救命救急が抱える働き方へのジレンマ。最前線に立つ竹内一郎医師が感じる医療現場の実情
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年2月10日 20時0分
TBS火曜ドラマ枠で放送中の『まどか26歳、研修医やってます!』では、研修医たちの成長が描かれるだけでなく、患者側からでは知りえない多くの医療現場のリアルも描かれる。
本作の医療監修を務めるのは、これまでにも『Get Ready!』『VIVANT』(いずれもTBS系)の医療監修を行った、横浜市立大学救急医学教室・主任教授であり、横浜市立大学附属市民総合医療センター・高度救急救命センター長の竹内一郎先生。ここでは竹内先生の救命救急医としての活動や、伝えたい思いを語ってもらった。
救命救急科に携わりたいという思いから専門医を目指す
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北里大学病院、小田原市立病院などの循環器内科で働いていた竹内先生。2007年に各科の専門医が救命救急科に派遣される制度で、北里大学病院の救命救急災害医療センターへ行くことに。「本来であれば、救命救急科での職務は2年間で終えるはずだったのですが、救命救急科で働くことにやりがいを感じ、結果的に10年の間に循環器内科から救命救急科へと比重を移していったんです」ときっかけを明かしてくれた。
そんな竹内先生は、研修医時代、専門科を決める頃から救命救急科に関心を持っていたという。「生と死に大きくかかわる救命救急という現場に携わりたいという思いを持ちつつも、そこで働く医師はそれぞれ外科や内科、小児科といった専門性を持っていると知り、一番興味のあった心臓の分野を突き詰めて、一人前になろうと思ったんです」と教えてくれた。
2020年に経験した災害医療――普段の救急医療の大切さ
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竹内先生が教授を務める横浜市立大学救急医学教室は、現在100人もの医局員が在籍する、国内でも大きな救急医局の1つだ。救急集中治療をするだけでなく、救命救急センター内で手術まで完結するために、脳外科や消化器外科、小児科の専門医などさまざまな技術を持った医師がいる。
「救急だけではない技術を身につけるため、日々勉強や研さんが欠かせません。そのために横浜市立大学内だけでなく、日本全国あるいは海外にも足を運び、知識と技術を自分のものにした医師らが、この救急医学教室には多くいます」。
大規模災害や多数傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)から活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた災害派遣医療チーム・DMATの隊員もいる。彼らは2024年1月1日に起きた石川県・能登半島地震にも石川県の要請を受け出動した。「災害も救急にとっては大事な問題」と話す竹内先生。
2020年2月に豪華クルーズ客船・ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に入港し、乗員乗客3700人のうち約700人がCOVID-19(新型コロナウイルス)のPCR検査で陽性となった際も「とても大きな災害だった」と振り返る。
「あの時はワクチンもなければ、治療薬もありませんでした。その中で約700人という陽性患者をどうするべきか。全員を入院させようと無理に病床を空けようとすると、交通事故やがんといった通常の治療が困難になってしまう。そうすると、救える命も救えなくなってしまう医療崩壊が起こってしまうと判断しました。そこで救急の概念から重症者、中等症、軽症者の3つに分け、重症者は横浜市内で、中等症は近隣の県、軽症者は受け入れ態勢を整えてくださった遠方へ搬送を行ったんです」(竹内先生)。
平時の救急医療と、災害医療、どちらもおろそかにできないからこそ、苦渋の決断だったことだろう。しかし、この時の経験がその後起こったコロナ陽性患者の第5波、第8波で生かされたという。
働き方改革で抱える労働時間と救急医療のジレンマ
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働き方改革で変わりゆく医療現場に戸惑いながら“イマドキ研修医”が2年間で成長する様子が描かれる本作。実際に、どんな研修医がいるのかを竹内先生に尋ねると「ドラマと同じように、9時5時で働くという考えを持っている研修医もいます」と教えてくれた。「早い時間に帰らなければならないので、責任ある仕事を任せることができない。そうすると、“研修医=お客様”になってしまうんです。しかし、3年目の医者になると一気に当事者に変わります。どうやってやりがいを見つけ、責任感を養っていくかが、主人公たち研修医の課題になってくるのかなと思います」と実情を明かした。
そんな竹内先生の研修医時代は、経験を積むことが何より大事だったという。「技術職であり、職人的な要素がまだ強かった時代なので、“見て盗め”という環境でした。常に必死でしたね」と話す。当時はまだ“スーパーローテーション(2年の研修期間で各科を回る仕組み)”が義務化されていなかった。「その科に決めたら、その科の研修へ行くのが常でした。その中で一部の都市部や先進的な病院や大学ではスーパーローテーションが行われていたので、僕自身はそういった病院を調べて、2年間研修医としてさまざまな科を回りました」と教えてくれた。
現在の救命救急の実情について尋ねてみた。「救急医になりたいという若者は少しずつですが増えてきていて頼もしいです。しかし2024年4月から適用になった働き方改革は、物流問題といわれているトラック運転者の方々だけでなく、我々医師も該当しています。ですが、救急医療は24時間です。夜間にも交通事故は起きますし、心筋梗塞になる方もいます。その中でどう患者さんと向き合い、長時間労働にならないようにするか、とてもジレンマを抱えています」(竹内先生)。
大変なことの中にもやりがいのある医師という仕事
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そんな竹内先生が考える、成長するために必要なこと。「熱意と時間だと思います。医師は繰り返しの学問だと思うので、経験値を上げる、それでやりがいが生まれる。時代的に空回りすることもあるかもしれませんが、ベースとして持つ熱意は、それくらい強いものであるべきです」と明かしてくれた。
「人の命、医療レベルにかかわってくる大事なことです。感動することもありますし、やりがいも感じますが、それとは対照的に厳しいこともあります。その両方を知ってもらった上で、救急医療に興味を持つ人がさらに増えてくれればいいなと思っています」と“人材育成の大切さ”も語ってくれた。
有事の際に駆けつけ、救われる命がある。そんな救急医療の現場にも“働き方改革”という壁が立ちはだかる。時代に揉まれながら、人々がどう成長していくか。竹内先生は成長するために「熱意と時間が必要」と教えてくれた。それは医療の世界に限ったことではないだろう。わたしたち1人ひとりが目の前のやるべきことと向き合うことで明るい未来が見えてくるのかもしれない。
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