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早大のサークル出身・小林香菜が2時間21分19秒で日本人トップ2位 標準記録を突破し東京世界陸上代表に名乗り【大阪国際女子マラソン】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月28日 12時0分

TBS NEWS DIG

今年9月開催の東京2025世界陸上選考レース女子第1弾、大阪国際女子マラソンが1月26日、大阪市長居競技場を発着点とする42.195kmで行われた。ウォルケネシュ・エデサ(32、エチオピア)が2時間21分00秒で2連勝。日本人トップは大学時代はサークルで活動していた小林香菜(23、大塚製薬)で、残り800mでパリ五輪6位入賞の鈴木優花(25、第一生命グループ)を逆転する劇的な展開だった。小林2時間21分19秒、鈴木2時間21分33秒と二人が東京世界陸上参加標準記録を突破。実業団ルーキーの小林が代表に名乗りを挙げた。

残り800mでパリ五輪入賞選手を抜き去るサプライズ

ハイペースで進んだレースは、22&23年世界陸上代表だった松田瑞生(29、ダイハツ)が12kmで、小林と24年に現役復帰した伊澤菜々花(33、スターツ)も25km手前で、そして鈴木も27kmで先頭集団から後れる展開になった。

前回優勝のウォルケネシュ・エデサ(32、エチオピア)が、ペースメーカーが外れた30kmから独走。それを鈴木が追う展開のまま終わると思われたが、終盤にドラマが待っていた。30kmまでの5kmを17分03秒にペースを落としていた小林が、テレビ画面でも徐々に大きくなっていた。35kmまでの5kmを16分51秒とペースアップし、鈴木との差を詰め始めた。

「ハーフ(中間点)くらいで離れたとき、正直、苦手の上りでしたし気持ちでは負けていましたが、それでも後半粘ることができました。日本人1位までは目標にしていませんでしたが、前には鈴木さんと伊澤さんしかいませんでした。大阪で上位に入るチャンスです。自分の走りでどこまで行けるのか、と思って走っていました」

そして40kmまでの5kmで、鈴木との差を18秒も縮めていた。距離にすると約100mも追い上げたことになる。

そして逆転劇は、長居公園の取り付け道路に入って間もなくだった。残り800mで鈴木に追いつくと、そのまま抜き去った。

「自分のペースで前を追っていたら、鈴木さんの背中が大きくなってきて、ラスト1kmで沿道から“行ける”と言われてラストスパートしました。思いもよらぬ結果になりました」

1年前の今大会は早大のランニングサークル、「早稲田ホノルルマラソン完走会」所属で出場していた。競技を突きつめるのでなく、市民ランナー的なポジションで走っていた。

本来なら4年時12月のホノルル・マラソンに出場するはずだったが、今大会のネクストヒロイン枠での出場が決まったため、ホノルルを回避してトレーニングを行っていた。そのレースで2時間29分44秒の学生歴代4位で走り、1年後の今回日本歴代10位に大躍進をしてみせた。

ルーキーイヤーの駅伝でスピードを研いてマラソンに

大学在学中にマラソンに7回出場したが、トレーニングは我流でそこまで追い込んでいなかった。「1人でジョグをするのが好きで、ひたすら走っていました」。強いて言えば「週に1回、皇居を2周するくらい」が、負荷の大きいポイント練習だった。

市民ランナー出身選手の傾向として、長い距離を走るメニューは抵抗なくできる。だが、スピードを出すメニューは苦手とすることが多い。
大塚製薬の河野匡監督が次のように説明する。
「みんなでジョグをするメニューならできるのですが、スピード練習の設定タイムを言うとビックリするんです。全力で行こう、と言うと『本当に全力ですか?』と聞き返されましたね。それでも5月の合宿から走れる体つきになって、ちょっとずつ速く走ることをつかみ始めました」

河野監督が最初に小林のことを評価したのは、大学3年時の大阪国際女子マラソンの中間点を、1時間11分57秒で通過したとき。2倍すれば2時間23分台である。スピードも出せる選手なのでは、という期待はあったし、駅伝で戦力となるためには、それなりのスピードを出す必要もあった。

