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トランプ大統領が仕掛ける“関税戦争”日本への影響は? WHO脱退なぜ? 国籍の出生地主義廃止は違憲?【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月23日 21時36分

TBS NEWS DIG

就任早々、中国などに対する関税方針を表明したアメリカのトランプ大統領。自称「関税マン」の狙いはどこにあるのでしょうか?

トランプ氏の“関税戦争”始まる?日本の関税引き上がるか

上村彩子キャスター:
トランプ大統領はおそらく2月1日からメキシコやカナダからの輸入品に25%の関税を、中国には10%の追加関税を課す事を検討していると明らかにしています。

各国の反応は…

カナダ「断固とした対応を取る」
メキシコ「課税が課されれば別の課税で応えなければ」
中国「貿易戦争・関税戦争に勝者はいない」

トランプ氏の関税で日本にどんな影響があるのでしょうか?そして、大統領令の影響についても、詳しく見ていきます。

【メキシコへの25%の関税】について


日本の自動車メーカー、トヨタ、マツダ、ホンダ、日産などメキシコに多く工場を持っていて、アメリカに輸出しているため、自動車メーカーが影響を受ける可能性が大きいのではないかということです。

自動車評論家の桃田健史さんは「メキシコの工場から撤退せざるを得ない状況。拠点を移すための資金が必要となり、日本の自動車の値上げも考えられる」と話します。

【カナダへの25%の関税】について
アメリカの同盟国の一つですが、25%の関税ということで、早稲田大学の中林美恵子教授は「アメリカで社会問題になっている不法移民の流入阻止が目的では」としています。

早稲田大学教授 中林美恵子さん:
国境に接しているカナダ・メキシコは、あまりにも近いので色々なものが流入してきます。

トランプ氏は「フェンタニル」という合成麻薬の件も、特にメキシコに対して問題視していました。国境を接していれば色んな組織の人がいますので、両国に非常に厳しいことを言っています。

特に貿易の不均衡は両国とも大きいですが、今回、トランプ氏は不法移民のことを一丁目一番地の政権公約としてきたので、それもカナダに相当(影響がある)。実は、中国からカナダを通して不法で入ってくるという話もアメリカではされていました。

メキシコ・カナダ関税で… 専門家「日本全体の経済に影響がおよぶ」

ホラン千秋キャスター:
新たな関税が実施されるとなると、軋轢は大きくなるのでしょうか?

早稲田大学教授 中林美恵子さん:
日本にも影響があるか?というのは、かなり難しい部分だと思います。

「カナダ・メキシコの話であって、日本ではないから良いじゃないか」とか、よく「トランプ氏は日本に関税をかけますか?」と聞かれますが、まだ名指ししていません。

カナダ・メキシコにかけられた場合、特に自動車産業は日本にとっても経済的に大きな影響を持っています。そのビジネスが成り立たなくなるくらいのことになると、日本全体の経済に影響がおよびます。私達の景気が悪くなったら、それも困りますよね。

なぜ?WHOから脱退 「新型コロナ対策が不十分」「拠出金の差」

上村キャスター:
“WHOから脱退”について、大統領令に署名しました。

WHO=世界保健機関は、1948年に設立され、194の国や地域が加盟していて、世界中の人々の健康増進が目的で作られた機関です。

「新型コロナ対策が不十分だった」「中国の人口はアメリカの3倍なのに拠出金は9割も少ない」ということで脱退しました。

【拠出額のトップ5】
・米国 約9.5億ドル(約1487億円)
・ドイツ
・英国
・中国 約2億ドル(約313億円)
・日本

中国と比べると、アメリカはとても多くの額を拠出していることがわかります。

WHOは急きょ声明を出しています。
「アメリカは70年以上にわたってWHOとともに数えきれない命を救ってきた。考え直してくれることを願っている」

今後の影響について専門家は…

厚労省厚生科学審議会感染症部会 谷口清州委員
「WHOの研究は、アメリカのCDC(疾病対策センター)が担っている。CDCのメンバーが抜けてしまうと、次にパンデミックが起きた時に対応できない」

