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“お買い得”日本企業 円安以外の理由も…人材や技術を評価し再成長へ 果たして買収は悪なのか!?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月18日 14時48分

TBS NEWS DIG

最近、街でよく見かけるコインランドリー。日本の技術が詰まった洗濯機ですが、開発した老舗メーカーが今年、スウェーデンの会社に買収されました。いま、海外から見ると日本の企業は“お買い得”なんだそうです。そこには円安だけではない理由も。

なぜ買収?ハワイアンズ取得のファンドを初取材

まるでハワイのような、福島県いわき市の「スパリゾートハワイアンズ」。軽快なリズムに、弾ける笑顔で魅了するフラダンスが目玉です。

2024年、突然買収が発表されました。仕掛けたのは、アメリカの巨大投資ファンドです。百貨店の「そごう・西武」や「アコーディア・ゴルフ」などを続々と買収していて、抱える顧客は1100万人規模。一体、なぜ買ったのか?

16日、買収成立後ファンドの代表が初めてテレビの取材に応じました。

フォートレス・インベストメント・グループ 山下明男 日本代表
「60年の施設の歴史がある。こんなの今から作れないですよ。皆さん、生活感覚も変わってきて、海外行くよりも国内でゆっくり過ごそうと。磨けば光ります、まだまだ光ります」

ハワイアンズは、高度経済成長期に日本初のテーマパークとして開業。オープンから5年後、1970年には年間来場者数155万人を記録。2025年に60周年を迎える今も、毎年100万人が来場しています。しかし、課題も抱えていました。

常磐興産 営業企画グループリーダー 國井秀文さん
「(屋根は)創業当時から骨格が変わっていない。温泉のメンテナンスや館内の設備の維持、快適な空間の維持は難しい」

東日本大震災やコロナ禍で借り入れは膨らみ、老朽化した施設を修繕する資金はなく、財務の改善が必要でした。

買収額は140億円。海外から見れば、これはお買い得なのだそうです。

フォートレス・インベストメント・グループ 山下明男 日本代表
「フラガール、ダンサーの方々というのは本当にリソース。いないと会社が成り立たない。企業やホテル投資、施設かもわかりませんが、まだまだ興味あります」

今、外国企業による日本企業への買収が相次いでいます。2024年1月から9月までの金額で比較すると、2023年より17倍近く増加。11兆円に達し、過去最高となっています。

この要因の一つとなっているのが歴史的な円安です。7月には、1ドル=162円台目前まで迫り、セブン&アイもカナダのコンビニ大手から買収提案を受けました。

かつて日本は外国企業を「買う側」でした。1990年には、ニューヨークの「ロックフェラー・センター」を三菱地所が約1200億円で買収したことも。

ニューヨークの街の人(1989年)
「よそ者に買われてしまう」
「金があれば何でも買える、それがアメリカ」

時を経て今、「買われる側」に変化しつつある日本。では、買われると何が変わるのでしょうか。

大阪の老舗ホテル 「100億円超の大改装」外資で可能に

関西万博が迫る大阪では今、外資系ホテルが空前の建設ラッシュとなっています。老舗のホテルも沸き立っていました。

創業90年の「リーガロイヤルホテル大阪」は、かつて時の大統領も宿泊した「西の迎賓館」として知られ、今、開業以来の大改装中です。その資金を支えているのは外資です。

このホテルは、コロナ禍で多額の借金を抱えていましたが、2023年、アメリカの会社に「土地」と「建物」を買収されたのです。潤沢な資金で、1000室あるすべての部屋の内装を新しくしました。

リーガロイヤルホテル大阪 中山智子 総支配人
「135億かけるとこんなに変わっていくのかなと。100億を超えて改装をするというのは、(日本のホテルでは)基本的になかなかあり得ない」

洗濯乾燥機の開発会社が“ホットサンド機械” 現場で戸惑いも

ただ、買収されると企業として変化も求められます。

利用者
「早い。洗濯物を入れてボタンひとつで終わるのが一番感動」

創業74年を誇る「TOSEI」も、老舗の日本メーカー。世界で初めて業務用・洗濯乾燥機を開発した会社です。

TOSEI 池谷正義 静岡事業所長
「当然それまでは『洗濯機』と『乾燥機』は別のものだったのですが、一度入れたら、スーパーで買い物して取り出せばいいというのは、本当に画期的なことだった」

