です。

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＜プロフィール＞
斎藤幸平さん
東京大学准教授　専門は経済思想社会思想
著書『人新世の「資本論」』が50万部突破

星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年