イチロー「このまま会わずにお互い死んでいくのも・・・」松井秀喜と10年ぶり再会に「想像以上だった。明るいよね」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月5日 20時54分
野球界の二人のレジェンド、イチロー(51)と松井秀喜(50)のスペシャル対談が実現した。日米通算4367安打を記録したイチローと、日米通算507本塁打をマークし名門ヤンキースを世界一に導き、ワールドシリーズMVPにも輝いた松井。一時代を築いた2人のヒーローが10年ぶりに再会し、都内のホテルで向き合った。(第1回/全6回)
10年ぶりの再会は「ヒデキ・マツイ!!」から
二人は高校野球女子選抜との試合(2024年9月23日、東京ドーム)の前日の決起集会で、10年ぶりとなる再会を果たした。松井はその試合に初めて参加するため、ニューヨークからやってくる。その到着をKOBE CHIBENのメンバーと共に待っていたイチローは、少し興奮した様子だった。
イチロー:(松井が)到着した時に拍手とかいらないんで。大げさにワーッてやられるの、多分好きじゃないタイプと想像しています。合ってるかどうかは分からないけど。いや~、緊張感あるね(笑)こういうパターンないからね。これは・・・ドギマギするね。来るよ、足音が聞こえてくるね。ガシャーン、ガシャーン、ガシャーン、ガシャーンって(笑)
イチロー:(松井が登場して)へい!!
松井:ああっ!どうもどうも。
イチロー:ヒデキ・マツイ!!
松井:なんでそんなテンション高いんですか(笑)
イチロー:元気?
松井:元気ですよ。
イチロー:いや今日ね会食だし、決起集会だから、できるだけカジュアルに来てって言って、僕はこんなんすわ。短パン。僕の人生で一番短い短パン、Tシャツ、以上。これ以上カジュアルなものがないぐらいカジュアルで来ました。
松井:いや、私もほらTシャツですよ。
イチロー:「私」とか言う人だから(笑)。共通する人がいるんですよ。「カジュアルでお願いします」で、ジャケット着てくる人は王(貞治)監督ですよ。それ、共通してるよ。今、すごくそう思った。
松井:私はこれ、精一杯頑張ってカジュアルですよ、これ。
イチロー:なんかもう、なんかいやらしい(笑)
松井:いやいやいや(笑)だってジーンズですよ!めったに履かないですよ,、僕ジーンズ。だって、食事するの初めてですよ。
イチロー:明日の試合、いい試合にしましょう。その勝利を祈念して、乾杯!あ~嬉しいじゃないですか。
全員:(拍手)
イチロー:一緒に酒飲んでるんだよ。これは最初で最後の可能性が。明日どんな気持ちになるかとかさ、やっぱ現場に立って、ユニホーム着てプレーしたら。
松井:何万人の前で試合やるなんて、いつぶりだろう。
イチロー:一年後にまたやりたくなったら、それは我々はね、大歓迎なわけですから。なんかそうなってほしいなという。
松井:私も戦力外通告受けるかもしれない(笑)
イチロー:タイムタイム。さっきから気になるんだけど、「私」ってなに!?「私」って。
松井:ちょっと待って、50歳も50歳ですよ、我々(笑)
イチロー:いや、そうです。すみません(笑)
当時の松井に「明るいっていうイメージは持てなかった」
決起集会で、10年ぶりの再会を果たしたイチローと松井。高校野球女子選抜との試合を終え、二人は改めて語り合った。
松井:イチローさんの前でやっぱりね、せめてジャケットとシャツ着ないとね。
イチロー:普段こういう感じが多いってこと?
松井:こういうときは大体そうですね。
イチロー:(決起集会の時に)デニムは履かないって言ってたじゃん?
松井:ほとんど履かないですかね。たまには履きますけど、はい。
イチロー:俺頑張ってこれ(セットアップに白のTシャツ)だから。
松井:いやいやいや、なんでも似合っちゃうから(笑)
イチロー:プライベートで会うことは・・・。
松井:そうですね、初めてですよね。
イチロー:ねぇ、なかったから、どんな感じなんかなと思って、緊張もしたし。いや、緊張するじゃない、そりゃ。球場でしか会ったことない、お互いがさ。そうしたら想像以上だったから、すごい驚いたんだよね、明るいよね。すごく明るいっていうイメージは、僕の中には持てなかったから。実はそこに一番びっくりしたのと、格が高いっていうか、格のある人って言われるでしょ?