井上貴博キャスター:
WHOについて「コロナ禍で何も機能しなかった」などのように、国連も含めた国際機関不要論が広がっていますが、人口比率を考えない拠出金の基準になっているので、すごく不公平だと。

今まで政治家が言ってこなかった部分にトランプさんが切り込み、熱狂する一定の層がいて、そこに向けて(訴える)という、トランプさんは一貫していると思います。

歴史小説家 今村翔吾さん:
トランプさんの論調を聞いて「日本も引き上げたらいいじゃないか」という声が出てくるし、そう考えるのも間違いではなく、一つの意見としてはあると思います。

何かしら変化は必要かもしれないけれど、次のビジョンが見えていないと混乱を生じかねないなと思います。

早稲田大学教授 中林美恵子さん:
トランプ氏は、コロナ禍(2020年)の頃、脱退しようということで命令を出しましたが、脱退の宣言をしてから、1年間は猶予があるので抜けられませんでした。そうこうしているうちに、民主党議会が予算を出し、21年からバイデン政権になってしまったので脱退しませんでした。

今度は、あと4年ありますから、議会も共和党なので脱退する危険性はあります。命と人の健康に関わるものですから、アメリカの責任は大きいと思います。

ホランキャスター:
アメリカの拠出金9.5億ドルがなくなってしまうと、今まで行われていた研究ができなくなったりしますか?

早稲田大学教授 中林美恵子さん:
大いにあります。アメリカが貢献してきたものは非常に大きいですし、パンデミックのような感染症に関する研究は非常に進んでいますから、それを参考にWHOもだいぶ進んできた部分があります。

ただ、最近は中国の影響力が増えていて、トップの人たちも中国政府からの注文は拒否できないような状況や、原因を調べようとしたときに中国が拒否したりして、十分なデータを出してくれなかったんですね。

ですから、脱退という極端な提案を出しつつ、ガバナンス改革や拠出金の見直しなどを進めようという思惑があるのかもしれません。

国籍の出生地主義を廃止 司法長官「大統領令は違憲だ」 狙いは?

上村キャスター:
続いて「出生地主義の廃止」についてです。

出生地主義とは、両親がアメリカ国籍でなくとも、アメリカで生まれた子どもに自動的に国籍を与える制度のことですが、トランプ氏は第一次政権のときから反対していました。

トランプ氏の発言(2018年の現地メディアのインタビュー)
「外国から来た人が生んだ子どもが米国市民になって、あらゆる恩恵を85年も受けられる。これは馬鹿げている」

大統領令に待ったをかけているのが、22の州の司法長官です。「出生地主義は憲法が規定しているので、この大統領令は違憲だ」として、差し止めを求める訴訟を起こしています。

ニュージャージー州の司法長官は「大統領令は憲法の文言をペンで消すようなことはできない」と強く批判しています。

井上キャスター:
基本的には、交渉のために高いボールを投げて、アメリカに有利なように落としどころを探るという、トランプさんのやり方ではあるわけですよね。

早稲田大学教授 中林美恵子さん:
テーマごとに濃淡があると思いますが、不法移民などに対して厳しいのがトランプ氏です。

外国人でもアメリカに来て子どもが生まれれば、アメリカの国籍を取る。それどころか、不法移民でもアメリカで生まれた子には国籍をあげるということになってしまうので、普通の国と同じように、昔から移民の国ではありましたが、立て直した方がいいのではないかという提案です。

憲法を修正するには、大変な時間がかかります。憲法修正14条で「出生したときに国籍がもらえる」とされていますが、トランプ氏はおそらく憲法解釈を変えたいんですね。

司法に訴えてもらえれば、こっちのもの。最高裁に行けば、保守派が6人、リベラル派が3人ですから、もしかしたら、憲法解釈を変えて「アメリカ市政の中で生活している外国人は、外国人だから憲法が保障する中に入らない」というかもしれません。「その子供も入らないので国籍を与えない」そういう理論も成り立つようです。

でも、人権とかそういうものから見たら、たくさんの議論が出てくると思います。

==========
<プロフィール>
中林美恵子さん
早稲田大学教授
元アメリカ議会上院補佐官(共和党)

今村翔吾さん
「塞王の楯」で第166回直木賞受賞
歴史・時代小説家 30歳までダンス講師

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