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「自分は溺れないと思っていた」子どもと川遊び中に溺れた男性の“油断”と、ゲリラ豪雨で注意すべきは「上流の雨」の理由

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年8月24日 7時0分

TBS NEWS DIG

夏休み期間は水の事故のニュースが相次いだ。「自分は大丈夫」と気の緩みから川で溺れてしまった男性が語る“川の怖さ”…。そして、各地で発生するゲリラ豪雨が川に与える影響から命を守るためにはどうすればいいのか、専門家に聞いた。

まさか自分が溺れるなんて…初めて感じた川の怖さ

「心の中で油断してたし、自分は溺れないと思ってました、本当に」

安藤哲也さん(41)は2年前、友人家族に誘われて三重県内の川へ遊びに行った。
川遊びは初めて。「きれいな川だな、でも気をつけなきゃ」くらいの心持ちだったという。

安藤哲也さん
「事故のニュースはよく聞くから、子どもにライフジャケットを着せるのは当然だと。でも、自分は泳げるからライフジャケットはいらないって思っていました」

子どもたちがいるところへ平泳ぎをしながら向かおうと、腰ぐらいまで川に浸かった安藤さん。少し休憩するために立とうとしたその瞬間、川の深みにはまり、急に真下に落ちてしまったという。

「バサーって顔を出してクロールしようとしたんですけど、体が動かなくて。川の流れが自分が向かいたい方向と反対だったんです。向こうの方に友人の姿は見えていたんですけど、うまくいかない、苦しいみたいな。前に進むのは恐怖でした」

安藤さんが「自分は大丈夫」と過信してしまったのには「あんな小さい子たちがあそこにいるなら、普通に横断できる」という思い込みがあった。一瞬の気の緩みで、大人も川の事故に巻き込まれかねないと痛感した安藤さんは「絶対に川はなめちゃいけない」と強調する。

実際、今年のお盆休みも川の事故が相次いでいる。埼玉県嵐山町の渓谷で遊んでいた21歳の大学生が下流に向かって泳いでいたところ、溺れて遺体となって発見された。また、神奈川県南足柄市の川で泳いでいた30代の男性も溺れて亡くなっている。

警察庁(※1)によると過去5年間、河川での事故で死亡もしくは行方不明となった人の数は増減を繰り返し、なかなか減少傾向には至っていない。

2019年(令和元年)92人
2020年(令和2年)112人
2021年(令和3年)87人
2022年(令和4年)88人
2023年(令和5年)100人

※1 警察庁 令和5年夏期における水難の概況

「川は増水する前にコーヒー牛乳のように濁る」上流の雨に要注意

ただでさえ注意が必要な、川との関わり方。最近では、頻発するゲリラ豪雨による増水にも気を配らなければならない。

「川は増水する前にコーヒー牛乳のように濁り、このキャンプ場周辺は濁り始めてから10分程度で増水してくる」

こう語るのは、埼玉県内にあるキャンプ場の担当者だ。毎朝警報・注意報・雷レーダーを確認し、随時雨雲レーダーで上流の天気を警戒。

上流の方で雨が降り、キャンプ場近くの川が増水しそうだと判断したら、川遊びをしているお客さんに川から離れるよう呼びかける。この8月は例年よりも多く、すでに5回ほどお客さんへの注意を呼びかけたという。

地球上の水循環を研究している東京大学の沖大幹教授も、いる場所の天気だけではなく、上流での雨にも注意するべきだと指摘する。

東京大学 沖大幹 教授
「上流から10キロ離れると、こっちは晴れてるけど上流は雨が降っているということはあり得る。それに気づかず、いきなり水位が上昇することがあるので、本当に危険です」

特にキャンプ場などがある山の方の支流は影響を受けやすい。山は“緑のダム”として、水を蓄える機能があり、24時間で50ミリ程度の雨が降れば土壌にしみこむ。ところが、同じ量の雨が1時間に一気に降ってしまうと、土壌にしみこまず表面を流れてしまうため、支流が増水してしまうという。

「川は常に変わる」身近な存在でも油断大敵

増水のほかにも、大雨で注意しなければならないのが地形の変化だ。河川財団の菅原一成さんによると、大雨や洪水などで大量の水が川に流れることで川底も削られる。1年前には安全に泳ぐことができたかもしれないが、翌年には川底に大きな石が沈んでいるなど、川の形が変わっている場合もあるという。

河川財団 菅原一成さん
「川は刻々と変化する、常に変わるものだというところ、なおかつ大雨や洪水のときにはさらに大きく変化します。陸からでは川の深さはわかりませんし、大雨が降れば増水することもあるので、100%安全な川というのは少ないかもしれません」

菅原さんは、川は身近であるがゆえに事故が起こりやすいと考える。

「川はどこにでもあって、子ども同士で遊びに行くことができる。海だと親が車を出してくれることがあると思うが、子ども同士で行ける範囲にあるので川は事故が多くなると思います」

そして川での悲痛な事故を防ぐためには、菅原さんはライフジャケットの着用が必須だと語る。

「川でライフジャケットを着用しないのは、相当リスクが高くなります。自分自身の浮力だけでは十分ではないので、補うために外部の浮力体を身につける必要があります。ライフジャケットを着用することで、頭が水面より上に出て、浮いた姿勢のまま助けを呼ぶことができます」

溺れた経験から安藤さんが伝えたいこと「危険性を知って」

川で溺れてしまった安藤さんも、ライフジャケットを着用していなかった。クロールをしても川の流れに勝てず、もがいていたが「前に進めないなら浮こう!」と思ったそうだ。浮いて背泳ぎに切り替えたところ、川の流れに従ってすぐに浅瀬にたどり着き、無事だったという。

安藤さんは自分と同じような被害に遭わないように、そして悲しいニュースが減るように、この経験をXで発信している。そして川の危険性を知るべきだという。

安藤さん
「義務教育の中で川に入った方がいいと思うんです。着衣水泳はやるけれど、溺れる練習はしない。だから川でプロの方と一緒に僕が川の深みに落ちたようなことを体験してみると、危険性がわかると思う。そうでもしない限り、事故って減らないと思うんです」

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