松井:そうですかね。
イチロー:いや、そうだなと思ったの。大体の人たちはさ、箔をつけることに必死になっちゃって、格が備わらないっていう人はいっぱいいると思うのね。
松井:なるほどね、格と箔の違いですね。
イチロー:全然違うことじゃない?箔はつくけど、格がない人っていっぱいいるんだけど、あ、この人両方備わってるなって。それって瞬間的に感じるものだし、どこで備えたんだろうって。
松井:これは、やっぱりイチローさんと対比した場合の話ですけど、やっぱり自分はなんかそれを求められてきたとこに、どうしてもいたっていうかね。
イチロー:(読売)ジャイアンツ、ヤンキースとかね。
松井:格なのかどうなのかよく分からないですけど、それを基本とするなんていうか、人間性というか人格というか、そういうものを、何か自然に求められてきたなっていうか。
イチロー:求められてもさ、それを形にできるかは。
松井:もちろんそうです。できる人、できない人いると思うんですけど。やっぱりそれはなんか自分の中で、ひしひしとなんか無意識のうちに感じて、そうしなくちゃいけないっていうか、そのうちそれが本当の自分なのかどうなのかっていう、それすらなんか自分自身がわからなくなってきて。
イチロー:あーー。
松井:じゃあ自分自身は何だってなったら、昨日、一昨日の明るく一緒にお酒を飲む。それも自分自身だし、かといって、やっぱりたくさんのファンの前で、こういなくちゃいけないと思う松井秀喜も、自分自身だし。
イチロー:うんうんうん。
松井:どっちも本当の自分なんでしょうけど、それをなんか、無意識に使い分けちゃうっていうか。それがイチローさんにどういうふうに映ったかは、ちょっとわかんないんですけど、でもイチローさんになんかそういうふうに自然とね、感じていただけたのは、もちろん自分自身としては嬉しいんですけど。私はまず、お店に入った第一声が、今まで見たことのないイチローさんの「へい!ヒデキ・マツイ!」
イチロー:(爆笑)
松井:で、入ったでしょ。あれでなんか自分のなんか、もうポンって弾けちゃって。「あれ、イチローさん、あ、じゃあこのノリで自分もいっていいんだ。自分もこれでいけるよ」みたいなね。それがすごいウェルカムというね。それがすごく良かったですね。やっぱりイチローさんと一緒におられる皆さんがやっぱすごい素敵、やっぱ皆さん素敵だったんで、本当に何かすっとあの場に行けた。
イチロー:いやすごい自然だったもんね。なんかあっという間に溶け込んでいた。
松井:ホントに10年ぶりっていう感じもなかったです。
イチローの声かけで実現した松井初参戦
イチロー:この女子野球、東京ドームで3年目を迎えるにあたって、何が一番盛り上がるだろうか、世の中の人が想像しない形は何なんだろうって考えたときに、松井秀喜だったら、もう完璧だよなって。僕は、51歳になる。松井秀喜は50歳になる。
松井秀喜:(頷いて)はい。
イチロー:いつまで、これできるかわからない。体の状態とかね、それはわからないし。このまま会わずにさ、お互い死んでいくのもさ、なんかね。変な感じ。かといって、突然誘って酒飲む、飯食うとかもなんか違うし。
松井:アメリカにいると遠いですもんね、さすがに。
イチロー:東京ドームだし。それは画としてやっぱ美しいし、驚いてもらえるし、再会もできるし、その後、酒も飲めるかもしれないし。いやこれは何か、悪いことがないなって思って、声をかけたというのが経緯だね。
松井:(笑)自分の中ではイチローさんが51歳。これはもう記念ね、しなくちゃいけない年だと。自分の中で勝手にですよ、「51=イチロー」ね。
イチロー:うんうん。
松井:そのイチローさんが、51歳。そこに呼ばれてて、行かないっていう選択肢はやっぱりちょっと考えづらかった自分の中で。ここはやっぱり祝福しなくちゃいけない。で、最後に会ったのが、ヤンキースのキャンプのときだったでしょ。
イチロー:そうね。
松井:ちょうどあれが2014年だったと思うんですけど、あ、ちょうど10年ぶりだと思って。「あ、ここはもう絶対行くべきだなと、行かなくちゃいけない。行って直接、久しぶりに会って、野球して、ついでにお酒も飲んでという、もう素晴らしいこの機会をね、自分の中でやっぱ逃しちゃいけない」っていう気持ちでしたね。
