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日本企業の東南アジア進出~受け入れられたのは“あの商品”や“昭和戦法”!?いま企業が狙う海外での戦略とは…【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月17日 16時27分

TBS NEWS DIG

新たな視点と独自取材でお伝えする「eyes23」。いま東南アジアで日本企業の商品やサービスが大ヒット!?その理由は“昭和戦法”。シリーズでお伝えする「日本経済」の“いま”。第1回目は「ニッポン脱出」についてです。

「将来に不安ない」明るいアジア

東南アジアの玄関口・ベトナム。2023年、人口が1億人を突破しました。

道路には、溢れんばかりのバイク。街は活気に満ち、街頭インタビューも勢いが違います。

30代・男性
「マツダのCXー5を買いました。約700万円でした。外車は関税がかなりかかるから、高かったです」

30代・男性
「(給料は)以前は月収1万7000円でしたが、今は30万円に上がりました」

それもそのはず。ベトナムは経済成長が著しく、世界が不況に陥ったコロナ禍でもプラス成長しました。

20代・男性
「(将来に)不安はないです。私もまわりも仕事がうまくいっているので」

20代・男性
「貯金はしていないです。将来稼げる自信がありますから」

未来は明るいようです。

いち早く“ニッポン脱出” ベトナムでトップシェア

ホーチミン市内のスーパーで、目を引くのは袋麺の多さです。実は、ベトナムは一人当たりのインスタント麺の年間消費量が、約81食で世界1位(2023年 世界ラーメン協会)。

なかでも、日本の老舗食品メーカーのエースコックは、2023年、ベトナムで即席麺シェア4割を達成。中でも、一番愛されている商品が、日本語で「好き好き」という意味の「ハオハオ」(約30円)です。

女性
「1週間に2回か3回は食べます」

男性
「とても好きだから、旅行に行く時も持って行きます」

エースコックは、いち早くベトナムに進出し、2000年に「ハオハオ」の販売を始めました。そして、今ではベトナム国内に11の工場を持つまでに成長しました。

なぜベトナムなのか?

若い胃袋は希望 日本の食品会社

エースコックベトナム 金田啓生 代表取締役社長
「1990年代は日本の即席麺市場が、少子高齢化に突入して人口が減り始めた。若い人のパワーというのがベトナムにはある」

これは日本とベトナムの人口ピラミッドです。日本の平均年齢が49歳なのに対して、ベトナムは32歳。若い胃袋は魅力的なのです。

飲食店を経営しているグエンさん一家にとって「ハオハオ」は常備品で、食べ方にもこだわっています。麺と同封のスープを入れた器に、牛肉をいれて、さらに…

グエン・ハイさん
「卵を入れます」

タマネギとパクチーを入れて、お湯を注ぎふたをして3分待てば完成です。

グエン・スアンさん
「日本のメーカーだとは知らなかったです。美味しいから食べているだけです」

ただ、ベトナムの麺といえばフォー。街中の至る所に店が並ぶ外食文化。

そこでエースコックは全国を回って地域ごとの特徴的な味をリサーチし、ベトナムの人が親しんだ外食の味を再現したのです。

エースコックベトナム 金田啓生 代表取締役社長
「『ハオハオ』をケースで在庫をストックしていただいている」

平均年齢が若い国にこそ、日本企業の生きる道があると言います。

エースコックベトナム 金田 啓生 代表取締役社長
「現地に根差した味、ただし品質と製造は日本の技術ですよ、というコンセプトは、もっと世界中にチャンスはあると思っています」

平均27歳!急成長カンボジア

“人口ボーナス”を迎えている東南アジア。ベトナムよりもさらに若いのが、お隣の国・カンボジアです。

カンボジア国民の平均年齢は27歳。人口ピラミッドを見ても、日本との差は歴然です。そのカンボジアに進出しているのがイオンモールで、すでに3つもできています。

中に入ってみるとその作りは日本そのまま。日本ブランドへの信頼と憧れから、あえて“そのまま”が好評だといいます。

男子大学生
「1週間に2・3回は来ています」

女子大学生
「ここに来れば欲しい物がなんでもそろいます」

「牛角」など、日本の外食企業があちこちに。街角には、うどんの「丸亀製麺」、長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」も進出。看板はあえての日本語表記です。

