15年ぶり与党過半数割れの衝撃 総理指名選挙で誰に投票?政局のカギ握る国民民主・玉木代表にインタビュー 星浩が解説…今後の政権の枠組み“3つ”のシナリオ【news23】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年10月29日 17時34分
裏金問題などで大逆風のなか臨んだ選挙戦で、目標の与党過半数を達成できなかった石破総理。この国のかじ取りをどう担っていくのか。そのカギを握っているのが、躍進した国民民主党です。連立与党入りはあるのか、玉木代表に直接聞きました。
自民大敗 小泉選対委員長が引責辞任
大敗から一夜明け、自民党本部では・・・
喜入友浩キャスター
「小泉選対委員長が自民党に入りました。固い表情で下を向きながら今、部屋に入って行きました」
石破総理は一点を見つめていました。
自民党は191議席、公明党は24議席と大きく議席を減らし、過半数に18議席届きませんでした。与党の過半数割れは15年ぶりです。
公明党は石井代表自身も落選しました。
公明党 石井啓一代表
「バックグラウンドとしてはやっぱり政治とカネの問題で厳しい逆風であったと」
重苦しい雰囲気の中、役員会で石破総理はこう呼びかけたといいます。
「こういう時こそ結束していこう」
役員会のあと、小泉選対委員長は…
自民党 小泉進次郎選対委員長
「選対委員長として、この結果の責任を受けて職を辞しますと。その辞表を提出し、受理していただいた」
引責辞任したことを明かした小泉氏。
喜入キャスター
「その囲み会見の後方で石破総理が自民党本部をあとにします」
石破総理は足早に去っていきました。
自民党 小泉選対委員長
「政治のカネの問題に未だ決着をつけられず、そのまま選挙に向かってしまった。国民の皆さんにご理解を得られるような環境を作ることができなかった」
選挙終盤に発覚した「非公認」の候補者側への2000万円の振り込みについては…
喜入キャスター
「2000万円支給の影響はどう見ていますか?」
自民党 小泉選対委員長
「選挙結果は振り返って、たらればを言えばきりがない。選挙は、政治は結果が全て。そしてその結果を責任を取るのは、私はその役割にあるものだと思う」
党内からはこんな声も・・・
自民党 中堅議員
「小泉さん1人辞めて済む問題じゃないよ。石破さんが辞めないと党内の収まりがつかない」
退陣論も…石破総理は続投意向
午後から会見に臨んだ石破総理。写真撮影の際には笑みを浮かべつつ、表情は固いままでした。
会見では続投の意向を示したうえで、政策活動費の廃止などの「改革を行う」と表明しました。
石破茂総理
「政治とカネについては、さらに抜本的な改革を行っていきます。政策活動費の廃止、旧文通費の使途公開・残金返納、改正政治資金規正法に基づく第三者機関の早期の設置といった政治改革について、党派を超えた議論を行い、速やかに実現をはかっていく必要があります」
裏金問題をめぐっては、非公認となるなどして選挙に挑んだのが10人。このうち3人が無所属で当選しました。追加公認するかを問われた石破総理は・・・
石破総理
「追加公認につきましては、今回の選挙結果を踏まえつつ、広く国民の皆様方のご理解をいただくことができるのかどうか。そのことを基準に判断をいたしてまいります」
今後焦点となるのは、来月行われる予定の特別国会の総理指名選挙です。過半数に届かなかった場合、上位2人による決戦投票となり、いずれかの野党と連携する必要に迫られています。
石破総理は、野党との連立については「今この時点で想定していない」とした一方で、大躍進した国民民主党などを念頭に協力関係を築くことには含みを持たせました。
石破総理
「議席を大きく伸ばされた党がある。それぞれ党の主張に対して寄せられた国民のご理解、共感を謙虚に受け止め、取り入れるべきは取り入れるということに躊躇があってはならない」
立憲民主党「野田総理」誕生狙う
一夜にして大きく変わった政界の勢力図。公示前より50議席多い148議席を獲得した立憲民主党の野田代表は…
立憲民主党 野田佳彦代表
「本当に政治改革をやってほしいという思いを、結集することができたのではないかと思います」
また、2年前の安倍元総理の追悼演説で「勝ちっ放しはないでしょう、安倍さん」と演説したことを振り返り…
立憲民主党 野田代表
「ある種、自分を鼓舞する言葉でもありました。ここで終わりじゃなく、これから始まりだと。少なくとも政権交代前夜という言葉は、間違いなくリアリティが出てきたと思います」
政権交代に向け、今度は特別国会で行われる総理指名選挙での勝利を目指し動き出した野田代表。午前の役員会で野田代表への投票の協力をはじめ、様々な連携を他の野党に呼びかけていく方針を確認しました。
立憲民主党 野田代表
「(自公が他の野党に)声かけしてくる可能性というのは十分ありますのでね。そういうのも注意深くみながら、こちらのチームをどう作っていくかということで、心を砕いていきたい」
自公か立憲か、国民・玉木代表に聞く
そして今後の政局の重要なカギを握ったのが国民民主党です。
国民民主党 玉木雄一郎代表(26日)
「特に私たちは『103万円の壁』の問題を、これを今回絶対やりたいと思っている」
手取りを増やすという現役世代向けの政策を訴え、選挙前の4倍となる28議席を獲得しました。
与党と野党第一党、双方から連携を摸索される立場になったキーパーソンの玉木代表に小川キャスターが問いました。
小川キャスター
「与党から連立のオファーがあった場合、国民民主党としては乗らないと明確に否定していらっしゃる。これは変わらないですか」
国民民主党 玉木代表
「変わりません。何か大臣ポストがほしいとか一切ないので。ただ、これだけ政策を訴えて議席をいただいたので、言った政策は実現したい。特に『103万円の壁』を上げるというのは、早くやりたい。その政策について協力や合意をしていただけるのであれば、それはこちらも相応の協力はいろんな形でしていきたいと思っています」
一方で、立憲民主党と組んで政権交代を目指すかについては、“基本的な政策で一致しないと難しい”という立場を示しました。
国民民主党 玉木代表
「外交安全保障と、そして原発を含めエネルギー政策や憲法、こういった大きな柱となる、幹となる政策については一定の一致を図るべきではないかということは前の泉代表の時から同じことを申し上げている。そういうことについて、きちんとした一定の合意を得ることは、少なくとも権力の運用に携わる意思を持つのであればやるべきだと思います」
小川キャスター
「まもなく首班指名(総理指名選挙)が行われることになります。石破総理と野田代表の決戦投票となった場合どちらに投票されますか」
国民民主党 玉木代表
「今、現時点では『玉木雄一郎』と書きます。特段、両者に今の段階で積極的に入れる理由がないので。投じることによってこれが実現する、私たちが国民に選挙の際に約束した政策が実現するということがあれば入れる理由になりますけど、誰であっても理由がなければ、一票投じても意味がないので。その時は『玉木雄一郎』と書きます。これからまた11月の頭までいろんなことがあると思いますから、各党いろんな協議もしつつ、最終的に決めていきたいと思います」
立憲民主党は“自公の連立には入るつもりはない”との考えを示す日本維新の会にも働きかける考えですが…
日本維新の会 馬場伸幸代表
「私たち国会で常日頃、立憲民主党と接していますが、党内まとまっていないと感じます。そういうところをサポートすることも、できないということになります」
裏金“暴露議員”も落選
今回65もの議席を減らすこととなった自民党。大逆風の発生源となったのが、派閥の裏金問題です。
丸川珠代 元五輪担当大臣(落選)
「今回、私、比例重複がありません。小選挙区一本勝負ですのでどうかお助けください」
822万円の不記載があった丸川珠代元オリンピック担当大臣。安倍元総理の妻・昭恵氏や石破総理が応援に駆け付けましたが、1位に約3万票差で落選となりました。
丸川元五輪担当大臣
「私も言葉の限りを尽くして説明させていただいたつもりですが、それが信頼を得るには至らなかった」
132万円が不記載、無所属での戦いとなった宮沢博行氏。
無所属 宮沢博行氏(落選)
「政治資金の不記載から始まり、私の暴露発言、その後の私自身の不祥事が重なり、多くの皆さんの信頼を裏切ったことについて本当に深くお詫び申し上げる」
無所属 宮沢氏(去年12月)
「しゃべるな!しゃべるな!これですよ!」
裏金の問題について、安倍派から口止めされたなどと暴露した宮沢氏。しかしその後…
記者
「パパ活などの女性問題について何かしら記憶にありますか?」
無所属 宮沢氏(4月)
「はい、大変申し訳ございません。記憶にございます」
家庭を持つ身でありながら女性問題が発覚し、議員を辞職しました。選挙戦中、有権者からは厳しい声が…
男性
「やっていることは正しいんだよ。ただ女っ気悪いな」
無所属 宮沢氏
「はいすみません」
今回の選挙戦で感じたことがあるといいます。
無所属 宮沢氏(落選)
「家庭の大事さを改めて感じましたので、それも本当に後世に伝えていきたい。人生どん底だったんですけども、今こうして振り返ると本当に幸せだな」
非公認などを含め裏金問題にかかわった候補者46人は、18勝28敗の負け越しとなりました。裏金問題は投票行動にどの程度影響したのでしょうか。
40代女性(野党に投票)
「今までは自民に入れてました。2000万円(問題)とか裏金がなければ多分自民だったと思う。ちょっと入れたくないかな、今回期待してないなと思った」
20歳男性(白票)
「裏金問題もあって自民党に投票するのはふさわしくない。今回はどこも投票するに値しないかなと思ったので白票で投票した」
“逆風”押し返し…萩生田氏当選
一方で、逆風を押し返した候補者も。約7500票差の大接戦を制したのは萩生田元政調会長です。旧統一教会との関係に加え、2728万円の不記載で処分を受け、さらに選挙直前、自民党を非公認とされましたが、執念で当選を勝ち取りました。
無所属 萩生田光一元政調会長(当選)
「今回の勝利の中には、たぶん消極的な支持をしていただいた方もいると思う。本当に萩生田で大丈夫かと思った方もきっといると思います。その人たちがやっぱり萩生田でよかったと言っていただけるように、国会に戻って働いて働いて働いて、仕事をもって皆さんに信頼と証明をしていきたい」
現職の大臣もまさかの落選となりました。
牧原秀樹法務大臣(落選)
「ちょっと今まだ何も現実を受け止められないような感じです」
初入閣したばかりの牧原法務大臣です。
牧原法務大臣(15日)
「ここでもし負けてしまうと、史上最も短かった法務大臣になってしまいます」
埼玉5区で立憲民主党の枝野氏に6連敗していた牧原氏。前回は6000票差まで迫りましたが、法務大臣の肩書で臨んだ今回は3万票近く差を開けられての敗北となりました。無派閥の牧原氏はカネの問題とは無縁でしたが、公示直前、旧統一教会の関連イベントに秘書とあわせて37回出席していたことが明らかになりました。
牧原法務大臣
「(自分は)仕事はすごいできるなと思っていたから、もし法務大臣辞任ということになればそれは残念だなという思いはあるが、埼玉5区の有権者の判断なので、感謝して受け入れたい」
投票時「政治とカネ」どの程度考慮したか、みんなの声は
NEWS DIGアプリでは『投票時「政治とカネ」どの程度考慮したか』について「みんなの声」を募集しました。
Q.投票するにあたって「政治とカネ」の問題 考慮した?
「大いに考慮した」…68.9%
「多少は考慮した」…16.9%
「ほとんど考慮しなかった」…7.1%
「まったく考慮しなかった」…4.4%
「投票しなかった」…2.7%
※10月28日午後9時50分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは29日午前8時で終了しました
小川キャスター:
やはり政治とカネの問題、そしてその後の対応に対しての積もり積もる思いを一票にのせたという方も多くいらっしゃったと思います。
ここからは星さんに聞いてまいりますが、今回の総選挙の結果をどう分析しますか?