イチロー:だってさ、断る理由なんかいくらでも作れるわけだからね。簡単だもんね。それは全然考えなかった?めんどくせえなとか。
松井:面倒くさいのはないです。面倒くさいんじゃなくて・・・。
イチロー:「おまえどこ住んでんだと思ってんだよ」ってなかった?(笑)「どこに住んでると思ってんだよ」って(笑)
松井:そりゃ、イチロー・スズキに・・・。
イチロー:「お前、バカか」って思わなかった?(笑)
松井:イチローさんに野球誘われて断れる人間、世界中いないっすよ普通。
イチロー:いや声もかけないけど、誰でもいいわけじゃないからね。
松井:でも、ただ唯一心配だったのは、やっぱ野球やってない、ほとんど。野球教室でねちょっとね、こういう軽い球を打つぐらいなんで。
イチロー:うんうん。
松井:実際本当に野球でプレーできるかっていう心配、そこだけはありましたけど。ただ行くことに関しての障がいは別になかったです。
松井秀喜「真剣に野球と向き合う、おそらく最後の試合」
イチロー:声、枯れてます。声、出しすぎて、朝起きたら、声枯れてると思って。打席のとき、最後「行け!行け!」って言ってたからね。それ、全然聞こえないだろうけど。
松井:嬉しいっすね。「今日これは自分の選手として、真剣に野球と向き合う、おそらく最後の試合だな」というつもりで行って、しょっぱなあれですよ、しょっぱな肉離れで。この時点でもう来たかと思って(※「4番・センター」で出場した松井は1回の守備で肉離れを起こす)。
イチロー:あー。
松井:でも最後にね、まさかあんなこと(※最終6打席目に東京ドームで20年ぶりのホームランを放つ)が待ってるっていうのをね。
イチロー:あの場面も最高だったし、涙した人いっぱいいるし。だけど、あれが邪魔したっていうことも言えるよね。
松井:ヘヘへ。邪魔・・・(笑)
イチロー:つまりその、最初に足やっちゃって。こんなんじゃ駄目だ。もう1回作り直して、次。
松井:あー、なるほどね。
イチロー:だけど最後、ホームランで終わってるから、これで終わりの方がいいという考え方も。
松井:形として終わりとして、一番美しい終わりじゃないすか。
イチロー:僕はやっぱアスリートとしては、こっち(右足)をちゃんと治して、セントラルパークで走り込んで。
松井:あはははは(笑)
イチロー:もう一度センターとして、しっかり守れる状態。で、またホームランね、いい結果が出たらいいし。それができたら、またもっとやりたくなるかもしれないし。どう?
松井:考えます。
イチロー:いやいやいや、NOじゃないからさあ。
松井:やっぱりそれはイチローさんに言われちゃうとね。やっぱり自分だけで完結できない話になってきたんで、これはね。
イチロー:だってファンの人の反応とか、やっぱ見たらさ。
松井:あの歓声聞いちゃうとね。自分が打って、あの歓声が来るっていう快感はやっぱりね。
イチロー:最後のホームランだけじゃなくてね、最後まで出るっていう、何としても出るっていう意思を見せてくれたことが、僕もそうだし、みんなそれを喜んでるもんね。
松井:でもあそこでやっぱり途中で抜けるっていう、その選択肢は自分ではなくて、足引きずってでも、とにかく最後までやんなくちゃいけない。
イチロー:うんうん。
松井:東京ドームでね、イチローさんに呼ばれて、このたくさんのお客さんの前でね、これはもう代わることはできない。もちろんわがまま言って、ちょっとサードに行かせてもらったり、臨時代走という特別なルールを作ってもらいましたけど、やっぱりこれはもう、足を引きずってでも、情けない姿をお見せしてでも、皆さんの前に居続けなくちゃいけないっていう、もう怪我したときからそれは思ってました。どうやって9回持たせるかっていうね。
イチロー:そうするとさ、ホームラン打ったときにさ、代走っていうのはおかしいんじゃないの。それは相反する行為なんじゃないの。
松井:いやでも、打ったところでお客さんが喜んでくれてたんで。
イチロー:いや、(ダイヤモンドを)周るのを見たい。僕が思ったのは、もう歩いてでもいいから周ってほしい。
松井:それでも権利はありますよね、打ったらね。行けっていう姿を見たら、行かなきゃいけないなと思いました。
イチロー:あれはすごくいいシーンだったんですよ。
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