一体何が起きていた? 兵庫県知事選 斎藤前知事 再選のワケは「SNS」…各世代 投票の理由は?【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月18日 21時39分
失職して出直し選挙に臨んだ斎藤元彦前兵庫県知事。再選を果たしました。急速に支持を伸ばした背景には、何があったのでしょうか?
知事選 一体何が起きていた?斎藤前知事 再選のワケ
良原安美キャスター:
17日に投開票が行われた兵庫県知事選挙。投票率は55.65%と前回を大きく上回り、開票の結果、斎藤元彦 前知事が111万3911票を獲得し、2位の稲村和美 前尼崎市長に13万票以上の差をつけて「再選」を果たしました。
井上貴博 キャスター:
選挙期間中は放送法の規定によりテレビでの選挙報道が激減します。私としてはむしろこの選挙期間中こそ選挙報道すべきだという思いがあります。今回の選挙について尼崎市の松本市長はどのようにご覧になりましたか。
松本眞 兵庫県尼崎市長:
選挙前は斎藤前知事の文書にまつわる問題一色の報道でした。私の地元でも斎藤さんに対する非常に厳しいご意見がたくさんありました。
しかし立候補表明をしてから、だんだんとネット上で『斎藤さん頑張れ』と応援する声が大きくなり、支持を得るようになりました。これが当選に繋がったと受け止めています。
井上キャスター:
今回の選挙では県内29市長による「市長会」の有志22人が稲村和美 前尼崎市長の支持を表明しました。これについてはマイナスに流れたような、闇の部分のように見えてしまった気がします。
松本眞 兵庫県尼崎市長:
大変厳しいご指摘をいただいていると思っております。それぞれの市長がそれぞれの思いで表明したもので、しっかりと反省していかなければいけないと思っております。
私が稲村さん支持の表明に至ったのは「稲村さんのSNSの対応」です。例えば『外国人参政権を進める』『極左である』など様々な情報拡散に、稲村陣営がしっかりと対応できる体制がなかった。さらに稲村さんのSNSアカウントが凍結されるなど、情報発信の面で非常に課題があったからです。
ホラン千秋 キャスター:
今回の選挙において『情報』がどのように作用したのでしょうか。
社会学者 日本大学 西田亮介教授:
今回、30代と40代で投票行動が分かれた印象を持ちました。この区分はテレビの視聴時間とインターネット、インターネット動画を利用している人たちを足し合わせたものの合計が変わる世代です。
これはNHK放送文化研究所のデータと重なるのですが、もしかすると仮説にすぎませんが「インターネットを中心に情報を得ている世代」と「テレビや新聞をまんべんなく見ている世代」そのあたりが重なるのではないかと思います。
斎藤前知事 再選のワケは「SNS」各世代 投票の理由は
良原キャスター:
出口調査でも10代、20代、30代は6割以上が斎藤氏を支持しています。それより上の世代も斎藤氏を支持している方が多くいる印象を受けます。
【斎藤前知事への投票なぜ?】
20代学生「パワハラとかいろいろ調べたら、あることないこと言われていた。ネットとかYouTubeとかそれも本当かわからないけど、本当っぽいものをしっかり見て考えました」
40代主婦「友達から送られてきた斎藤さんに関する情報、YouTubeなどを見て投票を決めた」
70代主婦「テレビで一方的なことばっかり言っていたから、地元での演説を聞いて決めました」
ホランキャスター:
掲げている政策が自分にとって良いのか悪いのか、評価は人によって変わります。また何が事実として起きていたのか真偽を確かめるのも情報が非常に多く難しいです。
社会学者 日本大学 西田亮介教授:
そうですね。多くの人は『わからない』ということにとどまりにくい。「このように考えたい」「これが真実だと思いたい」そのような動機づけを持っていることにも注意をするべきだと思います。
その一方で、放送の場合、『放送法の規律』と『事業者の表現の自由』のせめぎ合いの中で伝統的に表現が難しいと言われています。そこをうまくネット側に隙を突かれたのか、そういうところがあるのか、かなり確信犯的な介入というのがなされている印象を持っています。
