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曖昧さの解消なるか?「危険運転致死傷罪」の見直しへ法制審議会に諮問 議論の焦点は「数値基準」 遺族からは期待と懸念も…【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年2月11日 11時34分

TBS NEWS DIG

2001年の施行以降、適用基準が曖昧だと批判されてきた「危険運転致死傷罪」。鈴木法務大臣は10日、法制審議会に法改正の検討を諮問し、曖昧さの解消に向けた議論が始まりました。議論の最大の焦点は「数値基準」を設けるかどうか。交通事故の遺族からは期待の声が上がる一方、懸念も…。

容疑者が合掌し「ごめんなさい」

警察が現場に立ち会わせていると突然、男は手を合わせ、しゃがみ込みました。

「ごめんなさい」

池田怜平容疑者(34)は先月、福島県郡山市で酒気帯びの状態で車を運転し、横見咲空さん(19)をはね、死亡させた疑いがもたれています。

受験のため、大阪から郡山を訪れていた横見さん。横断歩道をわたっていたところ、信号無視をしてきた池田容疑者の車にはねられたとみられています。

警察は、危険運転致死の疑いも視野に捜査しています。

男が現場で手を合わせたその日、ある夫婦が事故現場に花を手向けました。

井上郁美さん(56)
「19歳の若さで頑張って勉強してきて、本人が一番無念だろうなって思います。こんなことはもう絶対にあってはいけない

「命の重さに比べて、非常に軽い判決だった」“危険運転”厳罰化期待も…

井上さん夫婦は1999年、東名高速道路での飲酒運転による事故で、長女の奏子ちゃん(事故当時3歳)と次女の周子ちゃん(事故当時1歳)を失いました。

被告に下された判決は懲役4年。事故後、悪質で危険な運転の厳罰化や根絶を求める活動を続けてきました。

井上保孝さん(74)
「2人の命の重さに比べて、懲役4年という非常に軽い判決だった。人の命の重みに比べて、今の日本の法律はずいぶん軽く人の命を扱っている

井上さんたちの必死の訴えもあり、2001年、「危険運転致死傷罪」が新設されました。最高刑は20年。従来の「過失運転致死傷罪」の「7年」よりも大幅に厳罰化され、危険運転の抑止になると期待されました。

しかし、実際の運用には批判の声も…。

罪名「ころころ変わるのは結構しんどい」 事故で家族3人亡くした女性

群馬県伊勢崎市で、飲酒運転のトラックが中央分離帯を乗り越え、対向車線を走っていた乗用車に衝突。2歳の塚越湊斗ちゃんと、父親の寛人さん(26)ら3人が命を落としました。

湊斗ちゃんの母親はいまも事故現場を訪れ、湊斗ちゃんが好きだったジュースを供えています。

湊斗ちゃんの母親
「『なんでこんなところで』っていう疑問がすごいので、こんな見通しの良いところだし。ここで命を落とすなんて考えもしなかっただろうなと思うし、本人たちも悔しいだろうなって思います

トラック運転手の男は危険運転致死傷(最高刑20年)などの疑いで逮捕されましたが、その後、量刑の軽い「過失運転致死傷罪」(最高刑7年)で起訴されました。

湊斗ちゃんの母親
「ただただ、あり得ないっていう感情でいっぱいでした。なんでこの事故が過失になるのかが全く理解ができなかったので、なんで過失っていう言葉がついてるんだろう。よく分からなかったです」

その後、「危険運転致死傷罪」に変更され、事件は裁判員裁判で審理されることになりました。

罪名が次々と変わった要因は、危険運転致死傷罪の適用要件の曖昧さです。スピード運転については「制御が困難」かどうか、飲酒運転については「正常な運転が困難」かどうかが要件となっていて、具体的な数値基準がありません。

被告の厳罰を求める湊斗ちゃんの母親は、複雑な思いを抱いています。

湊斗ちゃんの母親
結果がころころ変わるっていうのは、気持ちとしては結構しんどい面もあるので、危険運転のままいくのはすごいありがたいし、そこから過失に下がるっていうのはけっこう大きなダメージだと思うので、下がるとしても納得できる理由が欲しい」

危険運転めぐる問題 各地で… 検察官「曖昧な部分を部分を立証するのが難しい」

危険運転をめぐる問題は各地で起きています。

大分市で時速194キロの車が対向車と衝突し、男性が死亡した事故でも、起訴時の「過失運転致死罪」から「危険運転致死罪」に変更されました。

一方、京都府亀岡市で無免許の少年(当時)が運転する車にはねられ、妊婦らあわせて10人が死傷した事故では、「危険運転致死傷罪」は適用されませんでした。

現場の検察官もこう嘆きます。

検察官
「危険運転で起訴しようとしても、『制御困難』や『正常な運転が困難』という曖昧な部分を立証するのが難しい

「適切に対処できていないのではないか」“危険運転罪”見直し議論スタート

その見直しのため、10日、新たな動きが…。

鈴木馨祐 法務大臣
「悪質な運転行為による死傷事犯に適切に対処できていないのではないか

鈴木法務大臣は「危険運転致死傷罪」の見直しに向けた検討を、法制審議会に諮問しました。

法制審では今後、「危険運転致死傷罪」の適用要件を明確にするため、アルコールの濃度や速度に「数値基準」を設けることなどが議論されることになります。

伊勢崎市の事故で2歳の湊斗ちゃんら家族3人を亡くした女性は、「数値基準」を設けることに期待と懸念を抱きます。

湊斗ちゃんの母親
危険運転の基準とかを見直してくれるのはとてもありがたいことなので、このまま良い方向に進めば良いなと思ってます。基準を設けるのは良いことだとは思うんですけど、基準に満たしてないから危険運転にならないっていう判断をされちゃうのは、遺族側からしたら『なんで』っていう感じにはなっちゃうと思う」

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