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150年かけて巨大な一枚岩を彫って作った大寺院!600年以上かかった大聖堂!築くのに時間がかかった世界遺産【世界遺産/エローラ石窟群(インド)】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年10月20日 10時0分

TBS NEWS DIG

今年の春、スペインの世界遺産「サグラダ・ファミリア」が2026年に完成すると発表されました(正確には、高さ172メートルを超える中央の「イエスの塔」が完成。その後、下部のファサードの工事等が2034年に終わる予定)。

着工したのが1882年なので、144年がかりということになります。設計したアントニ・ガウディは1926年に死去しましたが、その時点で完成していたのは地下聖堂と生誕のファサード等だけで、実は世界遺産に登録されているのはこれら生前に作られた部分です。

サグラダ・ファミリアの建設にこんなにも時間がかかっている理由は、1930年代のスペイン内戦でガウディの残した設計図や模型などがほとんど失われてしまったことと、資金難によるものでした。かつては「完成まで300年かかるのでは」と言われていたので、それに比べると144年というのは(長いことは長いのですが)かなりのスピードアップ・・・ITなど最新技術の導入と拝観料の増収などによるものと言われています。

サグラダ・ファミリアよりも時間をかけて作られた世界遺産が、インドの「エローラ石窟群」。1000年以上前にデカン高原の断崖を掘って作られた石窟寺院群で、南北2キロに34の寺院が点在しています。

その中のひとつ、カイラーサナータ寺院はなんと150年かけて築かれました。断崖は固い玄武岩で出来ていて、それを人の手でコツコツと削って、高さ30メートル・奥行き80メートルもある大寺院を作り上げたのです。巨大な一枚岩から彫りだした、いわば世界最大級の彫刻。しかも単純な壁や柱だけではなく、神々の姿やゾウなどの聖なる動物たちの姿が精緻に刻まれていて、気が遠くなるような時間と手間がかかっているのです。作業した石工たちは、7世代にわたって岩を彫り続けたといいます。

このカイラーサナータ寺院はヒンドゥー教の寺院で、最高神のシヴァ神が祀られています。中心部にはリンガと呼ばれる男性器を表した円筒形の大きな石があり、これがシヴァ神の象徴とされています。

今でもヒンドゥー教徒が多数訪れるこの寺院。番組「世界遺産」の取材では中心部の礼拝の様子を特別に写真撮影することができたのですが、みなリンガの周囲に集まって、触り、拝み・・・シヴァ神への信仰の厚さが実感できるところでした。

エローラにはヒンドゥー教だけではなく、仏教とジャイナ教というインド発祥の宗教の石窟もあり、同時期に作られたことが分かっています。異なる3つの宗教が互いに排除せず共存しえたのは、古代インド文化の特徴である「寛容の精神」があったからと考えられています。この点も世界遺産に登録された理由のひとつです。

世界遺産の中にはドイツの「ケルン大聖堂」のように、完成まで600年以上かかったケースもあります。大聖堂は完成した1880年当時、高さ157メートルで世界一の高さの建築物でした。番組ではヘリコプターで上空真上からこの大聖堂を撮影したのですが、塔の先端の遙か彼方に地上の人間が点のように見えて、まさに目もくらむような映像になりました。

ただケルン大聖堂の完成に時間がかかった理由は、財政難で長期間にわたって工事が中断したためで、インドのカイラーサナータ寺院のように「手作業で岩を彫る」という手間のかけ方から時間がかかったものは他に類を見ないのではないでしょうか。

世界遺産になるための条件のひとつに、「人類の創造的な傑作」というものがあります。エローラ石窟群も、サグラダ・ファミリアを含むガウディの作品群も、ケルン大聖堂も、手間と時間をかけた「人類の傑作」として世界遺産になったのです。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太

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