井上キャスター:
今回は単にメディアの敗北という単純な構図ではないと思っています。私個人的にはマスコミがいかに信用、信頼されていないことの一つの表れだと感じています。
今後も加速していくでしょうし、皆さんのご批判も受け止めているのですが、多様なメディアから情報を得て、1人1人が取捨選択していくことはあるべき姿なのではないでしょうか。
社会学者 日本大学 西田亮介教授:
理想ですが、とても難しいことだと思います。テレビの場合は多くの人たちが制作に関わって様々な裏取りがなされています。
一方でネットは特定の政治家や政党が何か言ったとしても、意図的に間違えていたりすることさえあるわけです。しかしそうしたものは「直接自分は見聞きしているからこちらが正しい」と思ってしまうのです。
そのときに、テレビよりも普段見慣れているインフルエンサーやYouTuberの人たちの方を信頼したくなる。その感覚は若い人に限らず多くの世代に広がっている印象を持ちます。
井上キャスター:
若い世代に限らないのですね。今後、選挙のやり方などが変わるかもしれません。この議論を松本市長はどのように見ますか?
松本眞 兵庫県尼崎市長:
ネットにしっかり対応できないと選挙に勝てないという状況が、これからさらに強くなると思います。
選挙は短期決戦です。最終的にはネットの世界もファクトチェックがなされて、デジタルの中での民主主義が起きると思うのですが、ネットの中で一時的にハックのような状況を作ることによって、風を作ることもできるようになってきていますので、短期決戦の中で、それぞれの陣営がきっちり素早く対応できないと厳しくなってくるなと思っております。
SNS上での情報の真偽は?
良原キャスター:
今回の選挙で次点となった稲村候補は開票後の会見で、知事選の争点について次のように振り返りました。
稲村和美氏
「候補者の資質や政策、そういったことを問う選挙というより、何を信じるかという非常に大きなテーマの選挙になった」
「“何と向かい合っているのか” 違和感があったのは事実。斎藤候補の言葉を借りると既得権益であったりと戦おうとした結果、不信任に至ったというストーリーと言いますか」
ホランキャスター:
今回の選挙だけではなく、大統領選など様々な場所で、これが大きなテーマになってきているような気がします。
社会学者 日本大学 西田亮介教授:
あくまでイメージに過ぎないわけですが、「既得権益」と「改革」という構図、フレームを作るといった選挙運動が増えている印象を持っています。
ただしそれが事実かどうかということについては十分精査しないとわからないということだと思います。
井上キャスター:
今回、結果的に斎藤前知事は多くの民意を得ることができました。今後、斎藤前知事はご自身を全否定していた議会と向き合うことになります。
その中で忘れてならないのは百条委員会で、最終報告がなされようとしている『元局長の自殺の原因』です。ここをいかに包み隠さずクリアにしていけるのか。そこが大変重要な肝だと思います。
社会学者 日本大学 西田亮介教授:
同時に、まだわかっていないということも重要だと思います。さらに司法の場で判決が確定したわけでもない大変曖昧な状況です。その中で多くの有権者たちは、意思決定を迫られる局面にあったのでネットを多く見てた。ということだったのでしょう。
松本眞 兵庫県尼崎市長:
今回、百条委員会の結果が出ていない中での選挙でした。実際に有権者に聞くと「何が真実かわからない」という声をたくさん聞きました。
ですので、今回の選挙は「よくわからないけど、政策を頑張っている斎藤前知事にもう1回頑張ってみたら」という評価になったと思います。
そういう意味で、メディアや有権者の皆さんが今後この何が真実かわからないというところを、どのように向き合っていくのか。それぞれのご判断になっていくのではないでしょうか。
==========
<プロフィール>
松本眞市長
兵庫県尼崎市長
県知事選では稲村候補を支援
西田亮介 さん
日本大学教授 専門は社会学
政治家の情報発信やネット選挙などを研究
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