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葬儀業界が直面する「コストダウンだけでは生き残れない現実」、打開に向けた第一歩はエンディング市場のDX

Techable / 2021年10月11日 8時0分

高齢化が進み死者数も増加する中、葬儀市場はここ数年成長産業と見られてきました。これまで葬儀ビジネスを行っていなかった企業の市場参入も目立ち始める一方で、参列者の高齢化、ご遺族の小規模葬儀志向の拡大、コロナ禍の深刻化に伴い、葬儀の縮小・簡素化、葬儀単価の低下が起きています。

「葬儀単価の低下が止まらない今、DXでワークフローを効率化し、そこから生まれた時間でご遺族に寄り添って、後悔のない葬儀を行う必要があります。ビジネスモデルの変革が不可欠です」と話す、葬儀業界向けCRMを提供するライフエンディングテクノロジーズ 代表取締役 白石和也氏。

葬儀業界で今何が起きているのでしょうか。葬儀業界のDXとはどんな改革を指すのでしょうかーー。同氏に話を聞きました。

図で理解する葬儀業界のエコシステム

ーー「葬儀業界」にはどんなプレイヤーがいるのでしょうか?

白石氏:細かくいうといろんな方がいらっしゃるのですが、基本的にはこちらの図の「死去」から右側のところにいる葬儀会社、生花会社、料理会社、寺院、霊園会社、仏具会社、石材会社だと思っていただければ良いでしょう。

葬儀は誰かが亡くなることでプロセスが始まります。ですが、どの方も亡くなるまでは生きていらっしゃいます。なので、介護に関わる方々や相続などのサポートをする士業の方々、病院も周辺プレイヤーとして関わってきます。

葬儀会社のほとんどは個人商店のような零細企業で、従業員数も10人未満のところが多いです。上場企業は数えるほどしかありません。葬儀業を開業するのに特定の資格は必要がなく、ここ数年は葬儀市場が成長すると見込まれているため、他の事業を行う企業による参入も目立っています。

葬儀業界の課題

ーー葬儀業界にはどんな課題があるのでしょうか?

白石氏:大手にも中小にも共通するのが葬儀単価の低下です。葬儀件数は年々増えていますが、家族葬や一日葬といった、小規模・短期間の葬儀を希望するご遺族が増えています。また、高齢の参列者が参列できないことも増え、参列者の数が減っています。

葬儀の規模が小さくなると、必要になる生花の量が減ったり、参列者のためのお食事の注文数が減ったり、持ち帰りやすくて単価の低いお弁当が注文されたりします。昔は葬儀だけで利益を十分に出せたのですが、今では葬儀だけで大きな利益は見込めません。

しかし、葬儀単価の低下は、お客様にとって悪いことではありません。以前は葬儀に関わる多くの費用がブラックボックス化しており、何にいくらかかるのか、なぜそれだけお金がかかるのかなど、不明瞭なことも多くありました。また、葬儀に何が必要で、どんな選択肢があるのかもわからないまま葬儀を営まれたご遺族もいらっしゃったと思います。

最近では葬儀関連のポータルサイトが増え、さまざまな情報がインターネットで手に入ります。お客様は以前よりも自分の選択肢をご存知です。大切にしたいこと、必要ではないことを見極め、お客様ご自身が納得のいく決断を下せるようになってきました。これは良いことです。

こうした背景もあり、インターネットをうまく使って集客できている葬儀会社と、そうでないところで、葬儀会社は二極化しています。

ーーコロナ禍による葬儀業界の課題にはどんなものがあるのでしょうか?

白石氏:コロナ禍で課題が生まれたというよりも、先ほど挙げた課題が予想よりも早く大きくなったといった方が適切です。

先ほど申し上げた「参列者の減少による葬儀単価の低下」は、コロナ前には5年から10年かけてゆっくり深刻化する問題だと考えられていました。しかし、コロナ禍で一気に深刻化ました。こうした中で、葬儀会社の収益構造の改革は喫緊の課題です。

葬儀会社は2つの改革が必要

ーー収益構造の改革、とは具体的にどういうことでしょうか?

