人骨を拾い、遺体で遊ぶ子どもたち 中東シリアのアサド政権下で行われた“虐殺”の現場を現地取材【news23】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月18日 12時54分
中東シリアで14年続いた内戦は、子どもたちの未来に大きな影を落としています。虐殺や空爆が繰り返された町では、子どもたちが人の骨で遊ぶなど、信じがたい光景が広がっていました。(※映像には暴力的な描写が含まれます)
戦闘・虐殺に怯えた街は今?市民銃殺の現場
アサド政権が崩壊したシリア。
増尾聡 記者
「アサド大統領のポスターも焼かれたのか、至る所でアサド大統領の痕跡を消そうとする動きがあります」
首都ダマスカスの中心部から、車で15分ほどのところにあるタダモン地区にカメラが入りました。
増尾記者
「歩いていると目に入ってくるのは、完全に崩れた建物や、外壁もなく、コンクリート片がむき出しになっている建物ばかり」
タダモン地区は反体制派勢力などが一時拠点としていたことから、政府軍が度々激しい攻撃を加えてきた町。住民の脳裏には忌まわしい記憶が刻まれています。
タダモン地区に住む男性
「恐ろしいことが起きた。身元証明書で出身を調べたあと殺して遺体を埋めたんだ」
この町では2013年、政権側による虐殺が起き、一方的に“反体制派と関わりがある”と見なされた市民40人以上が一度に命を落としました。
インターネット上に流出した2013年の“虐殺”とみられる映像には、後ろ手に縛られ、連行される市民の姿が写っています。銃を持っているのは政権側の“情報機関員”だとみられます。
政権側の“情報機関員”に「走れ!」と言われ、市民は穴へ飛び込みました。その穴の中には、多くの市民が折り重なるように倒れています。
別の場面では市民が蹴り落される様子も…。
政権側は市民を銃殺し、遺体に火を放ったと伝えられています。
タダモン地区に住む男性
「裏切り者といわれ、常に殺される危険にさらされていた」
骨を拾い…「遺体で遊んでいた」戦禍を生きた子どもたち
増尾記者
「(虐殺の場所)ここら辺だったそうです」
虐殺の為に掘られた穴はすでに埋められ、今は道路になっていました。その場所では、子どもたちが駆け回る様子も見られました。
カメラを向けると次々に集まり無邪気な笑顔を見せてくれます。しかし、その笑顔とは裏腹に子ども達が私たちに身振り手振りで案内しようとしたのは…
増尾記者
「子どもがこうやって、『骨が落ちているんだよ』と言って、我々を案内してくれるんですね。荒廃していて今も人骨があらゆる場所に散乱している状況です」
放置されているのは、政府軍の空爆などで亡くなり埋葬すらされなかった人たちの骨です。この町のいたる所で目にする人骨。その数が14年にわたる内戦で犠牲になった市民の多さを物語っています。
タダモン地区に住む男性
「きのう、子どもたちが遺体で遊んでいた。(パレスチナの)ガザ地区やほかの国でもなかったことだ」
破壊や虐殺を日常的に見てきた子どもたちにとって、将来に希望を抱くことは簡単ではありません。
――将来、何をしたい?
「外国に行きたい」
――なぜシリアを出たい?
「シリアには何もないから」
――こうした風景を見てきたから?
「うん。ここで生きてきた」
――この場所が嫌い?
「好き。それでも外国に行きたい」
今後、シリアは子どもたちが希望を抱ける争いのない国へと生まれ変わることができるのでしょうか。
「映像を目に焼き付けて…」非日常が日常に変わる“戦争”のリアル
小川彩佳キャスター:
目を覆いたくなるような事実の数々ですが、これもシリアで起きていたことの一端に過ぎません。そして、子どもたちの中でこの経験がどのように育っていくのかと考えると本当に恐ろしい気持ちになります。
小説家 真山仁さん:
もう10年以上も内戦が続いています。まるで映画のセットのように、“人骨が落ちていてリアリティがある”と思いがちですが、これが現実に起きていることです。こういう風景を毎日見ていると、本来は非日常的な風景が日常になってしまいます。
例えば震災が起きて、被災地で倒壊した“悲惨な家”でも、時間が経てばその家の前で子どもは遊ぶようになります。「ひどい」「かわいそう」ではなく、ある時から非日常が日常になっていくものなのです。
そうした非日常を、子どもの“当たり前”にさせてはいけません。
今、情報はすごく早く入ってきますが、リアリティを感じません。今回のように初めて映像を見て、“こんなにひどいことになっているのか”と驚きますが、それでも信じることができません。
こうした景色を“非日常”と感じているときから戦争や内戦はあって、残虐な行為で多くの人が殺されていることを見ているのです。ただ“情報”として知るのではなく、戦争とはどういうことなのかを知る必要があるのではないでしょうか。
今回の映像を目に焼き付けていただき、単なる歴史的な事件ではなく、もう少し肌感覚で戦争を考えることをしないといけないのではないかと思いました。
小川キャスター:
そして心に留めて想像していくことが、次に起きてしまうかもしれない戦争の抑止に繋がっていくのかもしれません。
真山仁さん:
「平和は想像から始まる」という人がいますが、本当に大事な言葉だと思います。
==========
<プロフィール>
真山 仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「疑う力」
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