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【ニューイヤー駅伝】22年ぶりに揃うマラソン日本歴代トップ3の鈴木健吾、池田耀平、吉田祐也がチームのカギ握る

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月26日 6時0分

TBS NEWS DIG

2025年最初のスポーツ日本一が決まるニューイヤー駅伝 in ぐんま(第69回全日本実業団対抗駅伝競走大会。1月1日に群馬県庁発着の7区間100kmで実施)にマラソン日本歴代1~3位選手が揃う。

2時間04分56秒の日本記録を持つ鈴木健吾(29、富士通)、2時間05分12秒の池田耀平(26、Kao)、そして2時間05分16秒の吉田祐也(27、GMOインターネットグループ)の3人だ。これは2003年大会に高岡寿成、藤田敦史、犬伏孝行と、当時の歴代1~3位選手が出場して以来、ニューイヤー駅伝では22年ぶりのことになる。

1、2、3、5区への出場が予想される3人の走りが、各チームの順位に大きく影響する。そしてニューイヤー駅伝の先には、来年の東京世界陸上も見据えている。

◇ニューイヤー駅伝の区間と距離、中継所
1区 12.3km 群馬県庁~高崎市役所
2区 21.9km高崎市役所~伊勢崎市役所
3区 15.3km 伊勢崎市役所~三菱電機群馬工場
4区 7.6km三菱電機群馬工場~太田市役所
5区 15.9km 太田市役所~桐生市役所
6区 11.4km 桐生市役所~伊勢崎市西久保町
7区 15.6km 伊勢崎市西久保町~群馬県庁

吉田が東京世界陸上代表選考で一歩リード

2024年、男子マラソンの日本歴代2位と3位の記録が誕生した。記憶に新しいのは、12月の福岡国際マラソンに2時間05分16秒で優勝した吉田である。


中間点の通過は1時間02分58秒と、予定よりも20秒以上遅かったが吉田は落ち着いていた。「設定より遅かった分、余力を持てているとポジティブに考えていました」。古賀淳紫(28、安川電機)、ビダン・カロキ(34、トヨタ自動車)、そして27km過ぎに西山雄介(30、トヨタ自動車)が離れ始めた。30kmでペースメーカーが外れ、吉田とタデッセ・ゲタホン(26、イスラエル)の一騎打ちの展開に。そして31.6kmの折り返しを過ぎると吉田がリードを奪い始めた。

「中間点通過が予定より遅かったですから、記録は考えませんでした。それでも2倍にしたら2時間6分で、世界陸上の参加標準記録(2時間06分30秒)は出すことができる。自分のリズムを維持することだけを意識しました」

それが功を奏した。吉田は後半を1時間02分18秒と、日本選手の2時間6分未満のレース中最高タイムで走破。後半の強さを発揮することで日本歴代3位のタイムを叩き出した。

世界陸上参加標準記録突破者は吉田が3人目。今年2月の大阪マラソンの平林清澄(22、國學院大)が2時間06分18秒、9月のベルリン・マラソンの池田が2時間05分12秒を出している。だが代表選考という点では福岡国際マラソンと、同日の防府マラソンから始まる代表選考競技会の標準記録突破者が、選考競技会以外の突破者よりも優先される。

今後の標準記録突破者数次第ではあるが、青学大OB初の五輪&世界陸上代表に吉田が大きく近づいた。

日本選手過去最速ペースにも挑戦するつもりだった池田

池田は高速レースとして知られる9月のベルリン・マラソンに出場。2時間05分12秒の6位という成績だったが、後半で順位を大きく上げている点が高く評価できた。中間点通過が設定より遅かったが、福岡の吉田と同様に落ち着いて対処した結果だった。

