韓国史上初 現職大統領が拘束“内乱を首謀した疑い”、尹氏「流血防ぐため応じた」【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月15日 20時56分
史上初めて現職の大統領が身柄を拘束されるという異常事態です。
韓国史上初 現職大統領を拘束
小笠原亘キャスター:
韓国では、史上初めて現職の大統領が身柄を拘束されるという異常事態になっています。
2024年12月3日、突然の尹錫悦大統領による44年ぶりの「非常戒厳」宣言がありました。約6時間後に解除となりましたが、14日には大統領の弾劾訴追案が可決され、尹大統領の職務は停止していました。
韓国では合同捜査本部が設けられ、内乱を首謀した疑いで尹大統領を捜査し、年末にかけて3度の出頭要請をしましたが尹大統領は応じませんでした。
12月30日には拘束令状を請求し、年明けの1月3日には令状執行のために大統領の公邸に合同捜査本部が向かうということになりましたが、これがうまくいきませんでした。
尹大統領側は令状は無効だと主張し、大統領警護庁が拘束を阻止したということです。
大統領側の「大統領警護庁」は、警察とは別の組織で、大統領やその家族らの警護を担い、武器も携帯しているといいます。1月3日には、大統領警護庁がバスや車両などでバリケードを作ったため、うまくいきませんでした。
韓国には、検察に代わって政府高官の汚職などを捜査する「高位公職者犯罪捜査庁」という、前の文在寅大統領政権のときに作られた専門機関があるそうです。その高位公職者犯罪捜査庁と警察などの合同捜査本部が5時間半対峙しましたが、拘束は失敗に終わっていました。
ホラン千秋キャスター:
捜査本部は令状に基づいて大統領を捜査したい、でも大統領はその令状が無効だと主張して警護庁が拘束を阻止しているということですよね。どちらの主張に正当性があると見れば良いのでしょうか。
龍谷大学 社会学部教授 李相哲さん:
尹大統領は談話で、この国では法律が完全に失墜したというふうにおっしゃいました。その意味は今回の拘束令状というのは不法だと。なぜかというと、高位公職者捜査庁というのは、内乱の罪を捜査できる権限がないからです。しかも拘束令状を申請したところが、まだ管轄外の高位公職者捜査庁と内通してるというか、関係のあるところで発行してもらったと。だから応じられないんだというふうにおっしゃっていたんですよね。
井上貴博キャスター:
法の捉え方をどうするかっていうことにもなると思うんですけど、ことの発端はそもそも大統領が非常戒厳を宣言するという、とんでもない暴挙に出て支持率が急降下したわけです。
ただ今は野党もやりすぎだと。野党の代表が、自分が罪に問われている裁判の判決が出る前に大統領選挙やりたいんだという思惑が透けて見えて、政治利用してしまっていて。今度は野党が批判にさらされ、あれだけ低かった尹大統領の支持率が今持ち直してますよね。何が起きているんですか。
龍谷大学 社会学部教授 李相哲さん:
一つは今おっしゃるように野党がやり過ぎたと。それからもう一つは尹大統領がその間、戒厳令を宣布した理由が、野党が弾劾を繰り返して、それから政府がやろうとする予算を全部カットして、ずっと足を引っ張ってきたっていう実態がやっぱり国民に知られたという部分もあったというふうに思います。
ホランキャスター:
萩谷さんはこの大混乱をどうご覧になってますか。
萩谷麻衣子 弁護士:
尹大統領は独自の正義感を頑なに曲げずに法律論を繰り広げて抵抗している。それに対して野党もとにかく政権を取りたいということに固執して、国民を置き去りにして、とにかく早く弾劾手続きを進めるために奇策を繰り広げて、弾劾手続きも繰り返している。
どっちもどっちに見えるんですけど、とにかく国民が置き去り。国民としては、与党にも失望し、野党にもうんざりというところなんじゃないかなと思います。
尹大統領拘束 捜査・弾劾の行方は
龍谷大学 社会学部教授 李相哲さん:
ただ、尹大統領を拘束した理由、容疑というのは内乱の罪なんですよね。しかし韓国の刑法では、今回、尹大統領が戒厳令を宣布したのは内乱の罪には当たらないんじゃないかということで、憲法裁判所も弾劾訴追案から内乱の罪は外せというふうにして、今、審理しようとしてるところなんですね。
だから法の理論で戦えば、どんな結果が出るのかというのがわかりにくくなっていますけれども、どっちが勝つのかっていうのはやっぱり韓国では国民の世論ですね。先ほども出たように、尹大統領に対する支持率がぐんぐん上がって今46%です。50%に迫っているというふうになれば、憲法裁判所も慎重に審理せざるを得ない。そのような状況になっていくというふうに思いますけれどね。
井上キャスター:
憲法裁判所も世論を気にして判決を出すってことですか?
龍谷大学 社会学部教授 李相哲さん:
もちろんです。過去において朴槿恵前大統領のときもそうですし、韓国は法律の上に国民感情、つまり「国民情緒法」というのがあって、憲法裁判所も刑事裁判所もほとんど大事件は世論動向がとても大きな影響を及ぼしてきているんですよね。これからもそのようなことが見られるというふうに思います。
井上キャスター:
そこはやっぱり韓国独特だなって思うんですね。
萩谷麻衣子 弁護士:
李先生、尹大統領を支持している層というのは若者が多くなってきているということでしょうか?
龍谷大学 社会学部教授 李相哲さん:
おっしゃる通りで、若い男性の20~30代、それから60代以上は尹大統領を支持している模様です。それからソウルでも尹大統領に対する支持率がかなり高くなってるんですね。
井上キャスター:
ソウルと若者ということですね。
==========
<プロフィール>
李相哲さん
龍谷大学社会学部教授
著書に「北朝鮮がつくった韓国大統領 文在寅」など
萩谷麻衣子 弁護士
結婚・遺産相続などの一般民事や、企業法務を数多く担当
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