白石氏:ポイントは2つあります。葬儀に関わるオペレーションにおける効率化と、葬儀の後のアフターサービスによる付加価値向上です。

効率化ではDXを行います。葬儀会社では、電話対応で集めた情報と、対面対応で集めた同じお客様の情報が別々のツールに保存されて散在していることがよくあります。また、別々のツールからデータを拾い、組み合わせて経営判断をする事業者も多い。これではデータに間違いが生じる可能性もあります。CRMなどでまとめてデータを管理すれば、データ集計にかかる時間と人件費を削減することができます。

電話だけでなく、葬儀業界ではFAXによるコミュニケーションもまだまだ行われています。FAXで正確なコミュ二ケーションを取ろうとすると、1〜2時間かかってしまいますが、メールとCRMを組み合わせて連絡をとれば5分で用は済みます。

これまでは葬儀自体の規模が大きかったので、葬儀単体で利益をあげることができましたが、コロナ禍では「葬儀規模を大きくする」というアプローチは取れません。なので、この段階での戦術は「効率化によるコストダウン」になります。

さらに、CRMなどを使ってお客様の情報を管理し、葬儀の後のお客様のスケジュールを追うことで、適切なタイミングでお客様に必要な商材をおすすめし、アフターサービスを充実させることで付加価値を高めます。相続、遺品整理、不動産処分などを視野に入れると、葬儀から始まる一連のお客様の負担を軽減できると思います。

DXが変える葬儀社のお客様対応

ーー結婚式のようなお祝いに関連することで「単価を上げる」「収益を上げる」というのは、事業者も顧客も気持ちの面で検討しやすいと思いますが、葬儀では難しいのではないでしょうか?

白石氏:そうですね。ですが、お客様に寄り添い、納得のいくご家族・ご親族とのお別れをお手伝いすることで、お客様のお役に立ち、ビジネスがまわることは十分にありえます。

ご家族やご親族を亡くした方は、グリーフ状態に入ります。グリーフ状態とは、大切な人を亡くして大きな悲しみを感じたり、ショックを受けている状態です。グリーフ状態にある人は、いつも通りの冷静な判断ができません。この状態で「後悔のないよう故人と別れる」ための判断は難しくなります。だからこそ、葬儀会社がお客様に寄り添って対話し、サポートをして「お客様が本当に希望する葬儀」を決めるお手伝いをすることが重要になります。

例えば、簡略化した葬儀に「直葬」というものがあります。これは、通夜や告別式を行わず、故人の納棺の後、自宅や病院から火葬場に遺体を運び、火葬するものです。通夜や告別式を行う場合に比べ、費用を抑えることができ、参列者への対応もなしで済みます。

これはこれで良いのですが、故人のお顔を見て儀式を行い、お別れのプロセスを踏む場合に比べると、グリーフ状態から回復しづらかったり、後々精神疾患を発症する確率が高くなるという統計もあります。さまざまな理由で簡素な葬儀を選ばれるお客様がいらっしゃいますが、ご自身のためにも、本当にそれで良いのか、グリーフ状態のお客様に寄り添うことで、お客様の役に立てることがあります。そして、DXで業務効率化が進めば、お客様と向き合う時間を増やすことができます。

葬儀業界特化型CRMとその先の未来

ーーライフエンディングテクノロジーズは葬儀業界特化型CRM「スマート葬儀CRM」を提供しています。葬儀業界特化型ではないCRMとどこが異なるのでしょうか?

白石氏:端的にいうと、「葬儀業界のニッチなニーズに対応」しているところです。

例えば、葬儀を行う際、ご遺族は関係者に訃報を送る必要があります。訃報にはいつ、どこで、誰の葬儀が行われるかという情報が含まれていれば十分です。そのため、業界に特化していないCRMでもこうしたメッセージを送ることはできます。ですが、当社の「スマート葬儀CRM」では、訃報の中に香典の支払い、供花や供物の注文といった機能をつけることができます。

また、顧客の家族関係をグルーピングする機能があります。喪主Aの情報がCRMの中にあれば、その方の三親等以内の方Bが顧客になった場合、Bが喪主の葬儀を行う際に、Aのデータを使うことができるなど、スムーズな対応ができます。

実際、葬儀会社で葬儀業界に特化していないCRMを使っているところはあります。ですが、葬儀業界用にカスタマイズするのにお金、時間、手間がかかることもあるので、業界特化型CRMを使うメリットがあります。

ーー葬儀関連のプロセスをデジタル化することに抵抗や違和感を感じる人はいないのでしょうか?

白石氏:そういった声はあまり聞きません。むしろ、ITツールに馴染みのない葬儀会社の従業員がパソコンやインターネットが苦手で、それゆえCRMに苦戦するという話を聞きます。

CRMは葬儀業界のDXの第一歩ですが、それだけでは完結しません。現在、葬儀会社が火葬場を予約する際、電話か窓口でしか予約ができません。また、火葬許可証と埋葬許可証は紙ベースでしか発行されません。葬儀の日程は、火葬場の予約状況に合わせて決定されます。こうしたプロセスをデジタル化できれば、葬儀会社はもちろん、ご遺族の負担を軽減することにもつながります。葬儀に関わる行政関連のプロセスも今後DXが必要です。

(文・佐藤友理)

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