そこに目を付けたのが、スウェーデンの企業「エレクトロラックス・プロフェッショナル」です。2024年、約230億円で買収しました。

先週、東京・五反田の事務所に姿をあらわしたのは、スウェーデン企業の幹部たち。この日は、初めて共同で開く展示会の打ち合わせです。

打ち合わせは当然、英語で進みます。しかし、ベテラン営業担当者の井上さんは、英語はほとんど話せません。

TOSEI営業本部 井上文夫 副本部長
「ある日突然、外資系…」

求められる変化は製造の現場でも。長年顧客のニーズごとに合わせて製造してきましたが、利益を重視する買収側からは、性能などの均一化を求められています。

TOSEI 池谷正義 静岡事業所長
「カスタマイズして特殊仕様にも対応できるというところが強み。コストや品質に置き換えられない部分が絶対にあると思っているので、そこは守り続けないといけない」

さらに、営業の現場でも。この日、担当者が向かったのは東京・表参道のカフェ。

実は、このカフェで使用しているホットサンド用の機械は、スウェーデンの親会社がつくった看板商品の一つ。これを突如、日本市場に売り込むよう求められているのです。

TOSEI営業本部 井上文夫 副本部長
「初めは売れるかな?と思っていた。うちにない機械がいっぱいあるので、どれを日本に持ってきたら受けるのかなとか。海外では高くて売れていても日本とは事情が違いますからね」

この大・買収時代に、日本企業はどう立ちまわるのでしょうか。

“敵対的買収”は過去の話?真山さん「日本が宝の山とバレた」

藤森祥平キャスター:
2023年と比較すると外国企業が日本企業を買収する額が17倍ということですが、なぜ日本企業を買収するのでしょうか。

ハワイアンズを買収したフォートレス・インベストメント・グループの山下日本代表は「日本企業のポテンシャルが高く、私たちにとって宝の山」としています。つまり、日本企業の人材も技術も素晴らしいから買収するということですが、これは良いことだと捉えていますか。

小説家 真山仁さん:
「ポテンシャル」がキーワードで、つまり可能性があるのに企業の価値が安いのです。買収して、少し手を入れるだけで一気に価値が上がるような企業は、買いに入られます。

今の時代、潰れそうな会社をM&Aするというのは珍しく、「投資でもっと良くなり世界に広げられる」、「日本国内で利益が上がるのであればそれでいい」と可能性のある会社を買収するという考えが広がってきています。ネガティブな買収の時代は終わり、日本が「宝の山」だとバレたのだと思いますし、この動きはもっと広がると思います。

小川彩佳キャスター:
外資からの買収というと“敵対的買収”をイメージして不安に思う人もいると思いますが、今は、そういうことはあまりないということですか。

真山さん:
“敵対的買収”という言葉はあまりメディアに出てこなくなったように感じます。

日本製鉄がUSスチールを買収する際に大騒ぎになりましたが、結局、両企業にとってウィンウィンで、敵対していませんでした。ただ、USスチールの買収は、アメリカにとってシンボルのようなものを買われるのと同じなので、政府は「反対」していたわけです。つまり敵対というのは、もう“メンツの問題”になってきている。

逆に買収することで、いらないものを切り捨てるなどシナジー効果が起きて、両国の製鉄業が良くなることもあるでしょう。それによって被害を被る従業員はいるかもしれませんが、長く続くというのは企業の一つの使命ですから、多くの従業員を養うのであれば、よりM&Aをして強くなっていく必要があります。「世界に良いものを伝えませんか」という中に日本の企業が入り込んできたといえるでしょう。

日本企業が国内で儲かるだけで十分利益が出るのであれば、それでいいという考え方もあります。日本の経営者にはお金がないので、「お金さえあれば良くなる」のであれば(買収したいという企業は)いくらでも出てくるでしょう。なので、“買われる会社”は胸を張っていいと思います。

「それでも自分たちでやりたい」というのであれば、彼らに、投資をしてもらって経営は自分たちで続けたいと交渉するという方法があります。いわゆる株主になるだけなので、場合によっては「あなたたちが経営しなさい」というところも多くあります。これからは、交渉勝負の時代になるかもしれません。

『日本企業の買収』について「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『日本企業の買収』について「みんなの声」を募集しました。

Q.相次ぐ海外の日本企業買収 どう思う?

「業績が上がればいい」…4.4%
「仕方がない」…7.0%
「技術の流出・低下が心配」…61.8%
「リストラが心配」…10.8%
「企業文化の損失が心配」…13.3%
「その他・わからない」…2.6%

※12月17日午後11時20分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは18日午前8時で終了しました。

真山さん:
消費者はかなり得することになり、頑張っている人はより給料が上がるかもしれません。

(技術の)流出は確かにそうですが、会社の形が残れば技術もキープできます。グローバルな時代に日本だけにずっとしがみつくのは、もう時代遅れになっているでしょう。

小川キャスター:
この大きな変化の歪な流れにどう順応していくのか、発想の転換も必要になってくるのかもしれません。

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<プロフィール>
真山仁さん
小説家「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「疑う力」

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