実質賃金プラスも「好循環」実現は微妙 総裁選・総選挙で経済対策の議論へ【播摩卓士の経済コラム】【播摩卓士の経済コラム】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年9月7日 14時0分
7月の実質賃金が0.4%増と2か月連続でプラスとなりました。物価と賃金の「好循環」に向けて勇気づけられる数字は出てきているものの、消費の力は依然、弱いままで、実質所得の増加は、物価上昇率次第という簿妙な状況が続きそうです。
実質賃金2か月連続のプラスに
厚生労働省が5日発表した毎月勤労統計によれば、7月の1人あたりの現金給与総額(名目賃金)は、前年同月比で3.6%増加しました。
消費者物価の上昇率(持ち家の帰属家賃を除く総合指数)を差し引いた実質賃金は、前年同月比0.4%の増加でした。
増加幅は6月の1.1%から縮小したものの、2か月連続の増加です。
実質賃金が2か月連続で上昇したことは喜ばしいことですが、中身を見てみるとボーナスに相当する「特別に支給された給与」が6.2%も増えたことが大きく、基本給である所定内給与だけでは、物価上昇を埋め合わせきれない姿が浮き彫りになっています。
6月、7月は夏のボーナスが支給された企業が多く、その分、実質賃金プラスに貢献しましたが、8月は再び実質賃金マイナスに沈むとの見方が大勢です。
実質所得の増加は"物価上昇率"次第
賃金そのものは来春の春闘まで大きな改定がないことから、実質賃金の動向は、消費者物価上昇がマイルドになるかどうかにかかっています。
9月、10月、11月は、岸田政権の「置き土産」とも言える電気・ガス代の負担軽減策が再開されることから、その分物価上昇率が抑えられ、再び実質賃金がプラスに転じる可能性はありそうです。
ただ、その先に、電気・ガス代だけでなく、ガソリン等への補助も打ち切られれば、実質賃金がマイナスに転落することは確実視されています。
「好循環」を確かなものにするためには、物価対策など政策による「もう一押し」が必要な状況なのです。
消費支出は依然、低調
では、消費はどうでしょうか。
総務省が6日発表した7月の家計調査によれば、2人以上世帯の消費支出は、物価変動を除いた実質で前年同月比0.1%増と3か月ぶりにプラスに転じました。
もっとも、プラス幅はわずかで、住宅関連の支出が強めに出たという特殊な要因が大きいと見られます。
消費支出の3割を占める食料は実質1.7%減で、家計の財布の紐は、依然として堅いままであることが見てとれます。
家計調査には賃上げの恩恵が薄い年金世帯などが含まれているので、ここで勤労者世帯に限ってみてみましょう。勤労者世帯の7月の実質消費支出は1.2%もの減少です。
実は勤労者世帯の実収入は、賃上げやボーナスの効果から実質で前年同月比5.5%も増加しています。
可処分所得は定率減税の効果も加わって、7.3もの%増加と、いずれも「歴史的」と言って良い高い伸びを記録しました。
実収入や可処分所得の、これだけ高い伸びは、驚きに値しますが、それでも消費支出がマイナス1.2%と言うのは、それ以上に驚きです。
2年以上続いている高い物価上昇と将来不安が、いかに消費マインドを委縮させたかを物語っています。
企業の内部留保は初の600兆円超え
やるべきことは明白です。当面、物価対策や所得支援を続ける一方で、来年も今年並みの賃上げを続けることに尽きます。
財務省が2日発表した法人企業統計によれば、企業の利益から税金や配当を差し引いた「内部留保(利益剰余金)」は、2023年度末で、初めて600兆円を超えました。
2016年度に400兆円を突破してから、わずか7年で企業の内部留保は1.5倍にも膨れ上がっています。
23年度は人件費が3.4%、設備投資も5%と、増えてはいるのですが、円安の進展などで、利益はそれを遥かに上回る増加ぶりです。
言い換えれば、まだまだ賃上げも投資も足りないのです。
総裁選、総選挙で経済対策の論戦を
物価と賃金の「好循環」を実現し、それを需要増がけん引する経済成長につなげていくという難しい作業には、細心の政策運営が必要です。
千載一遇のチャンスを逃さないよう、自民党総裁選挙や、それに続く総選挙を通じた経済対策へのの論戦が、大いに期待される所以です。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)
この記事に関連するニュース
-
7月の消費支出、0・1%増の29万931円…物価高に対応し節約志向続く
読売新聞 / 2024年9月6日 12時37分
-
実質消費支出、7月は0.1%増にとどまる 「踊り場」継続か
ロイター / 2024年9月6日 11時44分
-
【岸田首相の評価】火の玉にはなれなかったが、経済で多大な成果は残した!【日本経済をターンアラウンドする!】その26
Japan In-depth / 2024年8月20日 17時0分
-
岸田政権“ドヤ顔”の定額減税やっぱり効果なし…消費冷え込みクッキリ、長引く物価高
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月14日 17時3分
-
【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが注目…8月第3週の為替相場にインパクトを与える「重要な経済指標」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月12日 10時15分
ランキング
-
1「笑顔で深々とお辞儀する店員」なんて客は求めてない…接客業を疲弊させる「日本式おもてなし」の罪
プレジデントオンライン / 2024年9月7日 10時15分
-
2トヨタ、26年のEV世界生産100万台へ 計画より3割減
ロイター / 2024年9月6日 20時43分
-
3ドラえもん「どら焼き屋の経営ゲーム」売れる理由 発売後すぐ売り上げ首位に、他作品のキャラも登場
東洋経済オンライン / 2024年9月7日 10時0分
-
4メルカリが台湾へ、透ける「米国リストラ」の教訓 アプリも現法もなし、リーズナブル設計がカギ?
東洋経済オンライン / 2024年9月7日 9時0分
-
5びっくりドンキー「545円朝食」で待ちわびた甘い朝 コロナ禍開始のモーニングがさらに進化していた!
東洋経済オンライン / 2024年9月7日 8時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください