自民候補“高市推し”で選挙運動 石破総理のポスターはゼロでも勝利 野党は三つ巴で票固まらず 東京12区【衆院選2024】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月1日 15時20分
安倍派・保守系議員、高市早苗氏が“火炎瓶事件”の日に応援入り
10月19日。
自民党本部に男が火炎瓶を投げ込み、総理官邸に車で突っ込もうとした事件が起きたその日の正午、高市早苗・前経済安保担当大臣の姿は東京北区・赤羽駅にあった。
厳重な警備の中、衆院選東京12区の自民党候補・高木啓氏の応援に駆けつけたのだった。
300人を超える聴衆に対し、高木氏の外務政務官の経歴を引き合いに外交・安全保障の重要性や、同じ積極財政派として経済成長などを訴えた。
安倍派に所属していた高木氏は、高市氏が顧問を務める自民党・保守系議員のグループ「保守団結の会」に参加し、9月に行われた総裁選でも高市氏の選対に入っていた。
選挙事務所の外観には、高市氏の顔写真やキャッチフレーズを大きく掲示し、石破総理のポスターは1枚もなかった。
ある選対関係者は「石破さんの批判をしているわけではない。ただ“高市推し”の潔さで戦う。総裁選の党員票も東京では高市さんが1位だったし、保守票を固めたい」と話す。
高市氏との距離の近さを前面に出す選挙戦スタイルに、他候補の陣営は「違和感しか感じない。衆院選の後に、自民党内で抗争でもするのかと思う」と揶揄した。
27日に行われた投開票の結果は、高木氏の当選。
初の小選挙区での出馬のうえ、“裏金”はなかったものの安倍派に所属し、逆風と言われていた中での勝利だった。
主戦場「北区」で自民が仲間割れも、公明党の“団体票”固め勝利へ
区割り変更に伴い、東京12区は北区全体と板橋区の一部を含む。主戦場は北区となった。
高木氏は北区出身で、北区議と北区選出の都議を30年近く務めた経歴を持つ。圧倒的な地盤を持つものと思われていたが、北区特有の事情が懸念された。
今年4月末、北区議会の自民会派が分裂。他候補の陣営はこの状況を「自民党の区議たちは、一枚岩になって高木さんを応援できないだろう」と好機と捉えていた。
しかし冒頭に挙げた高市氏による応援演説には、コロナ療養中だった大沢議長を除き、自民党区議の全員が参加。
高木氏の陣営幹部は「それぞれ色々と思うところはあるかもしれないけれど、結局みんな選対に入って一致団結している」と自信を見せた。
また北区はこれまで、公明党の太田昭宏元代表や岡本三成政調会長(今回は東京29区から出馬)を選出してきた選挙区で、公明党の組織力が強い。
高木氏の選対幹部は「北区の自民党はこれまで、公明党の候補を相当応援してきた。“恩返し”じゃないけれど、今回は公明が自民をしっかり支援してくれるはず」と期待を寄せた。
実際に太田元代表が高木氏の応援演説に入るなど、陣営は自公の連携を公然と示した。
ある選対関係者は「公明党がかなり動員していて、1票単位で把握しているようだ。(報道)各社の調査で高木さんがリードしている理由かもしれない」と公明党による“団体票”の強さを示唆した。
野党候補は三つ巴で票が分散、数少ない“生き残った安倍派議員”に
一方、「自民党は公明党や業界団体の固まった票からは伸びない。自分たちは街頭に立って票を増やす」と対抗していた日本維新の会・阿部司氏の陣営。
維新幹部からは「東京の小選挙区で唯一勝てる可能性があるのは阿部司だ」と期待が寄せられていたが、結果は2位。
比例復活当選となったものの、小選挙区では敗れた。
陣営は「立憲(民主党)の候補が出ない分の票を取り込みたい」と浮動票の獲得を狙っていたが、他の野党候補にも分け合うこととなった。
国民民主党から出馬した大熊利昭氏は、党の全国的な追い風を受け、終盤にかけて票を伸ばした。
維新・阿部氏の陣営幹部は「地元の人たちに話を聞いたが、『維新は兵庫県知事問題など、内輪揉めをしていてイメージが悪いので、国民(民主)に入れた』という声が結構あったようだ」と党全体への逆風の影響があったと分析する。
また北区は、立憲の区議が4人である一方、共産党から7人が選出される(※都議補選出馬のため1人が退職し、現在は6人)など、共産への一定の支持基盤がある。
その上、立憲候補が出馬しなかったことで、立憲支持層の一部は、共産党・田原聖子氏に流れたとみられる。
こうして野党票がバラバラで固まらず、得票率はそれぞれ20%〜25%と三分された一方、高木氏は約33%(約68000票)を獲得した。
先の総裁選で高市氏の支持に回った多くの安倍派議員が落選する中、勝利を収めた高木氏。
自民党が歴史的大敗を喫し、既に「ポスト石破」の名前が取り沙汰されている。
高市氏による選挙応援を受けた高木氏が、今後はどのように国政で高市氏を支援するのか、注目される。
TBSテレビ 「報道1930」ディレクター
岩本瑞貴
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