「SNSに疲れた」けど「出会いがほしい」。つながらないSNS「FLAPTALK」がつくる新しい”つながり”
Techable / 2021年8月30日 8時0分
新型コロナウイルスの影響によってリアルでの出会いは少なくなっており、SNSやマッチングアプリを出会いの場として活用しているユーザーは少なくありません。
その一方で「SNS疲れ」「マッチング疲れ」という言葉を耳にするようになりました。リアルの出会いとネット上での出会いには何か大きな違いがあるのでしょうか。
株式会社OneSmallStep代表取締役の西武史氏にインタビューを行い、SNS疲れ・マッチング疲れの現状と原因、そして同社の提供する匿名SNS「FLAPTALK」について話を聞いてみました。
「SNS疲れ」「マッチング疲れ」の原因とは――昨今SNSに関しては、「SNS疲れ」「マッチング疲れ」というワードをよく耳にします。そもそもこの「疲れ」は何が原因なのでしょうか?
西:私自身もFacebookやTwitterなどを使っていますが、Facebookは実名で仕事関係の人ともつながっていますし、Twitterは匿名ですがリアルでの知り合いがたくさんいます。
そういう場に何か投稿しようとしても「あの人が見ているからどうしよう」とか、特に今はコロナの時代ですから、遊びに行ったことを投稿すると「どう思われるだろう」とか、いろいろ考えてしまって何も投稿できなくなってしまいます。
SNS中毒も問題ですね。「自分をよく見せたい」「周りの人は頑張っているのに自分は頑張っていない」など、投稿すること自体に疲れてしまっている傾向があると思います。
マッチング疲れについては、マッチングアプリ などによって気軽に繋がる機会が増えたからこそ、「これは自分が求めている出会いではない」「人と会うことに疲れてしまう」ということが増えたのが原因かと考えます。私もビジネスマッチングアプリを使ったことがありますが、簡単に人とつながることができる反面「会っていきなり営業される」ということもありました。
――他人の目が気になる、人と自分を比べてしまう、価値観の違い、などが疲れてしまう原因ということでしょうか。最近ですと誹謗中傷や炎上投稿を見て疲れるというのもありそうです。これだけSNSが普及して、ユーザーが多いにも関わらず「出会いがない」という声も少なくありません。一見矛盾しているようにも感じるのですが、どういうことなのでしょうか?
西:SNSが当たり前のツールになって、人とつながる機会は以前に比べて大きく増えています。その反面、出会うこと自体の数が増えすぎて、相対的に「つながったけど思ったような人じゃなかった」というケースも多い。もちろん良い出会いの数も増えていると思いますけど、求めていない出会いによって疲れてしまうこともあるでしょう。
実はこの辺りが「FLAPTALK」開発のきっかけになっています。
例えば学生時代ですと、たまたま同じクラスになってコミュニケーションを重ねるうちにだんだんと仲良くなって友達になりますよね。こういう本当の出会いをSNSでもできないかなと思って開発しました。
意図しない出会いの数を減らして、より良い出会いの数を維持できればマッチング疲れの解消にもなるのではないかと考えています。
良い出会いには適切な距離感が必要――新型コロナによるステイホームがずっと続いています。新型コロナは「良い出会いがない」ことにどんな影響を及ぼしているとお考えですか?
西:私自身も新しい出会いの機会が減ったと感じていますが、特に学生さんの出会いが減っていると聞いています。
授業がオンラインになって学校に行く機会が減ったことでサークルに勧誘できないとか、たまたま同じ授業を取っていた人と仲良くなるみたいなきっかけがなくなって、大学で友達を作ることが難しいそうです。
サークル内でLINEグループを作っても事務連絡がメインで、そこで何か雑談のようなことは行われない。だからメンバーがどんな人なのかもわからないし、仲良くなるきっかけが生まれない。
あるいはTwitterで同じ大学の人を見つけてフォローしても、会ったこともない人にいきなり話しかけるのは恥ずかしいという人も少なくありません。
やはりリアルで話すのが一番良いと思いますから、コロナの影響で新しい出会い、良い出会いの機会は減ってしまったと考えられます。
――リアルにはリアルの空気感があって、オンラインとは少し違うと。
西:距離感のとり方が難しいですよね。その場にいれば顔色を見ながら距離感を測れますけど、SNSのようにテキストメインのコミュニケーションだと、こちらが良かれと思って言ったことが相手にとってはきつく受け止められてしまうということもあります。
この距離感というのをオンラインやクラウド上で、何かしら見える仕組みが必要だと思っています。そういった考えから当社の「FLAPTALK」のような匿名SNSが増えてきていますし、音声SNSも注目されていますよね。声によって距離や相手の空気を感じる、こういった仕組みも今後は一つの流れになりそうです。
――なるほど「距離感」ですか。
西:私が入居しているコワーキングスペースがあるのですが、そこもコロナの影響で出社する人が減ってしまったんですね。コワーキングスペースっていろいろな会員がいて、コミュニケーションを取るために定期的にイベントが行われるのですが、当然今はイベントもできないからどういう人が周りにいるのかもわからない。
Facebookグループがあって、そこで連絡は取れるのですが、そこにメンバー全員が投稿するわけでもなく、やはりいきなり投稿したり声をかけたりするというのは距離感が測れずに気が引けてしまうんですよね。
そういう背景もあって、コワーキングスペースに「FLAPTALK」をコミュニケーションツールとして導入して、会員同士の雑談や出会いに生かせないか試しています。
――「FLAPTALK」はコワーキングスペースのようなクローズな場でのコミュニケーションにも使えるのですか?
