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障害者のための運動情報サイト「SIT-FIT」

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年8月27日 13時12分

TBS NEWS DIG

座った状態でできるストレッチなど、150種類以上の動画を公開

8月28日からパリパラリンピックが始まります。これを機会に障害者のスポーツ、パラスポーツが注目されると思います。

その出場選手のように、ハイレベルなスポーツを続ける障害者がいる一方で、障害者の中にはスポーツに親しむ機会が少ない人も多くいます。

パラスポーツは専用車椅子など特殊な用具が必要だったり、競技場所や時間が限定されるなど、体験するための制約が多いのも一因です。

ただ、健康のため日常的に運動することは障害者にも大きな意味があります。

そこで車椅子を使っていたり、身体に麻痺などのある障害者に、自宅や身近な場所でスマートフォンやパソコンの動画を見ながら気楽に運動習慣を身につけてもらおうと作られた情報サイトが「SIT-FIT」です。

「SIT-FIT」とは、Sitting=座ってする+Fitness=フィットネスというコンセプトで名付けられました。

最初は車椅子ユーザーに特化したエクササイズとして考案されましたが、現在では身体に麻痺があるなど多くの障害者に対応した、車椅子や椅子に座った状態でできるストレッチやエクササイズ、情報動画など150種類以上の動画が公開されています。

「SIT-FIT」はサイトの入口でメールアドレスを登録し、障害の部位や程度などいくつかのアンケートに回答すれば無料で動画を見ることができます。

運動初心者や、障害の重い人でも、逆にスポーツの得意な人、パラアスリートでも自分にあった動画を選べるようになっています。

動画には、褥瘡(車椅子などの床ずれ)や猫背を予防する基本的な動きからエアロビクスのように音楽に合わせて早い動きをするものまで様々あります。

制作した株式会社ユニバーサルトレーニングセンターはもともと障害者の身体能力向上のためのパーソナルトレーニングを業務にしており、現在も車椅子テニスや卓球、カヌー、ボッチャなどの日本代表レベルのパラアスリートの個人トレーニングを担当している専門性の高い会社です。

そうしたメインの業務に加えて広く障害者全般の健康維持に役立つエクササイズにも取り組もうと、約1年前「SIT-FIT」を製作・公開しました。
現在、約500人の登録者がいるそうです。

米国BOC(アスレチックトレーナー国家試験)資格を取得している ユニバーサルトレーニングセンター代表の菅原瑞貴(みずき)さんにサイトを作るきっかけや特徴を聞きました。

ユニバーサルトレーニングセンター代表・菅原瑞貴さん
「障害がある方は運動に対する意識が健常者以上に二極化していると感じています。パラスポーツにすごく熱心に取り組んでいる方がいる一方で、障害の関係で運動に全く接点がなかったり、病院で医師などから『こういう運動は難しいよ』みたいなことを言われて前向きになれなかったりと、運動を始めるハードルの高い人もいます。そうした人たちのために、自宅にいても健康をしっかり維持するために必要なエクササイズができるようにするにはどうすればいいかという課題が根本にありまして、それが『SIT-FIT』のコンテンツに反映されています。

障害の程度については、
(1)上肢の麻痺がある人、
(2)上肢の麻痺はないけど体幹の麻痺がある人、
(3)体幹の麻痺はないけど下肢の麻痺があって立てない人、
(4)麻痺もあるけど立てる人、
(5)立って歩ける人
といった5段階の障害に適応できるエクササイズ動画を用意しているので、かなり多くの障害者に対応していると思います。

たとえば上肢の麻痺がある人は麻痺がある状態でもできるようなエクササイズのやり方を提供していて、例えば壁を使って壁に手をかけて胸の前を伸ばしていくとか、テーブルを使って、テーブルを持って体をひねったりとか、補う必要がある部分はこういうふうに補いますよ、みたいなサポートをつけたエクササイズ動画を紹介しています。そこが「SIT-FIT」の大きな特徴だと思います。

また、車椅子には、手すりがあったり、後ろの背もたれがあったり、介助者が押すバーがあったりするんですけど、そういったところを工夫して使うことでいろいろな動きができるので、それらを利用したエクササイズは新鮮だと思います」

運動する機会の少なかった障害者に、いきなりパラスポーツではなく、やさしいエクササイズから始めて運動習慣をつけてほしいと考案されたのがこのサイトです。
菅原代表に登録者からどういう声が届いているか聞いたところ…

「今まで苦労していた車椅子からベッドへの移動がスムーズにできるようになった」
「車椅子を漕いでいてもあまり疲れなくなった」
「2か月間エクササイズを続けて、それまで手が耳の高さまでしか上がらなかった人が、頭の上でタッチできるようになった」といった例を教えてもらいました。

障害者の生活の質の向上全般に関する情報提供も

こうした運動習慣を持つことは健康に良い効果があるだけでなく、当事者が元気になって、街に出て社会参加していくことにもつながります。

「SIT-FIT」では運動だけでなく、先端医療や障害者の生活の質の向上全般に関する情報提供もしています。理由として菅原代表はこんな話をしていました。

ユニバーサルトレーニングセンター代表・菅原瑞貴さん
「運動して、健康になって、そのあとアクティブな生活をするっていうところまでがひとつのセットだと思っているので、健康になった後にどうアクションしよう、どう行動しようみたいなところも提供できるようなコンテンツ作りを心がけています。そういう人たちが外に出ていって、社会に混じっていくっていうことがいちばん重要なのかなあと思います。社会にどんどん混じっていく、障害者という括りではなくひとつの特徴をもった人という見られ方になるインクルーシブな社会になる、そういったところにつなげていくのが、私たちの最終的な目的です」

菅原さんのいう「健康になったあとのアクション」とは、たとえば街に出ていく時、おしゃれを意識する障害者がオーダーできるデザインスーツや靴の紹介動画があったり、完全バリアフリーのレジャー体験ツアー(スキューバダイビングのツアーなど)の情報などもサイトの中で公開しているそうです。

国内で車椅子を必要とする人は、障害のある人で200万人、高齢者など部分的に車椅子を使う人も含めると300万人いるといわれています。

その中で、これまでまったく運動習慣がなかった人も少数ではなく、そうした人たちにどうやって運動の情報を届けていくかが、今後の「SIT-FIT」の課題と考えているそうです。

今回のパラリンピックをきっかけに、こうした運動情報サイトも話題にのぼり、障害のある多くの人に、運動習慣が広がればいいと思います。

(TBSラジオ「人権TODAY」担当:藤木TDC)

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