シーズン後半の小林は、河野監督の予想を上回る成長を見せる。昨年9月の全日本実業団陸上10000mでは32分22秒98で7位、日本人3位と日本トップレベルに近づいた。10月のプリンセス駅伝ではエース区間の3区で区間2位。11月のクイーンズ駅伝は、大会直前に転倒して「ヒザを2針半縫うケガ」(河野監督)をしたが、区間11位で3人を抜いた。

12月1日の防府マラソンは、マラソン用の練習を行わずに、その時点の力を確認することと、「大阪に向けての40km走の1本目」と位置付けて出場。2時間24分59秒と予想以上の結果を出した。河野監督が入社時に「実業団で走るからには、最終的には出したいタイム」と話していた記録を出してしまった。

12月4日から1月9日まで、米国アルバカーキで初めて、“マラソン練習”と言えるトレーニングを行った。最初は平地の感覚で速いスピードで走り始め、後半で苦しむこともあったが、徐々に高地にも順応した。昨年の大阪国際女子マラソンで2時間18分59秒の日本記録をマークした前田穂南(28、天満屋)が、同じアルバカーキで行ったメニューも実行したという。

帰国3日後に出場した全国都道府県対抗女子駅伝も、最長区間の9区(10km)に出場。区間5位で、5000m日本記録保持者の田中希実(25、New Balance)を抑える走りを見せた。それまで大阪国際女子マラソンは第2集団に付くプランだったが、2時間20分切りを目指す第1集団に付くことを決めた。

大会4日前の取材に河野監督は、「練習の積み上げがすごいので、先頭集団から離れても粘ってゴールできると思います。第1集団に付く距離が長くなればなるほど良い結果が出る」と予想していた。展開的にはその通りになったが、日本人1位はまたもや、河野監督の予想の上を行っていた。

小林と鈴木の東京世界陸上代表入りの可能性は?

大阪の走りで小林は、日本陸連が決めた東京世界陸上選考基準を満たしたが、代表入り確実とまでは言えない状態だ。現状ではJMCシリーズ・シーズンⅣ(23年4月から25年3月)の優勝者が最優先で選考される。大阪の結果では鈴木がトップに立ち、優位なポジションにいる。ただ昨年1月の大阪日本人トップの前田穂南と、昨年3月の名古屋ウィメンズマラソン優勝の安藤友香(30、しまむら)にも可能性がある。

シリーズⅣ優勝者に続く選考基準が、今回の大阪、3月の東京マラソン、3月の名古屋ウィメンズの選考レース3大会で、東京世界陸上標準記録を破った選手たちだ。3人以上が標準記録を破った場合は、“強さ”を感じさせた選手2人が選考される。“強さ”の基準は明記されていないが、五輪入賞者を逆転した小林は、かなりのアピールができたと言えそうだ。

しかし厚底シューズの登場以来、女子マラソンも高速化が進んでいる。東京と名古屋で2時間20分を切る記録が出る可能性は十分ある。そのときに小林が選ばれるかどうかは何とも言えない。

小林自身も、代表のことは現実的には考えていなかった。

「気持ちとしてはマラソンで、世界の舞台で走りたいという目標で入社しました。その気持ちでここまで頑張ってきましたが、自分の成長に精神面の成長が追いついていません。精神面はトップ選手の方たちと違うな、と思う場面がありますね。自分も気持ちが強くなりたいのですが・・・」

入社後の小林は周囲も本人も驚く成長だったが、そういった伸び方をしたときは、一度調子を崩すと立て直しに時間がかかるケースが多い。河野監督は「狙って出しているのではなく、成長過程の中で結果を出している。一度、地に足を付けて考えないと、次のレベルに行くのに時間がかかる」と、伸び悩むケースにも言及した。

だが小林の場合、市民ランナー的なポジションから実業団競技生活をスタートした点が、過去のエリート選手と違う点である。走ること自体が好きで、故障が少ないことも加わって、「練習を積み上げられる」(河野監督)ことが特徴である。回転数が1分間に220歩のピッチ走法も、大きな武器になると河野監督は評価する。実業団2戦目が東京世界陸上になったとしても、小林は自分らしさを見失わずに準備ができるだろう。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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