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イチロー氏「何にも出てないよね!データに!」「その感性、大事にしてね」母校に伝えた熱きメッセージの真意

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月7日 21時51分

TBS NEWS DIG

イチローさん(51、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が“ついに”母校を訪れた。高校野球の指導に取り組んで5年、愛知工業大学名電高校を訪れるのは初めての事だった。

イチロー:
夏の大会前にバッティンググラブを送って、それできっかけが出来たのは大きかったです。ずっと気にしてたし、結果知っているのだけど、34-35歳違う子供達ですけど、僕が“名電”出身という事をもちろん知っていて、その熱が高いという…その話を聞いて驚いたのもあったが嬉しかった。

33年前の思い出「高校時代は全力で練習をしなかった」

母校は愛知県名古屋市にある高校野球の名門校、愛知工業大学名電高等学校。甲子園出場は春夏を通じて25回、2005年の選抜大会では創部50年にして悲願の優勝を果たした。だが、ここ2年は1回戦敗退。秋の愛知県大会でも早々に敗れ、センバツ出場は絶望的になっている。そんな現状もあり、今回の訪問を決めた。

グラウンドを訪れる前に寮へ。イチローさんがいた33年前のままだった。
イチロー:
お風呂は変わってないね。浴槽大きいね。ああ、同じだな。

「高校時代は全力で練習をしなかった」とイチローさんは言う。プロのレベルで抜きん出るために、高校野球は楽々と通り過ぎなければならないというこだわりがあったからでした。

イチロー:
鏡がこれだけついてて、朝夜歯を磨くんだけど、それぞれタオルを持って、歯磨きしながら右わきの閉まり方チェックしたいなと思って…歯磨きしながら右の脇を閉じる練習をこの前で“ここで”やってましたね。

劇的な進化を遂げた練習施設

ただし、練習施設は劇的な進化を遂げていた。まるでプロ仕様の最新鋭の設備が整えられていたのだ。倉野光生監督が弾道測定分析機器の説明をイチローさんにする。
倉野光生監督:
ここにビデオカメラを設置すると自分の投げたフォームがビデオカメラを通じてモニターに映る。あそこでスピードと回転数が瞬時に出る…

投球の回転数や回転軸などの幅広いデータが取得可能であり、バッティング練習でも、一球ごとに打球の速度と角度を測定出来る。厳しさだけでは通用しなくなった今の時代、試行錯誤を続ける指導者にとって、データは選手に説得力を持たせるための材料でもあった。
イチロー:このデータのシステムは…
倉野監督:このデータは4年ぐらい
イチロー:それと結果は比例しました?
倉野監督:4年間ずっと勝てる(甲子園に出場)秘訣の一つ…
イチロー:高校野球で導入してるところは?
倉野監督:ここまでやってるところは聞かんな、ここまで設備が整ってるとか…

「怖いなと思いました…プロにとっても邪魔なんです」

最新鋭とも言える施設を見た時の事をイチローさんは後日に振り返った。
イチロー:
あれは怖いなと思いました。高校生どころかプロにとっても邪魔なんです。そういう練習があっていいんだけど、毎回あれされたら、準備段階からそれされちゃうわけだから、全く必要ない。

イチローさんはデータを否定している訳ではない。選手がデータを鵜呑みにする事に危機感を抱いているのだ。だからこそ、後輩たちにも考える事を大事にして欲しかったのだ。

自分で考えて動いてほしい「感性が消えていくというのが現代の野球」

イチローさんが母校のグラウンドに姿を現した。待っている部員達の間から拍手が起こる。
イチロー:
いや、拍手いらないから。後輩、拍手いらないよ。はい、こんにちは!
部員:こんにちは!
イチロー:
はじめましてだよね、みんな。イチローです…秋の成績は?
部員:ベスト16でした。
イチロー:
そんなの1回戦負けと一緒でしょ、愛工大名電にとっては。どうなの今の状態は?みんないい身体してるけど、鍛えている感じあるけど、どう?

イチローさんがさらに問い掛ける。
イチロー:
今、寮から始まって、雨天練習場、球場見学をさせて貰いました。いろいろなデータを参考にしながら頑張っているって聞きました。気になったのは、いろいろな事がデータで見えちゃうでしょ。でも見えてないところをみんなは大事にしているんだろうか…野球ってそれだけじゃない事あるよね、気持ちがどう動くとか、感性。データでがんじがらめにされて、感性が消えていくというのが現代の野球。自分で考えて動く。一緒に動くので。

「何にも出てないよね!データに!」

この日は、後輩たちの走塁をテコ入れする事に。とはいっても、単に速く走る方法を教えるわけではない。重要なのは、“何を考え、何を考えないか”。
イチロー:
僕はここにいます。この距離が一歩(進塁方向に)出されても塁に帰れる距離です。
< イチローさんが動く >

ここにいるとどう?一歩(進塁方向に)出されると間に合わないでしょ。その距離を覚えておいて。一歩(進塁方向に)出されても頭から帰れば戻れる距離。そうすると牽制の事“考えなくてよい”…これデータ出てるんじゃないの?どうですか?
部員:………
イチロー:
さっきの考え方と同じ。どの動きされても自分は戻れるのだっていう距離を掴んでください。そうすれば後ろチョロチョロされようが、ピッチャー上手だろうが関係ないから…これはデータ出てるの!?
部員:………
イチロー:
何にも出てないよね!データに!大事なデータ、出てないじゃん。

自ら動いて“母校”に伝えたかった事

“データにはない”感性を求める指導には狙いがあった。
イチロー:
(部員は)答えられない。頭、全然、使ってない。まさしくMLB(メジャーリーグ)の野球がそうなっていて、高校野球でこれをやっているのは母校だった。これは言っておかなきゃなっていうチャンスですよね。

イチローさんの高校野球指導では高校生の前でバッティング練習を披露する。これはデモンストレーションではない。決して身体が大きい訳ではないイチローさんが“木のバット”で、なぜあんなに打球を遠くに飛ばせるのか。それを高校生に考えて欲しい、そう願いながら、打ってみせているのだ。

最後にもイチローさんは後輩達に“データにはない”感性の重要性を念押しした。
イチロー:
きょう聞いたことない話ばっかりでしょ。データにない事ばっかり。その感性、大事にしてね。みんな能力、高いのだから…あんまり(データに)縛られないで。とにかく、みんなの動向見ているから頑張って。

熱きメッセージを残し、イチローさんは「じゃあね、みんな」と母校を後にした。

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