自公過半数割れの衝撃、2000万円問題が「トドメ」に
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
とりわけ2000万円問題。ある東京の自民党候補を取材していましたが、後半までは優勢だったのですが、2000万円問題が出て、逆転されて小選挙区で落選するってことになりました。その候補者はトドメを刺されたと言っていました。これ本音だと思います。
藤森キャスター:
トドメの2000万円問題について、小泉選対委員長が知らなかったと。こんなことあるんですか?
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
通常、お金の問題は自民党では幹事長と経理局長というラインで決めることが多いので、直接幹事長から聞いたことはないかもしれませんが、間接的には知り得る立場にいたと思います。
藤森キャスター:
だれが何のためにやったのか。やって得するのか。明らかにやったら大変なことになるってわかると思うんですけど。
小川キャスター:
どういうことだったのか。トドメを刺されたという声があるようですけど。
では、今後の政治の行方はどうなっていくのか。石破政権の最初の難関となるのがVTRでも触れました特別国会での総理指名選挙です。そこに向けて、どんな動きが考えられるのか、星さんによると3つのシナリオに絞られるということです。
政権枠組み「3つのシナリオ」
藤森キャスター:
まず1つ目が「自公の連立拡大」。自公に国民民主か維新のどちらかが連立に加われば過半数到達ということになりますが、国民民主は拒否していて、維新も今のところないということで、どうなんでしょう。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
まず国民民主は、玉木さんは政策本位だと言ってますけど、内部の労働組合系の議員からすると立憲と一緒にやってもらいたいなと、連合と立憲、そして国民民主で一体となって選挙やってもらいたいなっていう人が多いんです。維新は今回の選挙で公明党と自民党と大阪でもがっぷり四つで戦ったばかりですので、なかなか組みにくいという事情があります。
小川キャスター:
これが叶わなければ2つ目のシナリオになってくるわけですね。「少数与党のまま国会に突入」という形。これはどういうことでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
これは連携する相手が決まらないまま、今の自公のままで国会に突入するんですけど、ちょっとリスクがあるんですよね。
小川キャスター:
リスクというのは?
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
つまり総理指名選挙で、例えば自民党と公明党が今、過半数届かないわけですので、数人「造反」して石破さんと書かないとなると、自民党の石破さんの票がぐっと減って、立憲・野田さんが勝ってしまうという可能性を、自民党の中では危惧する声がありますね。
一方で、その後の国会運営でも、内閣不信任案を野党がまとめて出すとすぐ可決されてしまって。その場合はもう憲法の規定で総辞職か解散という厳しい選択になるということですので、非常に瀬戸際というか綱渡りの運営になるんですよね。
小川キャスター:
そして3つ目のシナリオというのが、「野田氏に政権を渡す」というシナリオです。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
立憲に他の野党がどんどんのってくると、数としては多いんですよね。ただ政策の隔たりが大きいものですから、そう簡単にはいかないだろうということなので、立憲の方が果たしてどういう形でそれをまとめていくか、この辺がちょっと見物だと思いますね。
小川キャスター:
この3つの中ではどちらが可能性として高いのでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
今のところ石破さん、今日もやっぱり連立の拡大にはやや否定的なことを言ってましたので、2番のシナリオで推移する可能性は大きいですね。
小川キャスター:
少数のまま国会へと。いずれにしましても今後、目が離せない状況になってきますね。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
そうですね。ただこういう状況だと政策が進まないんじゃないか、混乱が続くんじゃないかと懸念する人もいるんですけど、これは民意の表れですからね、今回の選挙の結果っていうのは。例えば自民党は今日、石破さんは政策活動費を廃止するっていうような事を言って、これはある意味で、民意を受けて政治が進んだということの表れですので、こういう政治状況をうまく使って、話し合いをオープンにして、重要な政策を次々と片付けていけば政治への信頼も高まってくる。そういう意味では一つのチャンスでもあると思いますね。
藤森キャスター:
チャンスにしてほしいですね。
小川キャスター:
本当に一強多弱と言われてきた長く続いてきた構図が崩れたわけですから、ここから本当に国民の声を柱として、知恵を絞る必要がありますね。
==========
<プロフィール>
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
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