西:はい、「FLAPTALK」には同じグループの人だけでコミュニケーションが取れる機能があります。実際にグループ内への投稿がきっかけで話しかけてみたという動きも見られています。
「FLAPTALK」を通じてより良い出会いを増やしたい――ここまでSNS疲れやマッチング疲れの現状と原因などをお伺いしてきましたが、こういった世の中の状況を踏まえ、今後どのような製品・サービスが必要だとお考えでしょうか?
西:従来のSNSに疲れて距離をおいたり、裏アカウントを作って言いたいことはそちらで言うといった人も出てきています。その一方で、リアルなつながりとは一歩距離をおける匿名のSNSが増えてきています。
SNSで普段思っていることを発信して、誰かに共感してもらいたいという思いは「FLAPTALK」を見ていても感じていることです。例えばFacebookやTwitterではリアルの知り合いが見ているから仕事や転職の悩みを投稿できない。家庭のことや育児のこともそうですね、投稿できないけど同じ状況の誰かに共感してもらいたい。こういった思いは少なくないんです。
匿名のリスクについてはいろいろな意見がありますが、このような思いを匿名で投稿し、それを共感し合えるようなSNSが、いま必要なんだと思っています。
――そこで出てくるのが「FLAPTALK」ですね。実は私もアカウントを作ってみたのですが、従来のSNSにはない非常にユニークなサービスだと感じました。「FLAPTALK」でこだわっているポイントや、現在のβ版への反響などについて教えて下さい。
西:ありがとうございます(笑)。こだわりのポイントはやはりユーザーが安心して本音を投稿できる点ですね。それと付き合いの「いいね」ではなく、本当に共感できる投稿に対して「いいね」に該当する「共感」を付け、「共感」を積み重ねることでユーザーとつながることができる点がユニークなポイントで他にはない部分だと思います。
もちろんいろいろなユーザーがいますから、意図せず人を傷つけてしまったり、悪気なく政治的な投稿をしたりして、それを見たユーザーに不快感を与えてしまうこともあります。しかし、そういった投稿と距離を置くことができたり、本当に共感した投稿にしかコメントできなかったりと従来のSNSとはかなり異なっています。
あえてつながりにくい設計にしているので「もう少しつながりやすくしても良いのでは」という声もあるのですが、ここはバランスにこだわっています。
β版の反響については「FLAPTALK」のファンになってくれるユーザーも少なくなく、自身のブログやイベントなどで紹介していただいています。いろいろなフィードバックもいただいているので、より良いサービスにするために日々改善を続けています。
――では最後に、「FLAPTALK」を今後どのようなサービスにしていきたいですか。また「FLAPTALK」でどのようなつながりの形を作っていきたいとお考えですか?
西:「FLAPTALK」のロゴは遠くまで飛んでいく渡り鳥のV字フォーメーションをイメージしています。また、当社の理念に「最初の一歩を応援する」ことがあります。
新しいことにチャレンジしたいけどなかなか踏み出せない人が、同じ思いを持っている人とつながる。「FLAPTALK」がその最初の一歩を踏み出すきっかけになり、渡り鳥のように仲間と一緒になって羽ばたける人が増えれば良いなと思います。
今はインターネットを使って世界中の人とつながれる時代です。もちろん、ネット上での出会いには誹謗中傷や炎上、出会い系サイトでの事件といったのネガティブな部分もありますが、本来、出会いというのは大変すばらしいものです。
私自身もネット上でいろいろな人と出会い、その仲間たちと「FLAPTALK」をはじめさまざまな仕事をしています。そういった良い出会いをより多くの人々に届けることができれば嬉しいですね。
FLAPTALK
(文・川口裕樹)
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