ちなみに味付けのほうは、現地に寄せています。

リンガーハットの店員
「日本よりも味は薄いかもしれません。カンボジア国民は、しょっぱいのを好みません」

東南アジアの魅力は若さ以外にも。日本の平均世帯人数は2.12人(2024 年厚労省)ですが、ベトナムは3.6人(2023年 ベトナム統計総局)です。

その“家族”を狙って、大当たりした日本企業が…

大家族狙い “昭和戦法”で大ヒットのホテル

向かったのはアジア屈指のリゾート地、ベトナム・ダナン。世界中の旅行者から注目される観光地に日本から進出したのが…

日本の団体・家族旅行を、半世紀以上にわたり牽引してきた『ホテル三日月』。2003年に「黄金風呂」が登場し、後に盗まれたことが話題に。

しかし、コロナ禍では武漢からのチャーター機を受け入れた後、2週間で2万7000人の予約キャンセルが発生。国内赤字を食い止めるため、2つの施設を譲渡していました。

そんな中、2年前120億円を投じてベトナムに5つ星ホテルをオープンしていたのです。総面積3万7000坪、東京ドーム約2.5個分です。

施設の入り口では、CMでお馴染みの曲でお出迎え。かつて、日本が好んだ大型ホテル。それをいま、昭和のような成長期のベトナムに持ってきたら大当たり。いわば「昭和戦法」の勝利です。

利用客
「温泉はいいですね、日本の景色を感じます」
「とても快適です」

ターゲットはかつての日本と同じく“親子3世代”。多くの家族が団体で訪れていました。

女性・利用客
「ここは楽しいです。家族が楽しめる様々な仕掛けがあります」

さらにウォータースライダーを、1億5000万円で新設しました。

そして宴会場では、会社の社員旅行。その光景は、高度経済成長期の日本のようです。

男性・利用客
「料理がとても美味しくてとても幸せな時間です。年に数回来たいです」

ダナン三日月 益子美智緒 会長室室長
「日本が歩いてきた道をこのベトナムも歩いていくんだなというふうに思っています。これからもっともっと観光も消費も増加して、みんなで楽しく出かけられるという姿を強くイメージしている」

そして現地のスタッフも…

ダナン三日月 グウェン・フー・クインさん
「ベトナムは、本当に若い人がいっぱいいるから、仕事をいっぱいしたいので、日本の企業が来たら皆仕事ができるようになると思う」

少子高齢化や人口減少に直面する日本。今こそ強みを活かし、出ていく時かもしれません。

“ニッポン脱出” 海外で稼ぐのはアリ?

小川彩佳キャスター:
国外に商機を見出すということですが、斎藤さんは現在ドイツにいらっしゃって、国外から日本を見て感じることはありますか?

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
先日も、家族でラーメンを食べに行きましたが、円安の影響で2万円くらいしました。私もこれ見ながら、脱出しようかなと考えていました。

脱出のネックは、例えば日本はドイツと比べてもご飯が美味しいし、安いし、「ラーメン二郎」とか食べたくなるんですよね。日本は、そういうのを今まで内向きにしかやってこなかったけど、世界に向けて本気を出せば、まだまだビジネスチャンスはあると思います。

私が注目しているのは、「ホテル」や「食」もそうですが、小林よしのりさんの漫画で「おぼっちゃまくん」が80年代の人気作品としてありますが、今インドで「おぼっちゃまくん」が流行っているんです。

今度その新作アニメが、インド全土で放送されるようになっています。インドは人口が10億人いるので、小林さんはもう大富豪ですよね。

そういうコンテンツも海外でかなり伸びしろがあるので、チャンスはたくさんあると思います。

小川彩佳キャスター:
そういった話を伺うと嬉しい一方で、VTRを見ていても逆に日本に残っていたら未来があるのかどうかも気になってしまいます。斎藤さんもドイツにずっと住み続けたいなと思われますか?

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
チャンスは海外に出たほうがあると思うので、やる気のある若い人が外へ出ていくというのはいいと思います。

ただ、日本もそれなりに安定・安全だし、食べ物もおいしいので快適ではあります。だから、成長リスクをとるか、どっちをとるかですよね。

ベトナムのようには日本はならないけれど、粛々と縮んではいくけれども、のんびりライフを送ってみようといった流れになるのではないでしょうか。

もしかしたら、ドイツも含めた先進国はだんだん成長しなくなっていくので、そういった新しい日本の価値観・脱成長というのが、逆に世界に将来的に売り出せるかもしれないと考えています。

TBSスペシャルコメンテーター 星 浩さん:
日本はこれまで低金利が続いて、ぬるま湯状態でイノベーションが起きない状態のところに、世界は情報革命になり、取り残されてしまいました。

ですが、ここにきてDX政策や金利も上がってきて、チャレンジ精神も出てきたので、この辺が新しい芽になって広がっていくといいですよね。

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〈プロフィール〉
斎藤幸平 さん
東京大学准教授 専門は経済思想・社会思想
著書『人新世の「資本論」』が50万部突破

星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター 
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年

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