「監督(元日本記録保持者の高岡寿成監督)からも外国のレースは、ペースメーカーが安定しないかもしれない、とアドバイスがありました。最初の5kmに15分(15分02秒)かかったことでイライラしていた選手もいましたし、ペースが上がったとき(20kmまでの5kmは14分28秒)や、給水でスピードに変化が生じたときは集団の後ろに位置して、多少差ができても自分のリズムで走ることを心がけました」

池田は中間点を1時間00分57秒で通過した第1集団ではなく、1時間02分25秒の第2集団でレースを進めた。20人近くが先頭集団で走っていたが、全員が最後までそのペースで行けるわけではない。池田は「落ちてくる選手もいる。第2集団のトップを取る戦い方」に徹した。中間点では23番目を走っていたが、30kmでは18位、35kmでは13位、40kmでは7位と順位を上げ、最後の2.195kmでは40km地点で50秒前にいた選手を逆転した。

ベルリンに同行した入船敏コーチによれば、主催者が設定した第2集団の中間点通過は1時間01分45秒だった。このタイムで前半を走った日本選手は、途中棄権したケースを除けば過去にいない。実際には1時間02分25秒と設定より遅くなったことで、「池田が余裕を持つことができた」と入船コーチ。「まだまだ行ける余地がある、ということです。次は今回の経験を生かした日本記録を狙うレースができると思います」

しかし1時間01分45秒の中間点通過をした場合も、池田にとって一か八か、という走り方ではなかった。池田自身はレース前に日本記録も意識していたが、高岡監督からは「日本記録への挑戦も応援するが、昨年のアジア大会の失敗(6位・2時間15分04秒)やケガでMGC出られなかった経験を踏まえて、まとめる走りを欲しい」と言われていたのだ。国際レースで一度、次につながる結果を残すことが重要だった。

池田は第2集団で走った中では2番目でフィニッシュした。2時間04分35秒の5位だったハイレマリアム・キロス(27、エチオピア)には先行された。池田が初マラソンだった大阪(23年2月。7位・2時間06分53秒)で優勝した選手である。

「35kmまではキロス選手とも一緒に走っていましたし、日本記録の35km通過も上回っていました」と池田。終盤の強さがあれば日本記録を更新できていた。そのために「駅伝を入れつつスピードを強化していきたい」と話す。

池田はトラックだけ、マラソンだけと考えず、走力全体をアップさせる成長の仕方を見せてきた。それが現れているのがニューイヤー駅伝で、2年前に当時の最長区間の4区で区間賞、前回も最長区間になった2区で区間2位。25年の元旦も走力アップした池田が見られそうだ。
 

鈴木は日本記録のときに近いシーズンの流れに

歴代2、3位記録が24年にマークされたのに対し、鈴木健吾の2時間04分46秒の日本記録は21年3月のびわ湖マラソン(現在は大阪マラソンに発展的に解消)と、3年半前の記録である。

22年の東京マラソンで2時間05分28秒のセカンド記録日本最高で走ったときも強さを感じさせたが、その後の鈴木は良い走りがない。同年のオレゴン世界陸上は新型コロナ感染で欠場し、23年のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)は途中棄権。今年3月の東京マラソンは2時間11分19秒で28位だった。

代表になれなかったが妻の一山麻緒(27、資生堂)は、東京五輪(8位入賞)に続いてパリ五輪代表を決め、鈴木は現地で応援した。
「五輪代表を逃したときは自分の無力感みたいなものを感じましたが、パリでオリンピックを見て、やっぱりこの舞台に立ちたい、オリンピックや世界陸上で日の丸を背負って戦う姿はカッコいいと感じました。もう一度挑戦したい気持ちが強くなりました」

来年の世界陸上選考マラソンでは、「日本記録くらいを出さないと選ばれないと思っています。しっかりチャレンジしたい」と、次に向けて気持ちが充実している。

そのために、チームとして一番の目標としているニューイヤー駅伝に全力で取り組む。

22年の東京マラソン以降は、世界陸上や五輪代表選考レース(MGCと東京マラソン)が続いた。故障も何度かある中で、出場しなければいけないマラソンが続いたため、腰を据えて練習する期間がとれなかった。「心身ともいっぱいいっぱいいでした。頑張りすぎた走りをしていましたね」

それがパリ五輪を逃したことで、立て直すことができた。
「(東京マラソンがあった)3月以降、立ち上げに少し時間はかかりましたが、夏前から継続して練習ができています。トラックから入って、チームの中で揉まれながら、チームの力を借りることで、リラックスした走りができるようになっています」

鈴木は入社した翌年(19年)に東京五輪選考のMGCがあり、その出場権も取る必要があり、トラックレース出場や、そのための練習ができなかった。チームメイトとトラックの練習をすることで、10000mの27分台を出し、21年ニューイヤー駅伝6区で区間賞も獲得した(チームも優勝)。

今年の東京マラソン後も同じようにチームで練習し、東日本実業団駅伝に出場し、12月1日には10000mで27分台をマークした。鈴木が再び、良い流れでニューイヤー駅伝とマラソンに出場する。
 

マラソン歴代1~3位選手はどの区間に登場するか?

池田は最長区間の2区が最有力だ。2区を任せられる選手が現れれば、スピードを生かせる3区という可能性もある。

池田は前述のように最長区間で区間賞、区間2位と快走を続けている。
「区間賞を取るために、ではなく、駅伝はチームのため、会社のために走りたい。任された区間でチームにしっかり貢献することが一番重要ですが、最近はエース区間を走ってきています。そういう区間で流れを変えたり、加速させたりする走りをしたいと思っています」

吉田は福岡国際マラソンを走ったダメージからの回復次第になるが、「前半区間になると思う」と福岡の翌日に話していた。GMOインターネットグループは今江勇人(26)が前回のニューイヤー駅伝、11月の東日本実業団駅伝と最長区間を任されている。東日本では区間賞も獲得したので、2区は今江の可能性が高い。吉田は1区か3区だろう。

東日本実業団駅伝1区での吉田は、3kmも行かないうちに集団から抜け出し独走、区間2位に40秒の大差をつけた。ニューイヤー駅伝では他チームも警戒してくる。東日本の再現は簡単ではないが、今の吉田は他の選手を寄せ付けない走りができるかもしれない。

吉田はパリ五輪マラソン6位入賞の赤﨑暁(26、九電工)ら、同学年選手へのライバル意識があることを話していた。“花の97年生まれ”と言われている学年で、太田智樹(27、トヨタ自動車)、相澤晃(27、旭化成)、伊藤達彦(26、Honda)、山下一貴(27、三菱重工)、浦野雄平(27、富士通)、羽生拓矢(27、トヨタ紡織)らが第一線で活躍している。

「駅伝の目標は優勝です。ライバルとなるチームのエースが同学年なので、僕が意識してもらえているかわかりませんが、チームのためにも僕が負けたらダメだと思っています」

鈴木の出場区間は予想が難しいが、初めて最長区間(2区)に登場するかもしれない。2区が横手健(31)や塩尻和也(28)なら、3区や5区も考えられる。21年に区間賞の6区も、勝負を決める区間として鈴木が起用される可能性はある。

「チームの状況がすごくいいのでどの区間になるかわかりませんが、2区や3区なら前との差を少しでも小さくしたいです。そうすれば後半区間の選手たちがカバーしてくれます。後半区間出場なら、向かい風が強くなるので順位を大きく上げるのは簡単ではありませんが、自分のリズムを使って走って行くことが大事かな、と思います。どの区間でも、この1年で自分の走りを少しずつ取り戻しているので、復調している走りを見せたいですね。その流れでマラソンも良い走りができる。そう思ってもらえる駅伝にしたいと思います」

22年ぶりにマラソンの日本歴代1~3位がそろうニューイヤー駅伝は、いくつもの視点で楽しむことができる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

※写真は左から吉田選手、鈴木選手、池田選手

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