「10年後には給料は倍に、いや4倍に!」今と何が違う所得倍増計画 -1960年【TBSアーカイブ秘録】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月22日 7時0分
物価高の今「給料手取りアップ」こそ誰もが求める政策でしょう。1960年に手取りアップどころか「給料倍増」をうたった政策がありました。池田内閣の「所得倍増計画」です。あの頃と今、何が似ていて何が違うのでしょう。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)
「安保よりも経済」からはじまった
1950年代後半「新安保条約強行採決」で国会は荒れに荒れていました。岸内閣は責任を取って退陣、その後を引き継いだのが池田勇人内閣です。
自民党には大逆風が吹いていました。
4年後には東京五輪もひかえており、国民の生活水準はまだ十分とはいえず、求められていたのは「分かりやすい国民の希望」。そんな時代でした。
第58代内閣総理大臣池田勇人首相が、そんな世情にぶちかましたのが「所得倍増計画」だったのです。
実質経済成長率7.2%に!
池田内閣の目標期限は10年でした。10年でGNP(国民総生産・現在のGDPに近似)を2倍にするというのです。この目標を達成するためには、毎年7.2%の経済成長を遂げねばなりません。
彼はこう言いました。
「生産が伸びれば所得が増加する、所得が増加すれば(所得の中の税負担が減り)減税となる、減税すれば貯金をする、貯金をすれば(金融機関を通して)工場におカネがまわる、雪だるま式であります」(新政策発表大講演会1960年9月)
重点政策は何か?
はたしてそんなにうまくいくものか。うまくいくためには前提がありました。
まずは産業基盤の整備です。高速道路や新幹線などの交通インフラ、電力や通信インフラの強化をしました。
次に産業の高度化です。製造業の近代化を進めるための技術革新と、労働生産性の向上です。
さらに貿易の自由化でした。ケネディ大統領ともサシで話し合い、国際競争力を高めるための輸出を促進させようとしました。
そして、国民皆保険・皆年金制度の確立や、教育への投資拡大。さらには地域間の経済格差を縮小するため、地方の産業振興に取り組みました。
つまり先進国としての戦後日本の基盤は、すべてこの期間に出そろったのです。
結果は「吉!」と出た
じつは池田内閣が「所得倍増計画」をぶち上げた際、多くのエコノミストやマスメディアは「そんなことできるわけがない」と冷笑したのです。しかし、結果を見れば、10年でGNPは倍増どころか4倍になっていました。
高度成長を成し遂げ、国民は「三種の神器」や「3C」を買い求めるようになり、日本は1960年代末には世界第2位の経済大国にのし上がりました。いわゆる「先進国クラブ」OECDに加わったのもこの頃です。
今と何が違うのか
一方の現代です。
この30年というもの、所得倍増どころか、日本人の所得は一向に上がりませんでした。
単純にあの頃と較べることはできませんが、何が似ていて何が違うのでしょう。
自民党に逆風が吹いているのは同じ。国際社会が戦争への危機感を持っているのも同じです。格差が拡がり、貧困が問題になっているのも(レベルの差はありますが)割合似ています。
しかし、何が違うって、圧倒的なのは、次の部分でしょう。
人口増加中の60年代と、人口減少中の今。若い人が多かった60年代と、高齢化の進む今。
何より「追いつけ追いこせ」の60年代に較べて、今の日本は「守り」に入ってしまっています。
所得倍増計画の「意義」
池田内閣の「所得倍増計画」は、戦後日本の経済発展を決定づけ、国民の生活水準を飛躍的に向上させました。しかし、それ以外にもじつは「精神的」な意義があったといわれます。
それは天下国家を武士的に語るのではなく、経済つまり商人的な金勘定がこれからの日本を決定づけるのだと、国民に印象づけたことです。そういえば「エコノミックアニマル」などという揶揄の言葉が生まれたのも、この政策の直後からでした。
この記事に関連するニュース
-
【年収の壁】経済対策に「103万円の壁」引き上げ明記で与党と国民民主が合意の一方で地方は税収減懸念…静岡も
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年11月21日 17時16分
-
「103万円の壁」撤廃は実現可能か? 国民民主党玉木雄一郎代表が疑問に答える
Japan In-depth / 2024年11月13日 0時32分
-
玉木代表vs“ザイム真理教”「103万円の壁」「トリガー条項」どうなる?
RKB毎日放送 / 2024年11月8日 16時16分
-
経済学の権威が断言「国民民主党の目先の手取りアップ策では、国民の暮らしは一向に上向かない」
プレジデントオンライン / 2024年11月2日 8時15分
-
「103万円の壁」撤回は実現するか 国民・榛葉幹事長に聞く
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年11月1日 19時38分
ランキング
-
1「死んでいるアヒルが増えている」 埼玉・行田市の農場で高病原性鳥インフルエンザ疑い 埼玉県内では今年初
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月24日 22時8分
-
2名古屋市長選挙、広沢一郎氏が初当選…河村たかし前市長から後継指名
読売新聞 / 2024年11月24日 21時49分
-
3金山労働者の追悼式、初開催=韓国側は不参加―新潟・佐渡
時事通信 / 2024年11月24日 16時25分
-
4「自爆営業」はパワハラ、厚生労働省が防止法指針に明記へ…企業へ対策促す
読売新聞 / 2024年11月24日 21時13分
-
5三笠宮妃百合子さまの通夜営まれる 秋篠宮ご夫妻ら参列
毎日新聞 / 2024年11月24日 19時32分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください