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「SDGsは“赤点”」目標達成の2030年まで折り返しも・・・日本の国連幹部が警鐘「順調に進んでいるのは15%」

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年9月8日 7時0分

TBS NEWS DIG

去年に続き、観測史上最も暑い夏となった2024年。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は“地球沸騰化”だと警鐘を鳴らしています。貧困や不平等、気候変動への対応など17の世界共通の課題を掲げたSDGsも、ゴールとしている2030年まで折り返し地点を過ぎました。「今、手を打たなければ手遅れになってしまう」状況で、私たちはどんなACTIONを起こせばいいのか。TBSのSDGs大使である日比麻音子アナウンサーが国連広報センター長の根本かおるさんに聞きました。

折り返しを過ぎたSDGsは赤点!!

日比麻音子アナウンサー(以下、日比):
2015年に国連総会で採択されたSDGsですが、目標達成は2030年、折り返しを過ぎて残り6年となっています。ということでSDGsの現在の目標達成の状況はどうなっているんでしょうか。

根本かおる国連広報センター長(以下、根本):
現状は、実を言うとピンチです。窮地です。SDGsの17のゴールの下に169のターゲットという、より詳しい目標があるんです。そのうち140がデータに裏打ちされているもので、それを見たところ、順調に進んでいるのは140のうちの15%しかない。

日比:ちょっと、そうでしたか。

根本:弱々しい前進か停滞というのが48%。半分くらい。そして、むしろ後退というのが37%もあるんです。これ点数で言うと赤点でしょ。(*)

日比:ホント進級も危ういくらいですね。

根本:この背景はですね、コロナ。(コロナが)特に脆弱な立場にある国々だったり地域だったり、豊かな国であってもやっぱり貧富の差がありますよね、弱い立場にある人たちを直撃しました。それから、気候危機。経済発展を、大きな気候災害があるといっぺんに持ってかれちゃいますから、これがどんどん深刻になってる。そしてウクライナ戦争以降ですね、物価の高騰があって、これが特に弱い立場にある国々を直撃しているわけですね。豊かな国々はそういったショックを受けても自力で何とか這い上がることができる。しかし開発途上国の場合は自力では立ち上がれない。で、例えば、そのコロナから、それから気候危機から立ち上がるためにお金を借りないといけないわけですよね。途上国によっては、自国の医療とか教育に振り向けている予算よりも、利払いの方に予算を振り向けている国がたくさんあって、なんと世界人口の4割にあたる人達、32億人はそういう国々に住んでるんですよ。

 日比:そこまで!かなりの割合ですよね。

根本:はい、そういう窮地にあってですね、SDGsの実施の後半戦は、やっぱり波及効果が大きなチェンジメーカーになるような、そういった分野により資金を手当して、そこでアクセルを踏んでいくってことが必要だなと。それは例えば食糧の話だったり、あるいはデジタル化、それからエネルギー、再エネへの転換とか教育とか、波及効果の大きな分野がドライバーになりますので、そういった分野により手当を振り向けてですね、リソースを振り向けて頑張っていこうというふうに呼びかけています。    

(*)軌道に乗っているターゲットは5分の1に満たず、世界はSDGsの約束を果たせなくなりつつある ― 新たな国連報告書が警鐘(2024年6月28日付プレスリリース・日本語訳)

「私達のここ10年の選択と行動が、今後何千年にもわたる地球に影響を与える」

日比:私も参加した国連とメディアによる共同キャンペーン「1.5℃の約束-いますぐ動こう、気温上昇を止めるために」。改めてどういったキャンペーンなのか、教えてください。

根本:私達は今、本当に大きな分岐点にいるんですね。2023年3月にIPCC気候変動に関する政府間パネルの科学者たちが、統合報告書を発表しているんですけれども、私達のここ10年の選択と行動が今後何千年にもわたる地球に影響を与えると。責任重大ですよ。

日比:10年が何千年の…。運命を握っている。はあっ。

根本:孫・ひ孫の世代から、おじいちゃん、おばあちゃん何してたの?と言われないようにしなければいけないっていう、将来の人たちに対してすごく責任があるわけなんですね。「1.5度の約束」は、いろんなメディアがタイミングを同じくして、同じ方向を向いて気候変動について情報を発信していく、そういったキャンペーンになっています。やっぱり同じタイミングで異なるメディアで情報を発信すると、それだけ人々の意識に残るっていう調査結果も出ているんですね。

気象キャスター、気象予報士たちと連携を!

根本:(キャンペーンは)2024年で3年目なんですけれども、私達、特に気象キャスターそれから気象予報士の方々との連携に期待しているんです。6月5日の世界環境デーには、44名の気象キャスター、気象予報士の方々が連名で共同声明を発表しました。まず気候変動がなぜ起こるのか、どういう影響を及ぼすのかということを正しく知ってもらう。その上でそれがどう自分に跳ね返ってきて、自分の暮らし、権利、それから自分の仕事そして命に関わってくるのかという自分ごと化。次にどんなアクションが取れるのか、このホップ・ステップ・ジャンプじゃないですけども、あの三段論法でメディアの方々に視聴者そして読者の方々に訴えてもらいたい、そういうところで始めました。

SDGsにどう取り組んでいくべきなのか、次世代へのメッセージ

日比:改めて次世代の皆さんというかまさに私達に向けて、メッセージをぜひお願いしたいんですけれども。あと6年、SDGsにどう取り組んでいくべきなのか。    

根本:SDGsって本当に間口が広いんですよね。一つぐらいは視聴者、読者の皆さんに、響く入り口ってあると思うんです。私の場合は食いしん坊なので、「食」。あるいは洋服も好きなので、ファッションの話。食とかファッションとか、サステナブルな形でどういうふうに取り組めるのかなと。この前、6月5日の世界環境デーの日、私は再生ポリエステルの洋服を着ていました。それはやっぱり自分の心もすごく豊かになるし、ストーリーが生まれると思うんですね。「これ、再生ポリエステルなの」「へえ、こんなふうにおしゃれな形になるんだ」と。あとはやっぱり地産地消。同じ野菜を買うんであれば、近くの農家が作ったものを買って、フレッシュで安い野菜を買って、それを使い切って食べ切るということを徹底してるかなと思います。 

 日比:本当に半径5メートル、いやもっともう1メートル、数十センチ、そこでできることがまだまだあるってことですよね。

根本:それと同時にやっぱり世界の状況を知る。そうすると自分のその地産地消っていうことと世界の食を巡る状況とを繋ぎ合わせて、自分自身が世界に繋がってるなっていう実感も生まれてくると思うんですよね。自分の暮らしであったり、自分の半径何メートルかの世界も違って見えてくると思うんです。

日比:なるほど。少し世界という立ち位置を一度意識するだけで、自分の近くも変わってくる。

根本:ええ、そうするといろんな情報もどんどん耳に入ってくる、目に飛び込んでくる。それまでは閉ざしていたかもしれないようなことが、響いてくるんですよね。それが共感であったり、もしかするとビジネスチャンスに繋がるかもしれない。

日比:新たな一歩を踏み出すことでいろんなチャンスが巡ってくる、その手段がSDGsであると。なんかちょっとわくわくしてきました。2030年までの6年ってどうですか。根本さんにとって長いですか、短いですか。    

根本:いやあ、このSDGsは続かなくなっている地球を続けられる地球に変えていこうっていう壮大な計画だったわけですよね。それはそんじょそこらのね、努力だけで片付けられない課題だと思います。きっと2030年以降も続いていくんじゃないかなと思うんですけれども、これは未来永劫のね、努力になるんじゃないかなと思います。    

日比:SDGsの目標達成、2030年までもうあとひと踏ん張り、みんなでふた踏ん張り、もうちょっとですかね、していきたいななんて思いました。ありがとうございました。

==========
<プロフィール> 
根本かおるさん
東京大学法学部卒業後、テレビ朝日で、アナウンサーや記者を務めたのち、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)にて、アジア、アフリカなどで難民支援活動に従事。その後、フリージャーナリストを経て、現在の国際連合広報センター所長に就任。

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